『Easy Breezy』
Chapter 1 —見切り発車、ブッ放せ—
「はーい、撮るよー!いっせーのーで、バク宙!」
「ちょ、マジでやるの⁉ ああああーーっ!」
ドンッ。
鈍い音とともに、あすかは芝生に突っ込んだ。制服のスカートが土を巻き上げて、次の瞬間、笑い声が空に弾けた。
「……いたっ……けど……撮れた?」
「バッチリ!バク宙っつーか“顔面からの着地”だけど、めちゃくちゃインパクトある!」
スマホを構えていたのは、私——高梨みさき(高2)。
趣味は映像編集、特技は見切り発車。計画性はゼロ。
「Easy Breezy!なるようにするのさ!」
「お前、そのフレーズ便利すぎん?」
あすかが草を払いながら笑う。
そして、もうひとり——
「もう……あんたら、バカじゃないの?」
呆れたように言うのは、クール担当のマホ。だけど、カメラのレンズだけはキラリと光っていた。
Chapter 2 —構想ゼロ、妄想∞—
すべての始まりは、たった一言だった。
「自主制作で短編映像撮ろうぜ。来週までに提出だから」
美術の中西先生が投げたこの課題、みんなテンプレ通りの風景映像とか描写ドラマに向かっていたけど、
私たちだけは、**“完全ノーシナリオの感覚勝負”**でいくことにした。
「テーマは、“わたしの今”でいいっしょ?」
「え、それってつまり?」
「つまり、“Easy Breezy”!」
「それ、もはや何も言ってないのと同じ」
「いやいや、私の中では“Easy Breezy”=“風みたいに生きる”ってことなの!」
「風……というより嵐」
Chapter 3 —カオスはチカラだ—
撮影は、自由奔放だった。
朝の駅前でいきなり合唱
学校の屋上で謎ダンス
商店街の婆ちゃんにインタビュー(「人生で一番Easy Breezyだった瞬間は?」)
マホが編集用に構成を組もうとするたびに、あすかと私はそれを粉砕する。
「ほら、“自分時間、堕落タイム確保”ってやつよ!」
「そんな歌詞、どこから拾ってきた?」
「心の中のアンセムに決まってんじゃん」
だけど、不思議とカオスの中に芯があった。
みんながバラバラなようで、ちゃんと繋がってた。
映像の断片が、音楽とともに、“わたしたちの風”になっていく。
Chapter 4 —夜が明けたら—
徹夜編集の3日目。みんなボロボロ。
「腹減っためっちゃ……ラーメン食べちゃう……」
「それ台詞じゃなくてガチやん」
あすかは寝落ち寸前、マホはカフェインで目を血走らせてる。
だけど、その横顔は、どこよりも真剣だった。
「……なあ。完成したら、見せたいな」
「誰に?」
「うーん、未来の私?」
「それ、かっこいいな」
「Easy Breezy 〜!」
「それはもういい!」
朝5時。窓を開けると、空が薄紅に染まっていた。
「……鳥、鳴いてる。ちゅんちゅん」
「……完成、間に合いそう?」
「完成形、頭ん中ではもう見えてる。……つまり、余裕!」
そしてついに、映像が完成した。
タイトルは『Easy Breezy』。
3分30秒の短編で、
風みたいな音、
空みたいな色、
めちゃくちゃな私たちの“今”を詰め込んだ作品だった。
Chapter 5 —Easy Breezy Forever—
発表会の日。
美術室のプロジェクターに、私たちの映像が映し出された。
最初はざわついてた教室が、
途中から静まりかえり、
ラストカットのバク宙(未遂)で、笑いと拍手が爆発した。
「なにこれ!意味わかんないのに、なんかめっちゃ刺さったんだけど!」
「マジで?泣きそうだった……意味はわかんないけど!」
その反応に、私たちは満面のドヤ顔で答えた。
「な?なるようにするのさ。Easy Breezy!」
中西先生は、しばらく口を開けたまま固まってたけど、最後にこう言った。
「……うん。“めんどくさくなろうぜ”ってテーマ、悪くないな」
Epilogue —Easyに、でも本気で—
それからも、私たちはいろんな映像を作った。
MV風、ドキュメンタリー風、日常記録風。
ノリで作って、ノリで撮って、ノリで世界にぶつけた。
正しいかどうかなんて知らない。
評価されなくても、関係ない。
「ほらどんなもん描こうか こんな色はどうだ」
頭ん中のイマジネーションで、世界を上書きする。
好きなもんは好きでいい。
雑でも大胆でも、自由はここにある。
そして今日も言うのさ。
「やったりゃいいじゃん!どんなもんだ!」
「なるようにするのさ——Easy Breezy!」
原曲 Chelmico Easy Breezy




