14.ミリーの伝言
かくかくしかじか。
まずはレイフを紹介し、身内の恥に情けない気持ちになりつつ、経緯を話す。サラとレイフは大勢の大人に囲まれていた。
アネッタ含むストリングス家の人々に事情聴取を受けたサラとレイフの御一行。
本当に顔見知りになっておいてよかった。サラの中のコニーの株は爆上がりである。
今後どうするか。
専らの議題はそれである。
「とりあえず寮に戻ってみたら? 」とアネッタ。
「サラ、ご家族は寮の位置はご存じ? 」
ケイシーがおっとり首を傾げる。
「わかりません。いったいどこまで調べているのか。」
サラから家族には伝えていないし、伝えるわけもない。だが。寮の場所なんて、酔っぱらった王立学院出身の精霊術師に鎌をかければ、躊躇なくべらべらと聞かれていないことまで話すにちがいない。
王立学院は全寮制なのである。
「そう。なら、寮へ戻るというリスクのある行為は賢明ではないわ。うちに泊りなさい。カルドラ、寮への知らせの使いを頼めるかしら。」
「承知いたしました。」
「カルドラは、うちの奉公人よ。」
アネッタが補足する。
「信頼できる人間だから、心配しないで。ガタイもいいし、滅多なことは起こらないと思う。」
「ありがとうございます……。」
頭が上がらない。
ストリングス家の人々には今後一生足を向けて寝られない。
ララがぷくーと頬を膨らませる。
「サラ、やっぱり『ざまあ』だよ。『ざまあ』をすればあいつらもサラに絡む気をなくすよ。『ざまあ』して! 」
サラは考え込んだ。
これまでは小説と同じ展開が見たいララの我儘と思って聞き流した。しかし、こうなってくるとララの理論も一理あるような気がする。
たとえば、二度と立ち上がれないほどに心を折ってしまえば。家族もサラと関わらなくなるのではないか。
ううむ。
「私も『ざまあ』をするべきかも。」
サラはひとりごちた。
黒いオーラを発するサラとララを、レイフとクライヴが恐怖を滲ませた表情で眺めていた。
「サラはうちに泊まるのね。」
アネッタが頬を火照らせた。
「どうしましょ、すごく嬉しい。いっぱい喋りましょう。今日は寝かさないんだから。」
「こら。睡眠は取らないと肌に悪いわよ。」
ケイシーに嗜められ、アネッタは小さく舌を出した。
突然、ララが飛び込んできた。
「サラ、ミリーが伝言。寮母さんから。『寮ノ前ニ家族アリ。帰ッテクルナ旅館ニトマレ。カネハ寮母ガ出ス。』」
サラとレイフは青い顔を見合わせた。
「危なかったな。」
「危なかった。今日はもう会いたくない。」
「さすがケイシー、慧眼だったな。不審者を家に入れないよう商会の者には通達を出す。安心して泊まっていくといい。」
ジェレミーさんが請け負ってくれた。
サラは泣きそうになった。
合議の結果、学院の教師に間に入ってもらうことが最善という結論に達した。
学院は、精霊術師を保護する役目を負う。
精霊術師を保護してくれるのなら、精霊術師の卵も保護してくれるだろう。たぶんだけど。
学院の先生は精霊術の権威ばかり。文字通り、精霊術の最高峰で、政治的な影響力は計り知れない。
ストリングス商会の商会長でアネッタのお父さんでケイシーさんの旦那さんであるジェレミーさんは、学院の教師が変な人であった場合を心配していた。
しかし。
レイフ曰く、「学院の教師は相当な審査を経て採用される。変な人間はあんまりいない。むしろ、まずいのは研究所の人間だ。」とのこと。
安心できそうで何よりだ。
サラはアネッタの部屋にご厄介になった。
アネッタに誘われたのだ。
ケイシーさんは客間を用意してくれると言ったけれど、サラ自身がそれを断った。
想定とは異なる形であれ、アネッタと念願のごはん会をし、夜着を着て女の子どうし喋り尽くす。
女の子は相手がいればいくらでも喋っていられるいきものなのだ。
これを書いている現在、夜の11時半。
睡眠は取らないと肌に悪いね!!!!!




