12.声を掛けた理由
サラは唖然としてレイフを見つめた。
「ありがとう…助けてくれて。」
レイフは決まり悪げに頭を掻いた。
「いや…。聞きたいことがあってずっと探してた。気をつけて過ごしていたからたまたま気づけただけだよ。」
いったい何を言われるのか。サラは身構えた。
「あー、その、サラは契約の儀式の前に精霊と契約してただろ。」
否定しかけたサラを制してレイフは続けた。
「俺とクライヴもそうなんだ。」
サラは目を瞬いた。
「普通は、自力で精霊を感知して交流することができない。長いことそう考えられてた。特別な訓練を受けた人間以外は精霊を感じ取れなかった。」
レイフは説明を続ける。
「でも、俺は違った。俺にとって精霊は昔からの友達で、すぐそばにいる変なやつだった。」
「私もそうよ。」
サラはいまや夢中だった。
「学院に入って、やっと自分が普通じゃないって、気づいた。」
「契約のときのお前らの様子を見てそうじゃないかと思ったんだ。俺たちのような体質の人間は、どうやらこれまでいなかったらしい。お偉いさんは何か良くないことの前兆なんじゃないかって、びくびくしてる。」
「そうなのね。」
悪いことをした。
彼はただ自分と同じ者を見つけて、声を掛けたかっただけなのだ。
「冷たくしてしまってごめんなさい。私とララ…契約精霊はララっていう名前なんだけど、私とララの関係がばれたら、研究所とかに連れられて二人が引き離されてしまうと思ったの。」
レイフはかぶりを振った。
「いや、サラのその感覚は間違っていない。俺とクライヴも、研究所でさんざん調査済みだ。なあ、そうだろう?」
レイフはクライヴのほうを振り返る。
「ああ。」
クライヴは重々しく頷いた。
「俺はもともと貴族の出だから、精霊学の教師をつけられてた。そいつが気づいたんだ。」
レイフはどこか遠くを見ている。
「俺がめちゃくちゃ優秀だってのもあって、精霊術師の認定試験を三年前に受けた。精霊術師三人の推薦があれば受けさして貰えるんだ。」
なるほど。
だからサラと変わらぬ年頃の男子が精霊術師をやっているのだ。精霊術師の資格を取るには学院を出るしかないとばかり思い込んでいた。
「まあ、何が言いたいかっていうと、契約を隠そうとしたお前の勘は悪くない。俺とクライヴのことは表には出てないんだ。変なやつに見つかったら騒ぎ立てられて大事になってたかもしれない。」
というか、この人距離感が近くないだろうか。喋るのはほとんど今日が初めてのはず。
なぜ、数年来の友人のような空気を醸し出しているのだろう。
そんな疑問は他所に、サラは会話を続ける。
「家族に見つかったら嫌がらせをされるから、隠す習慣があったの。それに、私の精霊学の先生が、隠しなさいって、忠告を。」
「そう言えば、さっき絡まれてたアレが家族なのか。」
レイフは納得したように頷く。サラはなんだか複雑な気持ちになった。
「ねえ、これからどうしたらいいのかな。私もレイフみたいに名乗り出るべきなのかな。」
これまで黙っていたララが割り込んでくる。
「サラ、ララはサラと離れたくないよ。」
「名乗り出る人間を間違えなければ大丈夫だと思う。まずは院長だな。俺は学院に行ったことはないけど、仕事で喋ったことがある。あの人は、まあ、たぶん、大丈夫。」
「そうなのね。ありがとう。帰ったらアポイントが取れないか試してみる。」
大通りに出て、寮への道を辿る。
すると。
向こうから歩いて来た兄と、バッチリ目があった。
兄がこちらへ全力疾走してくる。
あ。
レイフの話が衝撃的すぎて、家族のこと忘れてた。




