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組織的異世界転生〜終末の魔女を救う為、呪われ姫は夢洲に仕掛けをしました〜  作者: たりな
第一章 異世界への入り口(万博内郵便局)

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 8月9日(土)


 夏休みに入り、三連休の初日。

 万博会場は朝から親子連れで溢れ、笑い声と歓声が途切れることなく続いていた。

 その人混みの中を、Sは不機嫌そうな友人Rと並んで歩いていた。

 かって、HとSの同期だった友人……。

 そして、HとSが秘密を共有する女性……。


 ある事件がきっかけでRが会社を退職したのは数年前だ。

 当時のRは春の陽ざしに負けないくらい笑顔が眩しく明るかった。

 黒髪は肩でふわりとはね、背は小柄。

 それなのに、大きめのリュックを背負い、胸元にはいくつも缶バッジが揺れている。

 ……だが、幼く見えるその小さな体の中に、Rは天才的頭脳を宿していた。

 〈声帯認証・詐欺撲滅システム〉会社の主力商品の一つをRは誕生させ、それがHの運命に大きく影響を及ぼしていくのであった……。


 久しぶりの休日。

 三連休とはいえ、Sが休めたのは今日一日だけだ。


 万博会場には郵便局が二つある。

 広大な敷地の東と西、その端と端に。

 Sたちが訪れていたのは、東ゲートを入ってすぐの《EAST郵便局》

 この日限りで開催される「記念押印イベント」

 会期中の通常押印とは異なる、Sの“推しキャラクター”の限定デザインだった。

 郵便局の外まで続く長蛇の列を見てRが叫ぶ。

「ちょっと! 二時間待ちですって!」

 強い日差しの下、汗を拭いながらも、切手帳を抱えるSの手はどこか嬉しそうだった。

 職場ではバリキャラと評される彼女も、こうした時は、少しだけゆるい、幼い少女の表情に戻る。

 列に並びながら、Sはふと空を見上げた。

 ……この空の下に、Hもいるのだろうか。

 Sは知っていた。

 同じ休日に、Hと彼女が一般客として会場を訪れていることを。


———


 一方その頃。

 会場の反対側、西ゲート近くにある《WEST郵便局》

 Hと彼女は、並んで立っていた。

「一つ、聞いてもいいかな」

 Hは、彼女から渡された電子チケットに目を落としながら言った。

「今日は一日券を買ったんですね」

「はい。私は通期パスを持っているんですけど、Hさんが持っていないって聞いたので」

「……でも、どうして二枚?」

 彼女の手には、Hと同じデザインの一日券があった。

「気づかれちゃいました?」

 少しだけ照れたように笑い、視線を逸らす。

「一日券を一枚ずつ買うより、少しだけ安いんです」

 そう言った後に短い沈黙があった。

 彼女は小さく息を吐き、淡い声で続けた。

「私……少しだけ“特別”なんです」

 言葉を選ぶように、一つずつ紡いだ。

「国が指定している病気で……特定疾患。いわゆる、難病ってやつです。治らないって」

 Hは、言葉を失った。

「……ちょっとだけ、病院と仲良しなだけですよ」

 そう言って笑う彼女の表情は、いつもの無邪気な笑顔とは違っていた。

 明るさの奥に、はっきりとした“影”があった。

「見てください、これ。気になりません?」

 空気を切り替えるように、彼女は子どものように目を輝かせる。

 Hは腕を組み、案内板を読んだ。


 《Pℓay!未来からの手紙》

 名前や年齢、将来の夢を入力し、顔写真を撮影すると……生成AIが「20年後の自分」からの手紙を作成します。


 Hは小さく笑う。

「当たり障りのない手紙しか、作らないんじゃないかな」

「私は、ワクワクします」

 彼女は迷いなく言った。

「だって、自分がどんなふうに生きてるか、ほんの少しだけ覗けるんですよ?」

 その笑顔は、先ほどとは違い、まっすぐで眩しかった。

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