第52話 閑話・ある日の出来事①
※インビジブルオブデスの後です
「ふっふふっふふ〜ん〜」
今日は休日ってわけで、のんびりと読書に勤しむ。
「おっとおっと、ヤンデレ極まってて凄いねーほほほほ」
というふうに楽しい。
しかしながら風前の灯である。
バリーン!!と、私の後ろのベランダ出入りのガラスが割れる音がする。
そのまま後頭部に何かが衝突し「ぐえっ!」という断末魔を上げながら前方へ吹き飛ぶ。
「いっつぁー!!えっ、何これ野球ボール!?」
何者かの襲撃だと思って鼻血を振り撒きながら周りを確認すれば、ベランダに血塗れの野球ボールが転がっていた。
強化ガラスを割るほどの野球ボールって一体なんなのさ······?
「綾ちゃん!!今凄い音鳴ったけど大丈夫!?」
バーン!とレイがクローゼットから現れる。
「ゑ、どうして私の部屋にいるの」
「不滅の愛の力だよ!」
「いやそれ理由になってないから!」
「綾ちゃん居るところに私有りって覚えてくれると嬉しいな!」
「もう勝手にして······」
「むむん。これは状況から察するに密室殺人ですね······」
「風穴空いてるし未遂だしそもそもアンタに察する力があるの?」
「恐らく私と綾ちゃんのひとつ屋根の下生活に嫉妬した豚野郎の犯行で間違いないでしょう」
「恐らく私とアンタはひとつ屋根の下生活なんてしていない、で間違いないでしょう」
ピンポーン!とチャイムが鳴る。
「ん?誰だろ」とイアゼウスパスでモニを観てみる。
「ショタ!ショタが来たよ!」
「ホントだ!コイツ絶対綾ちゃんに発情してるよ!ここは私に任せて綾ちゃんは逃げて!」
「ちょっと待て!どうして私のをアンタが見れてんの!」
「愛の力」
「愛の力えげつねぇな!」
「あっ、ちょっと待って!発情ショタが青髪ロリと何か話してる!」
「発情確定なの!?あ、青髪の方は桃ちゃんじゃん」
「桃!?青髪なのに桃!?」
「そこ突っ込む!?今更すぎない!?」
「あっ、ちょっと待って!発情ショタと青髪ロリがモニターから消えたよ!」
ガンガン!と玄関でドアノックが響く。
「おーい戸室!子供のお客さん2人連れて来たぞ!」とベルゼの声が聞こえる。
「なに!?第三の刺客まで現れたですって!?」
「刺さない普通の客だよ!?」
「いいから綾ちゃんは下がってて!」
レイが玄関へ突っ走り、ガッシャーン!とドアに向かってドロップキックをかます。
様子を見に行ってみると、ベルゼが壁とドアとでサンドイッチになっていた。
「な、なんでいつもこんな目に······」
チーンとベルゼは天命を全うしたのでした。
見下ろしてみるとレイが片脚を抱えて寝転んでいた。
「足捻った······」
チーンとレイは天命を全うしたのでした。
「ねぇ綾、このバカ2人なに」と桃ちゃん。
「別に気にしなくていいよ。ただの蠅とストーカーサイコレズだからほっといていいよ。それより、そこのショタは誰?知り合いなの?」
「この子、峯谷。野球仲間。」
「へぇー、桃ちゃんてば野球なんてしてたんだね。ちゃんとバット振れるの?」
「すごく上手。さっきもホームラン打てた。」
「わーすごーい!やっぱり鬼の子は鬼ってことなのかな」
「だからホームランボールを取りに来たの。」
「ええっと、とどのつまり私の後頭部にタイムリーヒットしたボールは······」
「私の記念すべき1点」
「やっぱ鬼や······」
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「初めまして、峯谷って言います。」
野球ショタが自己紹介する。
「こちらこそ初めまして、戸室って言います」
「私はこんな発情ショタ認めないからね!」
「っと、こちらがレイちゃん。危ないから近寄らない方がいいよ。っていうかお前は姑か何かなの?」
「このサイコレズとお前ってなんか同じ臭いがしないかぶらでしゅ!」
ベルゼの脳天にハエたたき攻撃。
「っと、こちらがベルゼ。私の奴隷。」
「綾ちゃん!奴隷ってなんなの!私聞いてないよ!」
「あー、確かに言ってなかったねー。ここに住ます代わりに服従の契約を結んだんだよ」
「ずるい!私も服従の契約結びたい!」
「ゑ、無理」
「俺も同じく反対だな。こんな奴と同じ階位になるのはプライドが許さねぇ。」
「は?何言ってんのさ奴隷野郎。私が綾ちゃんを服従させるのに決まってるじゃん」
「まぁまぁ、落ち着いて二人とも。レイちゃんはジュースでも飲んで落ち着いて」
レイにオレンジジュースを差し出す。
「うん、ゴクゴクゴク······。うっ、だんだん眠く······スピー、スピー」
「お、おい戸室。コイツに今なにをした」
「睡眠薬以外に何があんの」
「綾、外道。」
「あのー桃さん、早くボールだけ回収して逃げましょうよ······」
峯谷が桃ちゃんに退避を促す。
「そういえば峯谷くんって野球は上手なの?」と笑顔で訊ねる。
ふっ。逃がさない。
「じ、上手ではありませんよ。だからこうして桃さんに教えて貰ってるんです」
「へぇー、桃ちゃんが先生かー。それなら私も手伝ってあげようかな」
「大丈夫です結構です!桃さんだけで充分ですから不審者は来ないでください!」
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「ほへー、少子化が嘘だと思えるくらいにショタだらけだよ!」
「なあ戸室。そろそろショタショタ言うのやめないか?」
「うーん確かにそうだね。意味知ってる奴がいたら面倒なことになりそうだし」
峯谷の様子を見てみると監督っぽい人と何か話している。耳を澄ませてみると、
「あのー監督。あの人がショタショタ言ってくるんですけどどういう意味ですか?」
「あー?ちょっと待て、調べるから······。······おい、お前さんら狙われてるぞ」
「え······?」
私が「え······?」って言いたいものだ。あのオッサン考えが飛躍しすぎている。
「ほら言ったろ?あのサイコレズとお前は同じ臭いがするってよ」
「絶対に誤解だから!別にショタを取って食おうってわけじゃないんだから!」
ノット無言の腹パンをベルゼにお見舞いする。
「うーん、野球の見本を見せてあげるーなんて言ったけど。そもそも野球なんて授業でしかやったことないんだよね」
「なら適当にキャッチボールでもすりゃいんじゃねぇの?」とベルゼ。
「おー確かにそうだね。ほい、グローブ」とベルゼに左グローブを渡しながら私は右グローブを着ける。
「おうオッケー。ん?戸室お前って左利きだったっけか?」
「あー、両利きなんだよ。少し前まで左が義手だったからね。機械パワーで右より使い勝手が良かったんだよ」
「少し前まで?つまり今は違うってんのか?」
「その通り。今は両腕とも生腕超パワーでいけるよ」
「生腕超パワーって気持ち悪カッコイイなそれ!」
「気持ち悪カッコイイ······だと?結局気持ち悪いんじゃん!」
「キモカワみたいでいいじゃねぇかよ」
「キモカワみたいで悪いんだよバカ」
ボールをベルゼにぶん投げる。
が、ベルゼはなんなくそれを受け止める。
「ふん、少しはやるようね。」
「ふっふん。天下の大悪魔様を舐めてもらっちゃあ困るねぇ?」
ベルゼが私と同じ球速で投げ返してくる。
パシィン!ともちろんキャッチする。
今度は倍速で投げようとしたが、ベルゼがいつの間にか遠くにいるのに気づく。
よって、三倍速だ。
「くらえっ!」
バシィン!!と又もやキャッチするベルゼ。
「お返しだ!」と同じ球速で投げ返してくる。
バシィン!!
「ならさ、こんなのはどう?」
球を10程作り出し、六倍速で飛ばす。
「おいおい!反則だろそれ!」
「反則ぅ?いつ私がルールを決めたっていうの?」
ベルゼは球に吹っ飛ばされて遠くへ飛んでゆく。
しかし、「ぐえっ!」という断末魔と共にベルゼが飛び戻ってくる。
「はぁ、思わず跳ね返してしまいましたが、蠅でしたか。潰せばよかったですね」と、ベルゼの飛んできた方向から私服のクソ天使が現れる。
「えぇ······クソ天使あんた、ちょっと可愛いすぎない?」
「可愛いと思ってくれるのであればいい加減その呼び方は控えてくれませんかね?」
「発言が可愛らしくないから却下ってことで」
「それより何をしてるんですか?噂に聞く甲子園ってやつですかね?」
「甲子園はこんな田舎でするものではないからね?ただの野球をしてるんだよ。どっちかってっと子供野球かな」
「子供野球······まさか2人にこんな変態的趣味があっただなんて······」
「変態でもないし趣味でもないからね。ましてや犯罪予備軍だなんて呼ばないで!」
「でも私、さっき耳にしましたよ?ショタコンJKが野球広場に現れたと」
「誤解が拡がる······」
「それにしても楽しそうですね。すこし混ぜて貰ってもいいです?」
「別に構わないけど、その折角のオシャレが汚れちゃうよ?」
「そこはエンジェルパワーで平気ですよ。それこそ貴女こそ高そうな服がボロボロではないですか?」
「大丈夫大丈夫。私ん家お金あるから」
そもそも能力でプライスレス。
「ブルジョワ思考はいけ好かないですね。いいでしょう、では貴女のお金をめぐって試合しようではありませんか」
「どこがいいでしょうなの!?ま、まぁいいや。私もこないだの恨みがあるし、受けて立とうじゃないの!アンタが勝ったら賞金10万!じゃあ私が勝ったら何してくれるの?」
「そうですね、1週間自宅ご奉仕でもしてやりますよ。······勝てたらの話ですがね?」
「言ったね?後には引けないよ!」
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九回裏ツーアウト2ランナー、私チームの攻撃。クソ天使チームは9点、私チームは5点だ。
といっても、これは私がコールド勝ちなんてツマラナイ結果を出さない為に手を抜いたが故の結果だ。
守備は私とクソ天使は互いキャッチャー。ファーストは互いに桃ちゃんと蠅。ちなみに桃ちゃんは私側のチームだ。
では始めようか、神的逆転劇を。
「綾の能力でみんなを加速って反則······!」
「桃ちゃん、これは試合ではないの。戦争なんだよ!」
「桃さん、僕も反則だと思いますから安心してください」
「峯谷くん、これは反則ではないの。合法なんだよ!」
「綾、この前綾の能力は犯罪って言ってた」
「野球とお金は別の話なんだよ桃ちゃん。お金が社会主義だとしたら野球は資本主義なんだよ」
「綾、難しい言葉使わないで」
「いいからいいから、二人ともバット握って準備なさい」
ってなわけでバッターボックスに峯谷くんが立つ。よって、これから峯谷くんは一時的にプロ野球を越える力をフロム私で獲得することになる。
カッキーン!
峯谷くんのドーピングホームランが炸裂する。これで9対8。
ボールの行先を見守っていると、私の部屋へバリーンと突っ込むのを目撃してしまった。
私の口から血が垂れる。
「綾、私には綾の能力は無用。見てて」
次は桃ちゃんがバッター。危なそうだったらすぐにでもドーピングさせてやろう。
······なんて思ってたが杞憂だったようだ。峯谷くんと同様、私の部屋めがけてホームランを······。
「どうして私の部屋を狙うの!?」
「そこに綾の部屋があるから」
「そんな登山家みたいな事を言っても分かんないからね!」
「これで同点。綾、頑張って」
最後は私がバッターである。しかし、ここでキャッチャー天使からタイムが出る。
「貴女の相手は私です。私が貴女のピッチャーを務めましょう」
「ちょっと!役目変えるって反則じゃないの?」
「ルールなんて知りませんし、そもそも貴女は少年にドーピングしてたでしょう?お相子ですよ」
「くっ、それを持ち出されると······」
クソ天使がボールを構え、私はバットをかまえる。そして何故かベルゼがキャッチャーになっている。
「ではいきますよ。全力でやるので気を付けてくださいね」と言いクソ天使が球を投げる。球というよりも弾であるが。
だが甘い。私には加速と身体強化がある。さらにそれだけでは終わらない。弾道の空気を圧縮して球速を落としてやる。
と思ったが、ボールが途中で横へすっ飛んでしまった。
「戸室、空圧でジャイロ効果が増えたんじゃないか?」
「あーなるほど。」
「蠅の言う通りです。姑息な手を使っては碌に戦えはしませんよ」
「オッケー、次カモーン!」
クソ天使が弾を投げる。
次は擬似ベクトル操作で対抗だ。球の回転方向とは逆の方向のエネルギーと弾道と逆の方向のエネルギーを増幅させる。
するとだんだん球のスピードは落ちてゆき······ストン。
「戸室、普通に相手してやれよ······」
「うっさい!次来い!」
クソ天使は溜め息をつき、三度目の投球。
今度は絶対にキメてやる!ってなわけで、私の目の前までボールは放置。そして、眼の前に来たジャストで風魔法と擬似ベクトル操作発動!一瞬で球のスピードを急低下させ、狙い定めてバッティング!
そのまま球は球場の外へ飛んでゆく。
「わぁーいやったー勝ったー!サヨナラ勝ちだよー!」
「お前······それで恥ずかしくないのかよ······」
「勝ちは勝ち!負けは負けなんだよ!さぁクソ天使!私にご奉仕なさい!」
「ふぅ、仕方ありませんね。ご奉仕してやりますよ」
「ゴボウ買い?」
「誤妨害じゃね?」
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「ただいまぁー」
「うあーん!綾ちゃんってば何処に言ってたのー!」
帰宅早々レイが飛び付いてくる。
「ちょっと野球してたんだよ」
「野球ってクンクン。私を置いてクンクン。やるほどの事なの?クンクン。」
レイは頬を濡らしながら私の股に顔を埋める。なので、一回転して床に叩き付ける。
「いったぁーい!」
「念の為に聞いておくけど、私ってどんな匂いがした?」
「汗臭い」
汗臭い······。ま、まぁそりゃあ運動した後だもの。
「でも、私は綾ちゃんの臭いだったら何でも好きだなー」
「私もレイちゃんが変態でなければ好きだったのになー」
「ん?綾ちゃんの背後から他女の臭いが!」
「あー、クソ天使の事?」
私の後ろについているクソ天使を前に出す。
「初めまして、クソではないミカエルです。1週間ここでバイトする事になりました」
「え!?綾ちゃん!どういうことよ!二人だけの花園になに自ら害虫を呼び込んでるの!」
「私としては二人とも害虫なんだけどねー?」
「天使を害虫扱いだなんて、本当に貴女は教育のなってない子供ですね。」
「蠅の身内なんだから害虫なのは当たり前でしょ。っていうか子供じゃないし」
「綾ちゃん!私は害虫を追っ払う虫だから害虫なんかじゃないよ!むしろ乳酸菌だよ!」
「うわ怖っ······」
「本当だ。クソ天使をここまで引かせるなんて······。確かに害虫の域を脱してるね」
「でしょでしょ!なので虫エルさんには出ていってもらいます!」
レイはモップをクソ天使に向けてそう宣言する。っていうか何処から出したよそれ。
「え?モップなら床下にしまってあったよ?」
「な、なんだと!他は?他は何も見てない!?」
「別に何も見てないけど、何かあるの?」
「ないないない!何も無いから何も見ないで!2度と開かないで!」
「ほほう······」
後ろでクソ天使が目を光らす。
「ええい!もうコンクリートで固めてやる!」
床下倉庫の蓋をコンクリートで無理矢理固める。
「とにかく、クソ天使は突っ立ってないで何かご奉仕なさいよ」
「とにかく、私はそこのモップ女が退かない限り何も出来ませんが。」
「とにかく、そこの害虫が帰らない限り私は一歩も引かないよ!」
このザマである。ここは1つ私が妥協してあげよう。
「分かった分かったレイちゃん、ほっぺたにキスしてもいいから大人しくして」
「わっひょーい!今夜は赤飯だよー!!」
「分かりました、血の晩餐を作ればいいんですね?」
「宴だー!!」
「······うん、もうどうにでもなーれっ」
翌日、お隣さんから厳しく叱られました。




