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【幕間】【兄視点】いけすかない妹



 エドマンド・ベルクマンは妹が嫌いだった。正確には、下の妹が嫌いだった。


 彼が4つ、妹のジェニファーが3つのとき。


 母親が死んだ。

 出産での事故だった。


 父と、自分と、ジェニファー。

 この三人を繫ぎとめていたのは母だった。


 三人の糸を中心で握っていた母がいなくなり、家族は呆気なくばらばらになった。


 冷え切った食卓。誰もいない揺り椅子。ねじを巻かれない掛け時計。


 暖かかった母が消え、あとには煩く泣き喚く生き物だけが残された。


 父はもはや子どもへ興味を持たなかった。ジェニファーは、家に寄り付かなくなった。


 家族団欒の空間が恋しかった。あの温もりを自分たちから奪ったサラが憎かった。


 ジェニファーと組んで、ひたすらサラに嫌がらせをした。


 サラへの嫌がらせを考えている時だけは、ジェニファーとあの頃の関係に戻れている気がした。


 父は仕事から帰ってこなかった。むろん、赤子のサラの面倒などみなかった。


 基本、サラは放置されていた。


 乳母が泣いて懇願してくることもあった。

 鬱陶しいので、サラが自分のことを自分でできるようになったころ、父にあることないこと吹き込んで辞めさせた。


 家族団欒のさまをサラへ見せつける。

 何よりの嫌がらせになると思った。ジェニファーも巻き込んで、父を取り巻き、皆で暖かい家族であるかのような会話をする。


 上辺だけの空虚なさまを取り繕う毎日。

  それでも、家族が四散してしまうよりよほど幸福だった。


 このまま、この日々が続くと思っていた。


 サラが家を出るまでは。


 サラがいなくなって。

 ジェニファーは、男の家を泊まり歩いているようだった。


 父は、もとからいてもいなくても変わらない。


 それでも、エドマンドとジェニファーが二人で働き掛ければ相応には応えてくれていた。


 だが、最近はエドマンドの誘いが断られることが増えた。


 あれもこれも、サラが家を出て行ったせいだ。

サラさえ戻ればまた元のようになるに違いない。


 エドモンドはそう考えた。


 父にサラが嘘をついているのではないかという懸念を植え付けて、サラを無理にでも連れ戻そうか。

 だいたい、特待で受かったというのも怪しい話だ。


 まあ、百歩譲って本当に受かったと仮定しよう。

どうやら町外れに住んでいる変人の学者から勉強を教わっていたようではあるのだ。

 生活費の援助はその夫婦から受けているらしい。


 問い詰めると、サラがいかに優秀かを力説された。


 そんなわけがない。

エドモンドが知っているのは、言いつけられたこともできない、愚図で愚鈍な妹だ。

 本当にそうであったとしても。

 それでも、まともに習い事もしていない妹が、特待を取れるとは思えない。


 父を誘導し、共に首都に向かわせることには成功した。

 あとはサラを連れて帰るだけだ。



 上手く事が運ぶと良いが。


 首都に向かう列車の中。

 エドモンドは昏い溜息をついた。

結局、家族を結びつける役割はサラが担っていた。

皮肉なものです。

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