第48話 虹の死界6
ルビの振り方を知った私は完全無欠だー!
「うわー雑っ魚!親友だなんて聞いてたけど、こんなのに負けるなんて興醒めも甚だしいなー」
メタトロンは虹の世界天井より、オーディーンが現へ逃げるのを見届け、文句を垂れる。
半分ほど消失した雲海には大きな"穴"が開いてあった。それはオーディーンのみでなく周囲の雲海も飲み込んでゆく。その中には、胴にポッカリと穴を空けたピンク髪の女児の姿もあった。
「あれ?綾も行っちゃうんだ。まーいっか。手間も省けて私もお仕事終了ってことだし。」とメタトロンは「んーっ」背伸びする。
「さーてどうしようかな。帰るかこのまま遊ぶか。そーいえばまだ佳代アリスが居るね────」
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白い空間にいた。白いイスに座っていた。白い丸いテーブルに手をついていた。テーブルの反対側には同じイスがあった。
黒髪の女性がイスに向かって歩いている。白装束を着ていた。ボンキュッボン。
女性がイスに手を掛け後ろに引き、音をたてずに丁寧に座る。
「出雲甲賀御三家当主戸室綾で、あっておるな?」
女性は座ったイスのテーブルを挟んだ向かい側へ質問を投げる。
その声の向かい先にいるのは······誰であろう。周囲に人の気配は一つも無い。
「おヌシじゃよ、おヌシ。他に誰がおるというのだ?」と、女性は正面へ人差し指をつきつける。
「えーっと、俺?私?僕?儂?誰?」
「何を言っておるか。寝惚けるのはいい加減にせい。儂の知る限りおヌシの一人称は『私』の筈じゃ。虹の世界での事は知らぬが、少なくとも戸室綾は『俺僕儂』なんて言葉は使わぬぞ」
女性は私のことを戸室綾だという。確かに、そんな気もしないこともない。
「まあ、何がどうであろうとおヌシが戸室綾でないと困るのじゃがな。······おヌシが戸室綾だと思うのであらば返事をせい。」
「あ、はい。」
「ところで、死因は理解しておるか?」
「死因?えっと······何言ってるのか分かんないな」
「面倒じゃな······。おい、1回こやつの頭を叩いてやれ」
女性は私の背後を一瞥し、手招きする。私も背後へ首を向けると同時に脳天に衝撃が走る。
「痛ーい!」
涙目になりながら頭を両手で抑える。
視線を上げると、棍棒を持つ青髪の幼女がいた。額には角が生えている······が、そんな事はどうでもいい。青色だ。虹色ではない。青色なのだ。
「あ、れれ?虹の世界······じゃあない?」
「ようやく理解したか?戸室綾よ。ここは黄泉じゃ。おヌシは殺されたのじゃよ」
「私が殺され······そうか。オーディーンに殺られちゃったんだっけ。······でもさ。どうして私の目の前には3本の蝋燭ケーキではなく黒髪美女がいるわけ?いつの間にか私って転生間際に談笑できる能力でも芽生えたわけ?」
「······よく解せぬが、とかくおヌシは現世へ蘇生したいか?」
「現世へ蘇生?えっと、どゆこと?」
「トラックに轢かれた方の世界へその肉体のまま生き返らせてやろうかと聞いておるのだ」
「あーっと、なるほどなるほど。この肉体のまま蘇生······え!?」
髪の毛を抜いて色を確かめてみる。ピンクだ。ピンク色の髪だ。つまり、あの魔族とエルフのハーフの肉体だ。
「したいしたい!蘇生させて!お願い!」
「威勢があるのは、なによりじゃな。だが、1つ儂からの頼みを引き受けて貰いたいのじゃ。」
「頼み?OKOK!私に任せて!」
「······イザナギを殺す。これが儂からの唯一の頼みじゃ。期限は問わん。学校生活の続きでも何でもせい。」
「い、イザナギ······。」
神殺しというのにはつい先程トラウマを得たばかりなのだが。
「期限は問わぬと言うたであろう。心配せんでも修行でもなんなりして挑めばよかろう。神道術なんて元々人間には扱えぬもの。おヌシは儂にとっての最大の切り札となるのだ。光栄に思うがよかろう」
「わ、わかったって!頼まれればいいんでしょ。それよりも貴女って、誰なの?」
私の周囲を黄色い光が包み始める。
「儂か?何を今更言いよる。おヌシら甲賀の守護対象、伊邪那美命じゃよ。」
「ええ!?イザナミ様!?えっちょっマジで!」
「落ち着けい。そろそろ世界が繋がる。1つ儂から良いこと助言しといてやろう。────時の流れと変化を集中して感じ取れ」
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2つの流れが混ざり合い調和する感じがする。これがイザナミ様の言っていた、時の流れの変化というものだろうか。
眼を開けると、そこは薄暗い洞窟だった。正面には大きな岩があり、隙間からは光が零れている。
すると、何かが私の服を後ろから掴むのを感じる。振り返ってみると、青髪の子供がいた。
「ええっと、イザナミ様と一緒にいた子だよね?どうしているの?」
「イザナミ様に助手を任された。······よろしく。」
「私は戸室綾よ。よろしく。」
青髪の娘に手を差し伸べて握手を促す。
「?よろしく。」
青髪の子は私の手を取らず、腕に抱きついてくる。
「あのー、握手はいいとして、お名前教えてくれるかな?」
「名前?私、名前無い」
「お、おおう。名前が無いとはこれまた珍しい······。そうだねー、私が名付けてもいいのかな?」
「名付け?うん、いいと思う。イザナミ様、そんな事言ってた気がする」
「それじゃあねー。······桃ちゃんだ。貴女はこれから桃ちゃんだよ!まだ幼いから、桃栗三年って事で早く成長できるようにって意味で!」
「桃······いいと思う。綾、天才。」
「それじゃあ、外に出よっか。七年経ってどうなってるかは分かんないけど。私の記憶が正しければPULSEの電脳空間がフルオープンされてる筈だよ。」
「ねぇ綾。イザナギ様が言ってたけど、綾が死んだ時と同じ時間だって。」
「え?それってつまり······学校がある!!ヤバい、遅刻する!!」
急いで、桃ちゃんを腕にくっ付けたまま、岩の隙間から洞窟の外へ出る。
視界に広がるのは木々生い茂る森。そのなかにポツポツと木造の家が見られる。
「桃ちゃん、ここって······」
「うん。イザナギ様の祠」
────異世界譚END────
本編前日譚終了。あとはインビジブルオブデスと海水浴書いてリラックス




