第26話 暴食4
結局私もドリンクバーになってしまった。
「ねぇ金髪、アンタ金ない?」
「ない。」
「······。」
「ねぇ綾、綾の力でお金増やせばいい。」
「桃ちゃん······それ犯罪なんだよ。」
「えっ、綾の力って悪いことだったの?」
「いや、そういう意味じゃないからね?お金を作ることが犯罪なのであって、私の能力は合法だからね?脱法でもないからね?」
「なんだい嬢ちゃん、お金作れるんなら作りゃいいじゃねぇか。」
「ううっ、私は抵抗する!拒否権を行使する!」
「拒否すんなよ!刑務所にぶち込まれんの嬢ちゃんなんだからな?」
「いや、アンタも道連れだよ!そもそも奢られてる立場でそんなこと言えんの!?」
「ううっ、それは胸に刺さる······。」
「綾、やっぱり犯罪者なの?」
「待って!まだ確定じゃないから!予定ではあるけど確定じゃないからね!」
「あのーお客様、店内ではもう少し静かにしてください。」
「あ、はい、すみません!」
ネギトロ丼3杯を持ってきた店員に注意される。私のせいじゃないのに······。
「おっ、旨そうだなコレ!全部食っていいのか!?」
「ああうん、それが娑婆最後の飯だと思って大事に食べなよ。」
「だからプライドなんて捨てて金作りゃいいじゃねぇか。」
「プライドの問題じゃないの!お金っていうのはよく見ると同じ様で同じじゃないの!これで偽金ってバレたら一生生きて娑婆に出られなくなるんだよ!」
「大丈夫だって、こんなに沢山あんだからそうそうバレやしないって。」
「綾、私もそう思う。木材は青木ヶ原に隠すって諺ある。」
「桃ちゃん、それ木は森の中に隠せね。それに青木ヶ原って入ったら2度と出れないからね?そもそも今は海の底だし。」
樹海に入るくらいなら刑務所に行った方がマシだよ······。
そう思っていると、
「ん?あれ、綾ちゃんじゃないですか。こんな所で家族団欒ですか?微笑ましいですね。」
茶髪ロングの少女、平井稜葵が現れた。
「昨日は憂鬱そうでしたのに、今日はもっと憂鬱そうですね。」
「そりゃそうだよ、今コイツのせいで注文の合計料金が予算オーバーしててピンチなんだよ。」
「あら、それは緊急事態ですね。それで、何円足りないのです?」
「およそ百円。あ、もしかして貸してくれるの?」
「はい、喜んで貸して差しあげます。友達ですもの。」
天使は存在した!天使ミカとかいう野郎はノーカンね!
稜葵が私の隣に座る。私の正面に桃ちゃん、稜葵の前に金髪野郎が座る位置となる。
「こちらの殿方とはどの様な関係で?」
「特に関係は無いよ。コイツが餓死しそうだっから助けてあげてるだけ。そういえば、名前聞いてなかったな。」
「ん?俺かい?そうだな、聞いて驚くなよ!俺はなんと、天下の大悪魔、ベルゼブブ様なのだ!」
金髪野郎、もといベルゼブブがキメ顔でその様な自己紹介をする。
「あぁ、七つの大罪の暴食の罪ってやつ?」
「その通りだ!俺はソロモンに命令されて、無理矢理遥々アスクム帝国からこの土地を荒らしに来させられたのだ!さぁ跪くなら今のうちだぞ!」
無言で柄のない包丁を作り、ベルゼブブの顔面の真横に射出する。
「親しみを込めてベルゼとお呼びください綾様!」
犬だろうと蠅だろうとやっぱり躾は重要である。
「それでは、こちらの可愛らしい子供は?」
「こっちは桃ちゃん。私の知り合いの子供なの。」
「どうも、桃です。名付け親は綾です。」
「わぁ、綾って高校生の分際で名付けなんてしてしまうのですね、はしたないです。」
どこがはしたないのだろうか。そういえば、この子もアホ神の影響を受けてるんだよね、落ち着け私の心。この子に罪は無い。
「稜葵こそ、こんな所に独りで何してんの?」
「それを聞かれます?知りたいです?」
「え、何勿体ぶってんの?」
「実は、今朝父親がこのファミレスを買い取ったんです。」
「聞きたくなかった······。こんな所買ってどうするつもりなの?」
「さぁ?ただ昨晩、ここでエンジェルが働いてるのを見たって言っておりました。」
「うわぁ、アホ神の影響受けすぎでしょ······。」
「え?アホ神?」
「ああいやいや、こっちの話!こっちの話!」
「まぁいいですわ。そういう事で、望むなら全て無料にして差し上げれますけど?」
「わぁお、ガチ天使だよ。」
「お客様、店内では静かにしてくれって皆が言っているでしょう。それに天使天使煩いです、私はあまつかって言ったじゃないですか。はい、DXお相撲さんランチです。」
クソ天使の横槍が入る。見掛け倒し天使は要らないのに!
「てか何で結局DXお相撲さんランチ出して来てんの!お子様ランチって何度も言ったよね?」
「すみません、つい。」
「ついで済むか!今回は稜葵ちゃんが来たから助かったけど、普通こんなの払えないからね?」
「あら、これはまた美味しそうなセットですね。是非ともここの名物商品にしましょう!五千円で。」
「いや、リーズナブルが売りのファミレスでそんなの売ったらダメでしょ!」
「団体客には売れると思われますけど?」
うっ、正論を返されて胸に刺さる。
「なぁ、これも全部俺のか!?」
「いや、これは桃ちゃんのだよ。アンタは今自分のを食ったでしょ。」
ベルゼがヨダレを垂らしながらDXを見つめる。
「えぇ、いいじゃねぇか。こんなに沢山あるんだからさ。」
「綾、私もこんなに食べきれない。半分コイツにあげる。」
「え!それでも半分食べるの!?残った分を私と稜葵で分けようと思ってたのに。」
「え?私は大丈夫ですよ、先ほど自宅で食べてきたので。」
「おっ!なら俺の分も出来るな!」
「否!ここは今日一番の功労者である私が全て食べるべき!」
「はぁ?よし、分かったぜ。なぁ、稜葵って嬢ちゃん。ここのもん全部無料で食わせてくれるんだろ?」
「ええ、そうですけど。」
「だったらやる事は1つ!ミカエル!DXお相撲さんランチを俺にもくれ!」
「だからどうして貴方達は地上で私を真名で呼ぶんですか。それに、蠅虫に名前を呼ばれる筋合いはありませんから。」
「なにそれ酷い!こんなでも元同僚だろ?頼むよ〜!」
「ミカさん、私からもお願いします。お給料弾みますよ?」
「わ、分かりました、仕方ないですね。」
稜葵の一声でクソ天使が言う事を聞いた。社会的地位の差って怖いね。っていうか、ベルゼ今クソ天使のことを元同僚って言ったよね?
「はい、DXお相撲さんランチです。」
「早っ!私の時よりも早くない!?」
「そりゃあ、お金が発生するなら頑張りますよ。熾天使だもの、ミカエル。」
「そんな短歌っぽく言われてもなぁ······。」
「おぉ、なぁ稜葵嬢ちゃん!俺、これから此処に住んでもいいか!?」
「え?もちろん駄目ですよ。キチンと働け蠅。」
「「「············。」」」
この様にして、ベルゼがこの街に住み着く事になったのであった。
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稜葵=いつき
青木ヶ原=富士山の麓にある樹海




