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金色の瞳の剣姫は今日も世界を奔走する  作者: 世良きょう
第9章 善なる神の憂い
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第36話 木の葉の試練ー善なる神の憂い編

闇にのまれた極東の島を唯一、照らすのは精霊が放つ光。

光の精霊は私から離れると、杖の先に下げられたカンテラを掲げると周囲をより明るく照らした。


「・・・ありがとう」


傍に戻ってきた所で小さくお礼を告げると、光の精霊は誇らしげに胸を張っていた。

この精霊が後の精霊王となると感慨深い。

周囲は静寂に包まれる中、コウギョクの返答を待つ五柱の神々は急かす事無く静観している。

その中央に狐護様は佇むと、ただ静かにコウギョクを見つめていた。

こうしてコウギョクを神に相応しい存在と認識し、試練を与えると言う事はやはり此処は神様の意図が関わる世界なのだろう。全ては日照大御神の意のままにと言うわけだ。

然し、その本人を外に連れ出すことが試練であり、その相手は神々とはどのような物だろうか。

まるで過去を追体験させられている様だったが、私がここに招かれた謎だけは解明していない。

しいて考えられるのは、クリアーレぐらいだろう。


「ふむ・・・」


待望の試練を前の心境はどんな物かと横目で見ると、コウギョクからは何時もの様に啖呵を切らず

無言のまま神々の姿を眺めては片眉を吊り上げては首を捻っていた。


「どうした?諦めるか?」


「・・・勿論、受けてたとう。ただ、一つ良いだろうか?」


コウギョクは額から一筋の汗を流すと、狐護からの挑発に惑わされず指を突き立て交渉を申し出る。

試練を受けるのならと光の精霊にコウギョクを任せ、踵を返してコウギョクに背を向けて場を離れようとする足が妙に重い。

振り向き足を見ると、右足にコウギョクが確りとしがみついていた。


「・・・放してもらえないかな?」


思惑は外れ、見事に試練に巻き込まれてしまったらしい。


「よもや高みの見物と決め込もうとしているのではなかろうな?」


コウギョクは縋り付く腕に力を籠め、片眉を吊り上げては怪訝そうに私を睨んだ。


「えっと、試練というものはさ・・・」


その真意は不明だが、嫌な予感しかしない。


「お主には一役かってもらうぞ」


コウギョクは悪い表情を浮かべては悪い笑みを口元に湛える。


「一応・・・訊くけど一役って?」


頑なに逃さない姿勢を崩さないコウギョクに腹を括り、その意図を問うと慌てて目を逸らす。


「なぁに、お主はただ妾を護れば良い・・・安心せい!力は此の為に温存してきたのじゃ」


息を吐くと冷静さを取り戻したコウギョクは、私に答えを明かさないまま前足で私の脛を叩いて見せた。

精霊が生み出す光の中、コウギョクは跳躍すると木の葉包まれ宙返りをする。

木の葉が散ると、そこから現れたのは小さな子狐ではなく見慣れた人の姿だった。

コウギョク自身はやる気に満ちているが、五行を司る神々の反応が気になり視線を向ける。


「ふむ・・・先程の件、承諾してやろう」


他の神々が無言のまま、狐護様は私達を品定めするかのように見つめほくそ笑む。

コウギョクが目を輝かせ、狐護様がそっと目を閉じると九つの尾が押し寄せる熱風により左右に揺れた。

視界が赤く燃え上がる、甲高い鳥の鳴き声と凄まじい熱気と共に焼けるような熱気が周囲を覆いつくす。

深紅の炎の翼を持つ神獣は私達を見据えると、紅く燃える羽根の雨を私達に容赦なく浴びせかける。

火は周囲の木々に広がり、試練の舞台は赤く染め上げられた。



「コウギョク。そっちは大丈夫?」


コウギョクは地面に突き刺さり燃える羽根も火も気に留めず、神々に捧げるが如く祝詞を唱えながら一心不乱に炎と光に照らされた舞台で踊り続ける。

青白い狐火が現れ、踊りを引き立てるようにフジとツガルが笛や打楽器で音楽を奏でると炎が一瞬で消え去る。要は、私を盾にする為に一役かわせたのだろう。


「ふん、妾を構っていて良いのか?神獣は朱雀だけではないぞ?」


私を揶揄う様な悪い笑みを浮かべるコウギョク。

スザクと言う事は火の神様、華焔様の神獣だ。


「まったく、誰の試練だと思っているの」


気づけば周囲を赤く照らしていた火もスザクも消失し、光の精霊が放つ光のみが私達を照らしていた。


「解っておる。これは妾に与えられた試練、お主には引き続き神々の相手を頼んだぞ」


コウギョクは胸を張ると扇を構えると、堂々としたり顔を見せつける。

このまま五柱の神様達を退けるのは良いが、大御神をあの岩戸から出す秘策でもあるのだろうか。


「わか・・・くっ!」


迂闊だった。

風と合わさる鋭い金属音、カチカチと何かが断続的に当たる感触と共に刀が絡め取られ右腕が引っ張られていた。

武器を奪われそうになる所を柄を固く握り防ぐと、足に力を込めて地面を踏みしめる。

刀を絡め取り金属同士が擦れ合う音が響かせるそれは、のは細い鎖でつながれた数珠つなぎの緑色の玉。

鎖を視線で辿ると、相手は神獣では無く土の神の土門様だった。

刀をめぐる駆け引きは互いに退かず。

コウギョクは額に汗を浮かべながら木の葉を巻き上げ舞い、ひたすらに祝詞を唱え続けている。


「これは待っていても仕方ないようね・・・!」


鎖を引く手を緩めると、敢えて土門様の懐に飛び込むよう駆け出す。


「・・・」


いくら接近しようと驚きもせず声も発さず、無表情のままの土門様から鎖を奪う筈だったが直前で手放される。

刀に絡みつく鎖を払い除けようと足を止めると、生暖かく荒い息遣いと共にビャッコが牙を剥き出し急襲を仕掛けてきた。

巨躯に覆いつくされる視界、刀を振り上げ鎖をしならせ鞭のようにビャッコの顔面に叩きつける。

ビャッコは顔を背け短く唸り声をあげ、私を探り出鱈目に地面を引っ掻き土を撒き散らす。

苛立つ様に叩きつけられる白と黒の太い尾を横目に振り向くと、そこには土門様もビャッコの姿も姿形も無い。また、消えた?

代わりに私の目に留まったのは一心不乱に舞うコウギョクの姿だった。


「え・・・」


勝手に推測して盾役と決めつけていたが、コウギョクの踊りも襲い掛かる神々にも困惑しかない。

戸惑う足元に硬質な何かが当たる。

複数の円盤が周囲の地面に突き刺さっている、それは全て青銅を磨き作られた鏡だった。

よく知られる物のように鮮明ではないが、光に照らされる鏡面には怪訝そうな顔の私と・・・


「・・・くっ!」


鏡に映る私の背後には金の神、翠様の姿がぼんやりと映る。

鏡面はぐにゃりと歪み、槍が飛び出す。

この国の神々は人の不意を突く事が好みなのだろうか。

槍は何度叩き切れど、鏡を通じて無数に生み出される中で何度も叩き割る。

肩で息をしながら岩場に手をついた筈だが、とソレは湿り気を帯びて固い。

困惑していると目前に巨大な亀の頭が覗き込むように伸びてきた。

おまけに背後からはシューシューと蛇の声が聞こえてくる、その正体が読めてくるとある事に気づく。


「あなたはやはり大御神のただの傍仕えじゃありませんね。狐護様、他の神々は試練に手を貸してなどいなかった」


「ふふふっ・・・あはは」


何者かの笑い声が聞こえ、狐護様は呆れたような表情を浮かべ溜息をつく。


「しかし、あの娘は儂の試練を乗り越えるに値しなかった様で残念だ」


狐の姿から人の形へと化けると、狐護様は玄武を移動させ隠されていた岩戸を扇で指しながら月を眺める。

されどもフジとツガルが奏でる音は止まず、コウギョクは舞い続けていた。


「悪しきを退け給へ、極楽へ夢幻を魅せ給へと白す事を・・・聞こし食せと恐み恐み白す」


コウギョクが祝詞を唱え終えると、辺りの木々の枝葉が眩く光り、狐達による賑やかな音楽が奏でられる。

空には火の花が咲き、煌びやかな宝石飾りと共に芸人たちが場を賑わせ、それにつられる様に四柱の神々が神獣と共に踊る。


「儂の幻術を書き換えるとはな。これは・・・一杯やられたのう」


そう呟き岩戸の前へ立つ狐護様の背後で地鳴りのような音と共に岩戸が開く、コウギョクの勝ち誇った顔も日の光に照らされていく。


「・・・私が隠れる事により世が闇となり、さぞや困っているかと思いきや如何いう事です。何故、小娘は踊り、神々は愉快そうに笑っているのだ」


そう問いかける日照大御神の声は堪えきれず笑い交じりになっている。

日照大御神は外の賑わい誘われ、月が沈み太陽が昇るようにゆっくりと空が白んでいく。


「コウギョク。私に一役買ってもらうと言ったのって・・・・」


「うむ、狐護様の術を書き換え、お主には道化として踊り子に見えるよう細工しておいた」


何の問題なさげにコウギョクは自慢げな顔を向ける。

コウギョクは私に睨まれると、日照大御神の方へと顔を逸らす。


「新たなる五行の一角を担う神が現れたので、それを祝し皆で喜んで踊っているのじゃ」


コウギョクは岩戸へと駆け寄ると、新たな神が誰か告げずに日照大御神に伝える。


「新たな神とは誰ぞ・・・余に選ばれた訳ではない身で神を名乗る物は何処にいる?」


曖昧な言葉に日照大御神は憤りを隠さず、四柱の神に勝手に持て囃される不届き者を探し身を乗り出す。

私とコウギョクは顔を見合わせると、日照大御神との距離を詰めていく。


「そこに居るじゃないか」


覚えのある声が何処からともなく聞こえてくる、辺りは薄暗く姿こそ見えないが日照大御神の動きが止まり体が強張った。

辺りを見回すと岩戸に魔法陣が浮かび、琥珀色の縁が重なり見た事も無い文字が円の中に刻まれていく。


「クリアーレ・・・」


岩戸は驚愕する日照大御神の前でたちまち人型の岩人形(サクスムゴーレム)へと化す。

世界を覆いつくした闇は祓われ太陽が天に上る、眩く暖かな日差しが地上を照らすと岩人形の背後からクリアーレが現れ呆然とする日照大御神に笑いかけた。


「よもや自身が新たな神とは名乗るまいな」


「とんでもない、この美しい白い獣達さ」


日照大御神の瞳が、恭しく傅く狐護様とコウギョクを映す。

さぞや憤ると思いきや、コウギョクと狐護様を見た後にクリアーレを溜息をついた。

月の神に気づかされる事は癪だがと苛立ちを漏らすと、日照大御神は二人を見下ろし問う。


「・・・御前は余の下に集い、世の一助となる事を誓えるか」


「大御神の御心ままに」と告げる二人の誓いに応えるように陽の光が祝福のように二人を柔らかく照らす。

コウギョクが神格を得られたのか確かめようとすると、気づかぬ内に隣に佇むクリアーレに気を奪われる。

想定外だったのか、クリアーレはそれを見て驚き呆然としてから我に返ると、何度も頷き嬉しそうに微笑んだ。


「例えあるべき形が狂おうと、これだから実に世は美しい。このゲネシス、創造せし神として、御前達の世界を創ろう」


クリアーレはゲネシスと自分を称し、世界に誓いを立てる。

その姿と言葉に女神の面影を思わせられるも、何処か言い知れぬ不安が胸を掻き立てた。

本日も当作品を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。


PCも復帰し、予定通り更新する予定でしたが遅れてしまい申し訳ございませんでした。

此れからもできうるかぎり更新致しますので、引き続き読んで頂けたら幸いです。

それでは次回までゆっくりとお待ちください。


*********

次週こそ無事に投稿できれば3月16日20時に更新致します。

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