第17話 展望ーそして一歩前へー
祝いの席は夜遅くまで続いた、ある者は語らいある者は料理に舌鼓を打ち、ある者はケイティーに好かれようと冒険をした為に床へと口づけをする事になった。まあ、誰が犠牲になったかは容易く想像できると思う。
そう勿論、自称全女性の味方のフェリクスさんだ。
ケイティーと二人で謝罪をした後、二人で介抱しているとちゃっかりケイティーを口説こうとしたが、途中でジェニーさんに呼ばれて見事に無視されていた。
なんか此処までくると流石と言うかなんというか・・・
「アメリアちゃん・・・?」
「先程の事は今回は見逃してあげます」
私がそう言うとフェリクスさんは露骨に安堵の表情を浮かべていた。
しかし、誰がケイティーの食物兵器をテーブルに並べる許可をだしたのだろうか。
そこにケイティーがジェニーさんと一緒に私の元へ戻って来た。
「ほら、ケイティー。アメリア君に渡したいものがあるのだろう?」
「あのね、おねえちゃん。アタシ、お祝いに送りたいものがあるんだ。受け取ってもらえるかな?」
そう言って差し出されたのは、玉子大のキューブ。
「大きいけど・・・これは何のキューブ?」
「毒と眠りの効果のあるキューブだよ。魔物に襲われた時に投げて使ってね」
「そのだ、まあ。ケイティー君の料理の腕を逆手にとって薬品を作らせてみたら大当たりでね。良い戦力になりそうだよ。商売的にも薬品投擲士としてもね」
「師匠・・・酷い」
料理の腕に関して気にしていない訳じゃなかったらしい。本当に落ち込んでいる、泣かれたら不味いわ。
「で、でも良いじゃない。このキューブなら冒険者に売り込めば大儲けできるわよ。それにこれで将来も薬品投擲士で決まったんじゃない?」
「うむ・・・ワタシも勢い余って言い過ぎたが。君の腕は薬品投擲士の将来の大きな力になると期待している」
「うん、そうだね。ちょっと料理には苦手かなと思っていたけど、役に立てる力がアタシにもあるなら其処を伸ばして頑張るべきだよね」
私は思わぬ義妹の成長に嬉しさのあまりに感動してしまった。
なんやかんやで賑やかなパーティーが終わると早々に自室に戻り、ランドルさんに貰った魔法入門書を読み耽る。
よし、私も頑張って使命を果たそうじゃないの。
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そして次の日、緊張の面持ちでランドルさんの執務室の扉の前に立つ。
本来なら一対一と言いたい所だったけれど、冒険者ギルドの都合で時間があまりとれないらしく、ノックをし、返事が返ってきたところでダリルと二人で入室した。
「それで、相談したいと言うのは?」
どこまで話したら良いんだろうか?信じてもらえるのだろうか?
心配になるあまりに口が開きかけて止まる。
すると、急に背中を隣から軽く叩かれる。
「大丈夫だって!言えよ」
ダリルがボソリと小声で励ましてくれた。
「ランドルさん、これは内密にして頂きたいんですが・・・」
「ふむ・・・」
そう呟くと、何かを察したのかランドルさんはメイドさん達を部屋から退室させてくれた。
「ダリルにはもう話してあるのですが・・。私、祝福の儀で女神様に呼ばれて精霊界に招かれたんです。そして、ある事を任されました」
「女神様に呼ばれて精霊界に・・・。それで、ある事とはなんだい?」
ランドルさんはあまりの突拍子の無い事に驚き、戸惑っている様子だったが、静かに耳を傾けてくれた。
「崩された世界の均衡を取り戻す為、精霊の力を取り戻し世界のマナを正常に戻してほしいと命を受けました」
「・・・・俄かに信じ難い気もする。クエストを受けた冒険者達から、マナかどうかは不確定だが異変が起きていると言う報告が多く寄せられているな・・・」
ランドルさんは顎に手を当てて何か考え込んでいる。
「・・・どうか、信じてもらえないでしょうか?」
「・・だが、どうやって世界をまわるのか具体的な案はあるのかい?」
「それは・・・」
「その様子だと受けたのは良いが考えていなかった・・・て所だね」
心の内を言い当てられて胸がドキリと跳ねる。
そんな私の方を見て、ランドルさんは「やはりか・・」と言って浅く溜息をついた。
「あの・・・」
「君は・・・それがどれだけ重要で危険な事か理解できているのかな?世界には高ランクの冒険者ですら苦戦を強いられる魔物が存在するんだよ。この国での常識が通じないうえに妨害する者が現れる可能性もある。それに加えてマナと言う大きな存在への干渉による、その地への影響もだ」
「それでも・・・行かなくちゃいけないんです」
私は気が付くと膝に置いていた手がスカートの裾を強く握っていた。
「これは君じゃなければ成し遂げられない事なのかい・・・?」
「はい・・・」
私の返事をそこまで聞くと、ランドルさんは真剣な顔を崩して口元を緩めた。
「そこまで決意が固まっているなら君を信じて協力しよう。師匠の手紙にも”アメリアが何か頼ってきたら力になってやれ”って書いてあったしね」
祖父には私の事は全てお見通しだったらしい。
「・・・・ありがとうございます!」
「まあ、ここまではあくまでギルドマスターとして大人としての意見だ。私個人としては、若い頃の苦労は買ってでもすべきだと思っているよ」
ランドルさんは白い歯を見せて思いっきり笑った。
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ランドルさんの視線が私からダリルに移った。
「待たせてしまったね、ダリル君。君はどうするんだい?」
それは私も少し興味あるかも。
二人で期待の視線をダリルに送ると、何故か複雑そうな顔をし暫く顔を逸らした後、意を決したような顔をして正面のランドルさんと向き合った。
「俺は師匠と修業の続きをと思っています・・・」
「そうか、ウォルフガングによろしく伝えてくれよ」
ランドルさんも想定した通りらしく納得したような顔をしていた。
それを聞いて、これは早々に仲間を探さなきゃいけないかなと思案していたところ・・・
ダリルが再び口を開き放った言葉に驚愕する。
「今までそう思っていましたが、俺は・・・コイツについて行こうと考えてます!」
「へ?」
「・・・ほう」
私達の反応を見て照れくさいのか、ダリルは頭を片手で掻きむしると、一瞬だけ目を横に逸らす。
「そんな、ダリルの本当に行きたい方で良いよ?」
ダリルは私のその一言を聞くと、仏頂面をしながらこう答えた。
「・・・良いんだよこれで」
「でも・・・」
「別にお前が心配だからとかじゃなくて、何かあったら爺さんやケイティーを悲しませちまうだろ?」
「・・・そうだね、ありがとう。やっぱり、持つべきは幼馴染だね!」
「・・・おう」
何故か私の言葉を聞いて表情を曇らせるダリルを不思議に思っていると、「決まったようだね」とランドルさんから声が掛った。
「それでは、今後の事についてだが、いくら私でも無条件で君達の援助はできない。解るね?」
「・・・はい」
そこで、緊張する私達の前に二枚の紙が配られる。
「これは冒険者登録規約書だ。君達には冒険者としてクエスト受けると言う形で世界各地で活躍して貰う。その変わり援助として、どこに行っても旅費は此方で負担をしよう。どうだ?悪くないだろ?」
「・・・ありがとうございます!」
「悪くないな・・じゃなくありません」
「それじゃあ、契約成立だな」
私達はランドルさんと笑顔で硬く握手を交わした。
「私は用を済ませてから遅れてギルドに行くが、登録等の詳しい事は受付のクリスティアナに話を通しておくから三人で話を済ましておいて欲しい」
それを聞いて承知をすると、ランドルさんは素早く上着を羽織り外出の支度をしだしたので、私達は規約書を片手にランドルさんの執務室を後にする事にした。




