第24話 暴食3
「クソ天使、どうしてアンタがこんなとこにいるの?」
「どうしてと問われましても、これはアルバイトという一種の就活ですよ。ちなみに、アルバイトというのは英語ではなくドイツ語だそうですよ?」
「いや、英語かドイツ語かなんてどうでもいいから。アンタってホント神出鬼没よねぇ······。てかバイトなんかして、どういうつもり?」
「それは勿論お金を稼ぐ為ですよ綾さん。あれ?もしかしてお金という物をご存知ない?」
「知っとるわ!てより私よりも後ろの金髪野郎の方がお金を知らないわ!」
後ろに親指を向けながらそう反論する。
「それにしても綾さん、地上での私はミカエルではなく、あまつかミカですよ?てんしてんし言わないでください。」
「なに名前に拘ってんのよ。てかアンタって国籍無いから就職もイアゼウスパスも配給されない筈でしょ?どうしてフル装備してんの。」
クソ天使こと天使ミカの左耳にはイアゼウスパス、服装はこのファミレスの制服が着装されている。
「知らないんですか?ここはメタトロンの結界が張られているので、この地域限定で私は国籍を有耶無耶に出来るんですよ。それと、このイアゼウスパスは綾さんのおさがりです。」
「ちょ!?それ私のイアゼウスパスなの?」
「はい、あの時回収しておきました。データはホワイトアウトしてましたけど。」
期待した私がバカでした。そりゃデータ消えるよね······。あぁ、連絡先やらチャット履歴も消えたのか。悲しい。
「消えたんならまぁ、どうしようもないし、それでいいわ。ほら、私に返しなさい。」
「え、嫌ですよ。もう私用にカスタマイズしちゃってるんですから。これかなり古いですし、ご自分は新しいのを購入されては?」
「うあぁ、めんど。」
いくら国の制度で無料であっても、入手の手続きが複雑なのである。故に面倒臭い。
だがまぁ、クソ天使の言うことにも一理ある。ここは大人しく従っておいてやろう。
「それで?何の用事ですか?綾さん。」
「ああ、そうそう。注文を伝えに来てたんだった。」
「注文ですか、ならイアゼウスパスですればいいじゃないですか。」
「だから、そのイアゼウスパスが無いって言ってんでしょ!」
「なるほど、では注文を聞き受けますよ。」
クソ天使が腰のポケットから伝票を取り出す。
「まず、ドリンクバー2つにお子様ランチを1つ。それで、ネギトロ丼を3杯お願い。」
「え?綾さん、子供っぽさを残しながらもカロリーの塊を3杯も食べるなんて、将来の夢は相撲取りなんですか?」
「私は食べないよ。あそこの青髪と金髪が食べるの。そもそも何も食べなくともお相撲さんになれるし。」
「あら、いつの間に夫と娘をお持ちに。年齢に似合わずおマセさんですねぇ。」
「おマセさん言うな!アレは夫でもないし娘でもない!そもそも私の年齢はそこら辺の大人より上なんですけど?」
「はいはいドゥドゥ、落ち着いてください。ご注文はドリンクバー2つにネギトロ丼を3杯、そしてスパゲティとオムライスとエビフライにハンバーグ、豚テキとホルモンにラードでよろしいですね?」
「よろしくなぁい!お子様ランチを分解するな!特に最後のなに?ソーセージだけ分解しすぎでしょ!」
「チッ、細かいですね。」
「いや、細かいのアンタだから!お子様ランチ分解したらそれもう何様ランチ?ボッタクリ様ランチになるよね?」
「いいえ、之は大量のカロリーによるDXお相撲さんランチですよ。」
「何お相撲さん引き摺って来てんの!どれだけ私をお相撲さんにしたいんだよアンタ!」
「大丈夫ですよ、綾さんなら横綱も夢じゃありません。目指せ、武道館ライブです。」
「相撲を何だとおもってんの······。お相撲さんは歌手じゃないんだからね?もういいからさ、早くお子様ランチだけでもいいから出しなさいよ。」
「分かりました、それでは御機嫌よう。」
そう言い残し、クソ天使が店の奥の方へ歩き去る。去る時は早いんだよなぁ、コイツ。
テーブル席に戻ると、金髪野郎がオレンジジュースを飲んでいた。
「ちょっ、バカ!ドリンクバーは店員さんがくれた専用コップで使うものなの!」
「いや、そうは言われてもなぁ。やっぱりどれが水なのか聞こうと思ったけど、嬢ちゃんが遅いから適当にやってみたら偶然ジュースが出ちまったんだよ。」
「綾、この黒い水シュワシュワしてて甘い。」
「ほらよ、アンタの分もジュースだ。」
「やっぱり私のもかよ······。」
私のコップにはコーヒーが入っていた。ジュースじゃないし!
とりあえず落ち着いて考えてみよう。お子様ランチが4百円、ネギトロ丼8百円が3杯で二千四百円、ドリンクバー3百円が2つで三千四百円。それで、もしこの状況を店員に見られるとドリンクバーをもう一つ強制追加で三千七百円、そこに消費税9%をプラスすると、4033円。
外に出た時は4千5百円持っていたが、コンビニで100円セールおにぎりを五個買ってしまっていたので、実質手持ちは3955円。例え消費税が8%に落ちても足りはしない。
「こ、これは不味いって!早く隠蔽しないと!」
というわけでコーヒーを一気飲みする。あ、美味しい。
しかし、それも成功することはなく、
「お客様ぁ?今何をお飲みになさりましたか?正直に言ってくださいます?」
2つのカップを持った、察しの強い店員がテーブル席の前に立っていた。
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