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新延長:avenir or cmeptb  作者: 依冬×夜霧 裕
近代ジパング編
27/113

第25話 虹の世界3

「ん?綾と佳代じゃないですか、何故こんな所へ?」


 クソ天使が玉座に座っていた。

 へぇ、アリスは元佳代って名前なのか。つまりこの子も前は女の子なのか。

 佳代ことアリスに顔を向けてみると、彼女は挙動不審になっていた。


「ああそうでした、佳代さんとは初めましてでしたね。」

「え?アリス、アンタこいつと会ったことないの?」

「うん、むしろお姉ちゃん之に会ったことあるの?」

「うん、転生する前にアホ神と一緒に。」

「え?転生する前に?私、何も言われずに転生してるんだけど······。」


 なるほど、私が時間を取りすぎてアリスの時間が無くなったって感じかな。


「いえ、私が佳代さんを知ったのは二人が転生した後のことです。つまりメタトロンが忘れてただけでしょう。」

「えぇ、なにその人酷い。」

「それよりさ、どうしてアンタがここに居るの?ここってホームセンターじゃなかったの?」

「勿論ホームセンターですよ、ここは。何か欲しいモノでもおありで?」

「あぁうん、ちょっとテレビゲームがしたいなぁって思って。」

「は?ホームセンターにゲーム置いてるわけないでしょ。」


 返す言葉がない。


「いいえ、クリスバードがここでゲーム機を売ってると言ってたんです。」


 致命傷を受け虫の息だった私にアリスが補助に入る。


「なるほど、それで此処に来たと。ですが、残念ながら無いものは無いですよ。無い袖は振れないというものです。」

「なら何処に行けば買えるの?」

「それは私の受け持ちの仕事ではないので、自分で調べてください。」

「ならさ、アンタはどうして此処にいるの?仮にも天使なんでしょ?」

「仮ではなく本物の天使ですよ。仮なんかでこんな立派な羽根が生えますか、普通。此処にいる理由は只の暇潰しですよ。それ以上でもそれ未満でもありません。」

「それって数学的意味で解釈すると、暇潰しではありませんって意味になるよね!」

「まぁそんな事はお気になさらず、ゲームを探しているのでしょう?なら、この街に一つや二つは電器専門店はある筈ですよ?一応言っときますが、この世界の物価はプライスレスです。」

「あるならあるって先に言ってよ!ほら、行くよアリス。」

「あ、うん。歩くの速いよお姉ちゃん。」


 アリスを連れてホームセンターっぽい所から脱出する。


「あれ?アリシアとクリスバードは?」

「お姉ちゃん、足下見てみて。」


 アリシアとクリスバードが姿を消し、アスファルトの上に1枚の手紙があった。


『拝啓クリスチャンとアリスへ。怠くなったので帰ります。夕飯までには帰ってきてね。アリシアより。』


「あぁもう、あのアホ夫婦は······。普通2歳の子供をほっぽいて自分らだけで帰る?ありえないでしょ。」

「お姉ちゃん、裏面にも何か。」


『拝啓クリスチャンとアリスへ。夕飯までに帰らないと夕飯は抜きになります。あ、それと帰りは魔物や魔獣に、遭遇するかもしれないので父親譲りの魔力で倒しちゃってくれ。クリスバードより。』


「だぁ!んなろー!危ないって自覚してんじゃん!DQNでもそうそうこんな事しないよ!!」

「お姉ちゃん落ち着いて、私達の目的はゲーム機を買うことでしょ?早目に買って早目に帰ったらいいだけだよ。」

「でもさ、あの2人が居ないとお金無いじゃん。」

「さっきの天使はプライスレスって言ってたよ?」

「あぁなるほど、それなら二人だけでも買えれるか。」

「それでさ、この街って広いから、ここを拠点に右と左で別れて探そうよ。」

「それ名案!私は左を探すからアリスは右を探して!」


 決まれば早いと左に走る。途中振り返ってみるとアリスの後ろ姿が見えた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 走れど走れど子供の速さではなかなかに効率が悪い。前世は忍者であったが、身体がリセットされれば意味も成さない。

 そもそも父親譲りの魔力って何なのだろう。魔術なんて前世で多少使えた程度だ。どれだけ魔力が高かろうと慣れていなければ猫に金貨である。

 ならば忍術で対抗するか?いや、私は分身の術以外は道具が無いと何も出来ないんだった。

 もう、ホントなんなのよあの夫婦!


 気が付くと建物が姿を消していた。振り返ってみると、街が遠くに見える。


「あっれれ?いつの間にこんなに離れたんだ?って、あれ?何だろうアレ。」


 遠くに、それこそ陽炎のような何かが空中に浮いていた。

 これは知らずにはいられない、と私の本能がそう告げている。では向かうしかあるまい。


 それは意外と小さく、意外と近くにあった。まるで霏のような、亀裂のような。

 とりあえず手で触れてみる。なに、心配はいらない。この身体はTPOに対応する構造なのだ。


「んっ、何これ。身体に、いや、心に入ってくるような······。」


 私に無許可で霏のようなものが心を侵そうとして来る。しかし、それと同時に、これが何なのか解るようになってくる。


「んぶっ、ぷはー、はぁはぁはぁ······。」


 いつの間にか息が止まっていたらしい。それと同時に手も霏から離れる。しかし、周囲は真っ暗になっていた。

 あれっ、いつの間に夜に?ってことなら、私って夜になるまで息を止めてたってこと?あ、TPO能力のお陰か。ついでに真っ暗闇でも見える様にしよう。

 目も見える様になったことだし、街に戻るかな。ということで、街に向けて足を向けるのだった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「お姉ちゃん遅いよー!」

「ごめんごめん、ちょっと見た事ない不思議現象見てたら長引いちゃって。」

「まぁ別にいいけどさ。それより、ゲーム見つけた?」

「んーん、こっちはカラッキシだった。アリスは?」

「実は、電器屋見つけたんだけどね。そこが爆破テロされちゃってて。」

「え、爆破テロ!?大丈夫だったの?」

「うん、私はアリシアさんの遺伝で助かったよ。それで············、どさくさに紛れてゲーム機GETしちゃいました。」

「おー!凄いよアリス!お手柄だよアリス!」


 流石は私の妹である。運の悪い私とは大違いだ。てか爆破テロって······、人間まで物騒でどうすんのこの世界。


「それじゃ、帰ろっか。」

「うん。そうだアリス、暗闇でも目が見えるようにしときなよ?」

「分かってるよ、電器屋の中が真っ暗になってたからもうしてある。」


 それでは我が家まで急いで帰ろう。クリスバードが夕飯を全て食べてしまう前に。まぁ、TPO能力で食べなくとも大丈夫なんだけどね?


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 日中の時と違って意外と帰り道が長い。この世界は太陽みたいなのはあれど、星や月は一切見えない。


「な、なんだか怖いねお姉ちゃん······。」

「大丈夫だって、何かあっても私が守ってあげるからさ。」


 決め台詞を言ってみる。フラグじゃないよ?

 すると、


「ガルルルルルルルゥゥ」


 野犬の群が現れた。逃げようとしたが、回り込まれてしまう。よろしい、ならば戦争だ。


「アリスは後ろに隠れてて。」

「う、うん。だけどお姉ちゃん、これあげる。」


 アリスがナイロン袋から1枚の黒い刃を取り出す。


「えっ!これ手裏剣じゃん!どうして持ってるの?」

「お姉ちゃん待ってる間、ホームセンターを漁ってたら売ってたの。これならお姉ちゃん闘えるでしょ?」

「ありがとうアリス!これで百人力だよ!」


 私がアリスの手を取って喜んでいると、容赦なく野犬Aが駆け寄ってくる。


「よっしゃ、まず1匹目くらえ!」


 手裏剣を野犬の額にぶん投げ、ヒットする。


「え!投げちゃうの?」


 アリスが驚いた様にそう言う。いや、手裏剣って飛び道具でしょ。

 確かに、たった1枚の手裏剣を使ってしまった。見る限り残りの野犬は7匹程だ。足りよう筈もない。

 だがしかし、この私を舐めてもらっちゃ困る。


 7枚の手裏剣を作り出し、7匹の野犬の額に射出する。よし、これで全滅である。


「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!今何したの?」

「ふふん、流石のアリスもこれは分からなかったようだね、ふふふ。」

「教えてよ!」

「仕方ないなぁ、特別だよ?······アリスから受け取った手裏剣を読み取って、生産したの。」


 私はキメ顔を作って、そう宣うのであった。

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