表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/22

『マイルール・レジスタンス』


朝8時45分。スマホのアラームが鳴る。

3回目だ。つまり、今日は3度目の“限界”ってこと。


「……やっぱムリ。あと15分」


布団の中に潜り込んで、毛布をぎゅっと抱きしめる。

窓の外は晴れ。風は強そう。天気予報は“ややだる日”。

登校ギリギリまで粘って起きる——これが私の朝のマイルールその1。


 


***


 


私の名前は朝比奈みのり。高校2年生。

成績は下から数えた方が早いけど、保健体育はちょっと得意。

あとはまあ、元気だけが取り柄……って言いたいけど、実際は「無理しない主義」で生きてます。


「お前、朝からテンション低っ」


クラスメイトの拓真たくまが声をかけてくる。

はい、うるさい。テンションは朝の気温と反比例するの、知らないの?


「……7時台から元気な人間は信用しないことにしてるの」


「何その偏見。寝てる間に悪夢でも見たか?」


「逆。夢の中でずっとぐーたらしてた。完璧な休日。現実が負けた」


そう言うと、拓真は笑った。


「……じゃあ、現実もぐーたらしとけば?」


「したいよ。でも、しすぎると将来ニート直行じゃん。だから、今のうちに“楽するための苦労”してんの」


「お前……言ってること深いようで浅いな」


「失敬な。私は“明日の私のために今日もなんとか頑張る”んです!」


どや顔で言ってやった。


 


***


 


放課後。部活はない日。


こういう時は、まず寄り道しない。最寄り駅までの坂道をマイペースで歩いて帰る。

そして帰宅後は、お風呂、アイス、スマホ、寝落ち。これがマイルールその2〜4。


だけど今日は——例外。


「みのりー!カラオケいこー!」


莉子に呼び止められた。クラスでもテンション高めのギャル担当。彼女には勝てない。


「え、今日って平日……だよね?」


「うん!そうだよ?逆に“平日だからこそ”でしょ!」


「逆にとは?」


「疲れてる日こそ声出したらスッキリするじゃん!理屈は知らんけど!」


……言ってること、ちょっとだけ分かるのが悔しい。


「まあ……いいか。今日“だけ”ね?」


こうして、カラオケボックスに入室した私たちは、2時間、半端ないぱっぱらっぱっぱらっと暴れ倒した。


私が選んだ曲は、自分で書いたオリジナルの歌詞——。


「眠くなったら寝る お昼過ぎに起きる

遊びたくて遊ぶ お腹減ったらご飯を食べる」


莉子が目をまんまるにして言った。


「なにその歌!ズルい!天才かよ!」


「だろ?」


 


***


 


家に帰ると、妹の優菜(中学生)がリビングに転がっていた。

スマホ片手にため息。テスト週間らしい。


「どうせやっても意味ないんだよね〜」


「それ、めっちゃ分かるけど、やんなきゃさらに意味なくなるよ」


「姉ちゃんは?」


「私は、“やりたくないことやらないためにやりたくないことやってる”だけ」


「それ矛盾してない?」


「してる。でもそれが“マイルール”ってもんよ」


優菜は苦笑いしながら言った。


「姉ちゃん、ゆるそうに見えて、意外と頑張ってるよね」


「えっ。うれしいけど、それを声に出すのやめて。照れる」


 


***


 


夜10時。スマホのメモアプリを開く。

私は最近、歌詞を書くのが日課だ。

誰に見せるでもない。歌手になりたいわけでもない。


でも、「今日も無事だった」を言葉にすると、ちょっと自分を褒めたくなる。


「怠惰じゃないや これ多分そうだ

なんやでやることやっています!WHAT?&BUT

誰に知られなくたって別にいいから

私には私のマイルール」


書き終えて、画面を見てにやける。


「よし、今日も“まぁ頑張った”でしょ!」


そう呟いて、スマホを置いて、アイスを食べて、布団にもぐる。


そして思う。


明日も「頑張らなくていいように」頑張るために、今日もよく寝よう。


 


***


 


朝比奈みのりの「マイルール」は、完璧な計画でも、鋼の意志でもない。

だけど彼女は毎日、「楽するために頑張る」という矛盾を抱えながら、ちゃんと前に進んでいる。


世界がどう思おうと関係ない。

このささやかな「自分時間」を守りながら、今日も彼女は言う。


「けっきょく、私ってば……とっても偉いじゃないか!(Fight!)」


そして、布団の中から叫ぶ。


「半端ないぱっぱらっぱっぱらっ!限界突破らっぱっぱらっぱらっ!」



原曲 ナナヲアカリ 明日の私に幸あれ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ