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TSモブ荷物係は勇者にだけは近づかない。  作者: 無限飛行


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第9話

グオオァッ

ガアアアアアーッ


「第三層はキングベアーか………」

ドゴンッ

『ギャワッ?!』


「旦那、流石ですぜ」

「凄い、凄いですリーダー!」

「マジか……」

「いつもの事です」



第三層で現れたのは体長10メートルもある熊のモンスター。

通称キングベアーである。

コイツはダンジョン外の森にもいてモンスター脅威度はランクD。

時より死傷者を出し初心者冒険者がパーティを組んでも厳しいモンスターなのだかゼンクトにとっては赤子以下だったようだ。

得物(鉄斧)を振るう事なく利き腕でない素手一本でキングベアーの腹に風穴を開けてしまった。

ベアーの背中に血まみれの彼の手が見えてエグぅ。

まさに片手間やん。

ゼンクトはサイボーグか何かか。



グオオオオオッ

ガオオオオッ

グワッアアアアアッ



「む!?」

「何だぁ??」

「きゃあっ何?」

「え」

「これは……」



ズズンッ

ドカドカドカドカッ

グアアアアアッ

ズカガガガッ



第三層は元々横幅数十メートルの直線の坑道で障害物が無く薄明かりで視界は数百メートルまでクリアーである。

そしてたった今聞こえてきたのはその最奥から響き渡る正体不明な多数の雄叫びと重量級な足音。

先を目視すれば激しい粉塵が舞いそれが地鳴りを伴い津波の如く押し寄せてくる。

明らかに尋常じゃない?!



「フ、フレイン、これって!」

「私も噂でしか知りませんが聞いた事があります。これはスタンピード(溢れ)かも知れません」

「スタンピード???」

「ダンジョンは生きてると云われていて中に巣食うモンスターはそのダンジョンが生み出していると考えられています」

「それは知ってる」

「私達冒険者はそんなダンジョンから資源を得る為に潜りますが管理しているのは周辺ギルドで統括するのは国です。そしてギルドや国が冒険者に無償でダンジョンを開放するのは一つの目的があるからです」

「冒険者が資源を得て経済が回るから?」

「それもありますが一番の理由はスタンピード(溢れ)対策なのです」

「スタンピード対策?」

「幾つかのダンジョンは数十年から数百年単位でモンスターを大量に溢れさせてます。溢れたモンスターはダンジョンから文字通り溢れ周辺の村や町を津波の如く飲み込むのです」

「えぇ?!!」



だとしたら大変だ。

正面に見える通路いっぱいの粉塵はモンスターの集団でありその同一線上ダンジョン出口側に立っているボクらは完全に巻き込まれるしかない。

しかも接近する粉塵スピードはどう見てもボク達の足より高速だ?

早く逃げないといくらゼンクトでも大量のモンスター相手では絶対に敵わないよ!



「早く逃げよう、こんなのどうにもならないよ!」

「そうなんですが、ここには逃げるどころか隠れる場所もありません」

「!?」



そう、ここは広大な横穴で一本道。

左右の壁は隠れられるような岩場も洞穴も無く登れる様な足場すら見当たらない平滑な壁面で避難場所は皆無だ。

こんな場所でモンスターの大群に遭遇したなら絶望しかない。

ボクの足から力が抜けていく。



へなへなへなっ

「お、終わりだ。ボクらはもう」

「メリアドール、立って下さい。諦めるには早いですよ」

「無理、こんなの……」

「少なくともゼンクトはまだ諦めてはいない様ですから」

「ゼンクト?」



見るとゼンクトは迫る粉塵を迎え撃つように一人足を左右に開き大きくその巨大な鉄斧を構えている。

まさかあの群れと本気でやり合うつもりなの?

そんなモンはなから勝負になるわけがない自殺行為そのものだよ!



「あ、あれ?ガブとリーリが居ない??」

「あそこです」

「は!?」



フレインの言葉に振り返れば遥か後方出口に向かうガブの背中。

一目散に元来た道を逃げ出していた。

しかも途中までリーリを連れて逃げていたのか手前に彼女が倒れ込んでいる。

アイツ直ぐに危険と判断して誰に声も掛けるすらせずに一人出口方向に走り出したのか?

声をかけずに逃げたって事はボクらが囮になる前提の算段だ。

クソ野郎だな本当に!!



「すぅ〜ムウうぅうんっ」

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ


「な、に!?」

「やはり………」



ゼンクトが光っている。

それも金色というか金剛色に?

まるで前世で見たアニメに出てくるオーラを纏って戦う戦士みたいだ。

え、もしかしてゼンクトってこれからデカい猿になるんだろうか!?



「下がって下さい。オーラバーストを使ったようです」

「オーラバーストって何??大猿になるんじゃないの?」

「大猿って何の話ですか??オーラ、つまり闘気を溜めて一気に爆発させる達人技です。B級冒険者クラスのゼンクトなら習得していても不思議ではありません」

「達人技?!!」



どうやらゼンクトは物凄いスキルを隠し?持っていたようだ。

だけと所詮は一人の冒険者。

オーラバーストってスキルが大猿になるより凄いとは思えない。(拘ってる)

前方に広がる膨大な粉塵は津波のような天災だ。

そんな天災に一個人が対抗出来るなど前世ですら漫画か小説の世界の話で抗う事など出来るはずが無い。

一体どうするつもりなんだ!?



「ギガクラッシュラウンド!」カッ


ドカァッ

トガガガガガーンッ



「うわあぁ!!?」

「見事ですゼンクト」



一瞬の閃光と破壊。

ゆっくりと目を開けると目の前にあるのは岩石の山だ?

まさかこれがオーラバーストの力!?



「メリアドール、こっちです!」

「え?!」



呆然と岩山を見ていたらフレインに呼ばれた。

呼ばれた方向には岩山の端に小さい洞穴が形成されている。

そこからフレインが手招いていて同じ場所にゼンクトも座り込んでいた。

そうか。

ゼンクトはオーラバーストを使い地面を吹き飛ばしてその瓦礫で安全地帯(サンクチュアリ)を作ったのだ。


はなからモンスターの群れとやり合うつもりは無くこれがゼンクトの狙いだったというわけでその機転には脱帽である。

流石ギルドランクB級冒険者は只者ではなかった。


直ぐ様ボクもフレイン達に合流し簡易洞窟に飛び込んで息を潜めた。

迫ってくる轟音は当たり前だがどんどん近づきつつある。

でもこの簡易洞窟は頑丈そうだしゼンクトが作った岩山も洞窟を取り囲むように壁となっていて防げそう。

大丈夫、だよ、ね?

って、何か忘れてる……??



「た、助け、てぇ」


「ああ?!」



声に反応して通路後方に目をやれば必死の形相で此方に走ってくる猫獣人の女性が一人……?!


そうだった。

ガブと逃げ出したリーリがまだ通路に取り残されていたんだ。


どうしよう!


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