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13.真剣な鬼ごっこ


 「待て!!!」


 叫びながら全力疾走してくる兄を見て。

 サラとレイフとララとクライヴは全力で回れ右をした。


 十三歳の少女を追い回す十八歳男。

 要するに、エドモンドは完全なる不審者だ。普通でも係りあいになりたくない。


 二人と精霊たちは走る、走る、走る。


 この中では最も首都に詳しいレイフを先頭に、隊列は街を駆け抜けた。


 建物の隙間に入り込み、物置に身を隠し、猫のように塀を乗り越える。


 路地に出る。鬼の形相で待ち伏せいている兄がいた。乗り越えた塀をまた来た側へ逆戻る。足を掴まれかけたが、すんでのところで身を躱わす。


 ララが殺しそうな目つきで兄を睨んでいるのを横目に、裏木戸を抜けて隣の家の庭へ逃げ込む。


 追跡者から逃げるという大義名分はあるが、やっていることは混じり気無しの完璧な不法侵入。

 サラはそれについてはもう考えたくなくなかった。



 四人は、どこかの家のごみ焼却炉に身を隠していた。かなり広い家だった。ごみ焼却炉を個人で所有しているということは、ある程度は裕福なのだろう。

いくつかある焼却炉のうち、紙ゴミが多く放り込まれているのを選んだ。さすがに生ゴミまみれでぷんぷん臭うのは遠慮したい。


 昨日までは怪しい変な人だと思っていた少年に助けられ、いまはごみ焼却炉の中で身体が触れ合う距離で一つ所に潜んでいる。人生って不思議なものだ。


 暗い空間に各々の息遣いだけが響く。


 初対面ではけちょんけちょんに言ったが、レイフは顔()かなり良いのだ。顔()。会話のスキルは底辺だけど、でも、危機に陥ったときにはちゃんと助けに入ってくれた。


 サラは、レイフの優しさが心にじわじわと染みていく気がした。鼓動が強く鳴っている。ここが暗闇で良かった。

 だって、赤くなっている顔を見られずに済むから。


 遠くから微かに兄の声がした。

 レイフに対して高まったサラの気持ちは、一瞬で雲散霧消した。なんなのだ、あの男は。


 もはや、怒りを通り越して呆れである。

 なぜ、こうもサラの居場所をニアミスしてくる。ストーカーなのだろうか。サラに意地悪してきたのも歪んだ愛情の表れ?


 執念深く追って来たエドモンドの気配が消えるのを待つ。


 「エドモンド、もうやめだ。ここらにはいないだろう。」

 追いついて来た父の声がする。


 「そうですね。他を当たりましょう。」兄が言った。


 彼らの気配が消える。


 全員がほっと息をついた。


 「ねえ、なんだか暑くない?」

 ララがぶんぶん飛び回りながら叫ぶ。


 「隣の焼却炉に火が入れられたんだ!」レイフが叫ぶ。


 阿鼻叫喚の大混乱。

 誰が何を叫んでいるのやら全くなにもわからない。もしかしたら、ここにも火が入れられて紙ゴミと共に燃やされてしまうかもしれない。四人は外へ転げ出た。


 「は?」

 異国風の顔立ちの青年が目を丸くしてこちらを見ている。


 「すみませんでしたっ……!! 」


 二人と精霊たちは彼に向かって全力で頭を下げた。


 青年は尚も戸惑っている。

 「いったい何故、こんなところに。」


 「それは…。」

 サラとレイフが経緯を説明しかけたまさにそのとき。


 「カルドラ、パパが呼んでるわ。今すぐ倉庫に来て欲しいって。」

 何やら聞き覚えのある声がする。


 裏口の扉を開けて出てきたのは、アネッタだった。

 サラは彼女と引き合わせてくれていたコニーに、想像の中で熱烈なハグを送った。


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