第51話 インビジブルオブデス13
何故この話でこんなに長引くのだろうか······
ちなみにこの話は「暴食」や「転校生」やら「ラグナロク編」etcよりもいち早く生まれた話なんですよ☆個人的には早く「希望」やって世界編やりたいんですけどね
「前史に旧史、そして現史ジパングや東アジアの多くで科学が主文明となっている。それは、個人で利益を得る魔法よりも、集団で利益を得る科学こそが人類に適していたのであり────」
授業授業面倒臭いものだ。今もこうして可愛い後輩の片桐ちゃんがクソったれたクラスメイトに虐められてるかもしれないというのに。
レイは隣でスピースピー眠っている。
あっ、そうだ!放課後なんて待たずに今すぐ突撃すればいいんじゃん!うんうん、それが良い、それが良い。大事な事なので2度と思う。
となれば本当に話は早い。授業中ならば姫路も着いては来れまい。
「はい先生!生理痛クソやばいんで保健室行ってきます!」
「お、おう気を付けて行ってこいよ······」
これならば男性教師は否応にも反論できない。最強の手札である。しかし、
「先生!私も戸室さんのが感染りましたので行ってきます!」と、姫路まで言い出した。
私は逃げる様に廊下へ出て走るが足払いされてズッコケる。
「なんでこうも毎回痛い目に逢うのー!」
「廊下を走るからそうなるんですよ。分かってます、中等部校舎へ行くんですよね?でもまだ授業中です。移動する時は静かにしましょう」
「え?行ってもいいの?」
「当たり前じゃないの。組手では相打ちという結果でしたけど、私では戸室さんに勝てないって事が分かりましたし、止めようもありません」
「なぁるほど。姫路さんはもう私には逆らえないって事だね?」
「まぁ、物理的に逆らえなくなったってだけで、それ以外は何でも可能なんですけどね?」
「ねぇ戸室さん」
「ん?何よ、改まっちゃって」
歩行移動中、姫路が口を開く。歩行といえども加速しているので普通よりも速い。
「たまには部活に顔出してくれないかな」
「えー?ババアに見つかったら面倒じゃないのさ」
「貴女が辞めてからまたバスケ部がちょっかい出してくるのよ。傘として一発ガツンとやってくれない?」
「誰が核爆弾だよ······。」
「先生の居ない日くらい調べられるし、口封じもやるからさ。お願い」
「うーん、分かったよー······一発だけだよ?」
「ふふっ」
「ん?何か笑茸でも拾い食いした?」
「いいえ何も。ただ、やっぱり戸室さんって優しいんだなーって思ってね」
「うーん?別にやりたい事やってるだけなんだけどなー。本能的っていうか、人道的っていうか」
「本能的はともかく人道的は似合わないかな······。ほら、1年の時に平井さん助けてたでしょ?あの時から戸室さんって本当は悪い人ではないのかなってずっと思ってたの」
「それってつまり悪い人だと思われてたってわけだよね······?」
「そりゃそうでしょ。昔から暴力暴力と、まるで障子から出てきた虎みたいだったよ」
「檻から出てきた虎ね。ってか私ってそんなに悪いことしたかなー?あまり覚えてないけど、倒れ伏した男子の山のテッペンで腕組んでただけの感じだけど」
「そんなの見たら誰だって怖いって思うものよ。例えば、もし大きな私が太平洋に大きな旗刺してたらどう思う?」
「可愛らしい」
「もうっ!普通は『怖ーい!』って言うところでしょ!」
「それが怖いって思うのって姫路さんか小さな子供くらいなんじゃ······」
「小さくもないし子供でもないし小式部内侍!」
「小式部内侍······」
「あれ?いつの間に中等部校舎まで?」
本当にいつの間にか中等部校舎の中まで来ていた。加速って強い。
「このまま廊下を真っ直ぐ進めば片桐さんのクラスよね?」
「うん。反対側から入ったけど、それで合ってるよ」
てくてくてくてくてく。てくてくてくてくてく。てくてくてくてくてく。てくてくてくてくてく。ぶしゅっ。
「ん?」と、違和感に気づき立ち止まる。
「ん?どうしたの戸室さん」
「ひ、姫路さん······アンタはちょっと下がってた方がいいよ······」
「なによ?目的地を目前にして私を遠ざけようとか思って······」
「逃げてって言ってるの!」
「え······?」
「気付かない?授業中にしては、1・2組だけ静かすぎでしょ」
「それは、移動教室の授業なんじゃないの?確かにうちの学校は廊下から教室の中は見れない仕様になってるけど、静かってだけで何があるって訳でもないし」
「それにね、私の服を見てみて。少し、短くなってるでしょ」
「うん、確かに。床に切れ端が。さっきまで普通だったのに、綺麗に短く······もう!いい加減焦らさないで教えなさいよ!」
「分かんないかな。私······さっき真っ二つにされたの」
「ま······ぷたつ?じゃあ何?それなら今私の眼の前にいる貴女は死人って事になるけど」
「死人って言われれば死人なんだけどまだ死んではいないよ。······凄く、凄く繊細な斬撃だったの。凄く繊細な斬り方をされたから、治癒魔術ですぐに切り口を引っ付けれたってこと。分かる?」
本当は肉体操作だけど。
「治癒魔術で引っ付け······。それなら戸室さんも逃げた方が良いと思うんだけど?」
「いいや、それは却下。こういうのを解決するのが甲賀の役目の1つでもあるんだし、私以外でこれに対抗出来そうな人って思いつかないもの」
恐らく私の能力って固有能力だし。
「それじゃあ姫路さんは3組さんに避難して貰ってて。」
「分かった!戸室さん、無理しないでね!」
姫路が3組の教室へ入っていく。
私の読みでは1組付近。恐らく階段に犯人は潜んでいる。これほどの攻撃を仕掛けてくる人間は固有能力保持者か風魔法の使い手しかいない。
1・2組の教室が静かなのはたぶん襲撃者に何かされたからだろう。もしくは本当に姫路の言っていた通り移動教室だったのか。
そろーり、そろーりと音を立てずに足を進めるが、今度は8つの斬撃が私の身体全身を襲う。
「あっぶな!今の私じゃなかったら確実に死んでたよね!?」
肉体操作で全回復する。
「もう、我慢ならない!先手っ」と、階段前まで跳躍し「必勝!!」と高速回転させた手裏剣を射出する。
しかし、それは壁に刺さるだけに留まった。
「誰も······いない?」
そう独白するも束の間、背後から7つの見えない斬撃が身体を静かに刻んでくる。
これも無事回復して踵を翻す。
「三年一組······」
犯人は、三年一組に居たという事になる。
静かに、この学校特有のガラスの無いドアに手をかける。
ガラガラ······。
ドアを開けると同時に、視界へ飛び込んで来るのはイタリア・トマト祭り。さらに死の臭いが嗅覚に飛び込んでくる。
「派手にやっちゃってんなー」
トマトはバラバラ。机や椅子もバラバラになっている。
その中、教室の端っこに小さく蹲る存在がいた。
「アンタが犯人!?」
問い掛けるが返事は無い。
ただ、泣き嗚咽が教室に響いている。
私には分かった。これは襲撃者でも何でもない······虐めによる、特殊能力による、悲しい事故なのだと。




