第18話 廻りあいそしてギルドの悪魔
使命を果たす為の足場と相棒ができて話は軌道に乗り出したものの、ランドルさんも言っていた具体案はどうしたものかと思う。
マナの均等を整えて魔界の門を妖精の盾と共に封じると言う事しか精霊王様や女神様から聞いていなく、具体的には何が必要なのかが不明。
マナは万物の中に流れる魔力の源であり、世界を構成する全ての要素の源でもあると言うのが通説だ。
均等に整える為と言う事は原因は?
精霊王様を見つけて会うにしても、こちらの都合で呼んでも良いものなのかな?
その時、屋敷の入り口の壁にもたれ掛かりながら考え込む、私の眉間にバチンと衝撃が走る。
「痛っ!」
ジンジンと痛む眉間を擦りながら前を向くと、不機嫌そうなダリルの姿があった。
「まぁた、一人で考え込んでたろ。大方、これからの事あたりか?」
「うっ・・・よく解ったわね」
「立ち止まってばかりじゃなくて実際に目で耳で調べて見なきゃ解んねぇ事もあるぞ。案ずるより行動あるのみ!何もしないで後悔するより良いだろ」
ダリルはポンポンと私の肩を叩きながら得意げに笑う。
あまりにも得意気な顔しているものだから少しだけ悔しくなる。
「・・・ダリルの癖に」
「癖にってなんだよ。人が良いこと言ってやったのによ」
「はははっ、ごめん。それじゃあ、今やるべき事として冒険者ギルドに行こうか」
「ふん・・」
やや不服と言った様子のダリルだったが、門に向かう私の横をやれやれと言った表情を浮かべながら歩いている。
門の前まで来るとロブさんが黒い服装の男性数人と談笑している姿が見えた。
私達に気が付くとロブさん達は両側に整列をし、一斉に「お嬢にぼん、行ってらっしゃいませ!」と声を掛けて見送ってくれた。
ちなみにロブさんは門衛で他の人達は屋敷の使用人の皆さんだ。
毎度の事ながら、かなりの威圧感がある。
この見送りはメイドさん以外のサザランド家の使用人の間では当たり前なんだろうか?
そう疑問を抱きつつ、冒険者ギルドの在る南門の方へと二人で歩き出した。
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中央の噴水広場を抜けたところで、ドンと腰のあたりに何かがぶつかった。
何事かと思い、ふと足元を見ると紫色の髪に小さな山羊の角がついた少女が尻もちをつき、地面に座り込んでいた。
その顔には覚えがある、馬車の停留所で私のお財布をすった魔族の混血の少女だった。
以前のようなみすぼらしい服装ではなく、質素ではあるけれども真面な服装をしている。
名前は聞きそびれてしまったけど・・・。
「大丈夫?」
「・・・っ!」
少女は落ちていた帽子を慌てて拾い上げると、角を隠すように深く帽子を被った。
「なんだよ何かと思えば財布をすったガキじゃねぇか」
「あっ、その・・・ごめんよぉ」
「あぁ?」
ダリルには怖がらせるつもりは無い様だけども、明らかに少女は怯えた表情している。
間に入り手を貸すと、おずおずと延ばされた手は傷だらけだったけれども小さくて弱々しいものだった。
「怒っていないから大丈夫よ」と優しく声をかけると安心したのか、少女の表情が和らぐ。
こうやって見ると、スリをやっていたのが嘘のような普通の子だ。
「起こしてくれてありがとう。アタイは・・ベロニカ」
「私はアメリアって言うの。何か急いでいたみたいだけれど・・・」
「この前、この前の金髪の兄ちゃんが来て足を洗う事ができたんだ」
足を洗うってスリをやめられた?
「金髪の・・・フェリクスさん?」
「そうそう、そんな感じの名前」
フェリクスさんって意外と面倒見が良い人なのね。
「へぇ、自称全女性の味方は伊達じゃないってか」
ダリルはニヤニヤと嫌味交じりの表情を浮かべている。
「そうね、出会って間もない子の為に此処までできるのは尊敬するわ」
そう私が言うと面白くなさそうにダリルは不貞腐れたような顔をして黙り込んだ。
詳しく話を聞くと病気の母の為にフェリクスさんの紹介で道具屋の御用聞きとして働かせてもらっているらしい。
そう話した後、ベロニカは何やら慌てて肩にかけた鞄の中身を確認しだす。
その時、一瞬であったけれど流れた髪の間からベロニカの首に黒い翼に大きな瞳の様な文様が見えた。
「なんだろ・・・?」と小首を傾げていると、ベロニカは慌てて髪の毛でそれを隠した。
「・・・見た?」
「あ、ごめん。見ちゃダメだった?」
「んー、親は見せるなって言っているけど気味が悪くなければ良いかな」
気にしていると思いきやあっけらかんとした反応には意外だった。
その後、ベロニカは私達に別れを告げると市場の方にかけて行く。
「さて、私達も冒険者ギルドに行きますか・・・って先に行ってる!?」
「おせぇぞ、男女」
「久しぶりねその呼び方、改めて聞いても何か腹が立つわね・・・」
思わぬ再会を果たした広場を抜け、私達も本来の目的を果たすべく朝一で賑わう商店街を通り、冒険者ギルドに向かった。
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冒険者ギルドは相も変わらずの盛況っぷりで、クエストを求めて張り紙を眺める集団や昼間からお酒を飲む荒くれ者風の冒険者などでごった返している。
そんな中、クリスティアナさんは桃色の髪とその赤い瞳と真逆の涼しげな表情で受付業務をこなしている。
「お待ちしておりました。マスターからお話は伺っております、どうぞ此方へお掛け下さい」
そう言われてカウンターの椅子に座ると、一枚ずつ紙が配られた。
「それでは、こちらが登録書に・・・」
クリスティアナさんが登録書を手渡してくれた瞬間、酒場の方で喧嘩が始まった。
どうやら報酬の配分でもめているらしく、耳を塞ぎたくなるような怒号が飛び交う。
クリスティアナさんは白く長い耳を折りたたむと、小さく溜息をつき指先に魔力の塊を作り出した。
すると兜を被った筋肉質の小さな妖精が姿を現した。
「アーロン、何時ものを頼みます」
そうクリスティアナさんが言うと妖精は魔力を受け取り、喧嘩をしている冒険者に向かい腕を振るい拳を握る。
すると暴れていた冒険者の体は急に硬直し、呻き声をあげながら床に転がった。
「アーロンは本来は拷も・・・とても頼りに妖精でしょう?他の方に迷惑をおかけする方にはこうやって静かにして頂いているんです」
何か拷問とか聞こえたような気がするけど怖いから聞かないでおこう。
クリスティアナさんは冒険者を一瞥をし、アーロンに硬直の魔法を解かせると、ニコリと此方に笑顔を向けてきた。
「・・・・アメリア、大人しく話を聞こうぜ」
「うん、無駄口厳禁ね・・・・」
二人で顔を見合わせ確認をしあう。
「では、改めまして・・・既に規約はお読みになられたかと思いますが・・・」
そこからは、先程まで騒がしかったのが嘘のように静まり返ったギルドの中、報酬や損害を受けた時の保証やギルドへの仲介料や禁止事項について話を聞くこととなった。
規約の確認後、普段しない緊張をした為か固まった体を解しながら、どうにか登録書に情報を記入し終えた。
「それでは、冒険者ギルドも精一杯、貴女方の援護をさせて頂きますので、くれぐれも規約に反する行動はなさらぬようお願い致します」
「はい、解りました。宜しくお願いします」
「では、続いて冒険者ランクについてですが・・・」
こうして私達の冒険者としての第一歩は始まろうとしている。
真面目にクリスティアナさんの話を聞く私の横で欠伸をするダリルを横目にはらはらとしながら・・・




