第8話
◆冒険者ギルド前
パーティ剛腕の鉄斧の集合場所。
「ゼンクト、待たせました」
「お、おはようございます」
「……もうクエストは選んである。今日は昨日の新ダンジョンの下階層の攻略だ。行くぞ」
「ようガキ、ちゃんと来たか。逃げ出したかとハラハラしたぜ。今日も楽しくクエストしようや」
結局ボクはフレインの提案に何も選べずそのまま彼とパーティ集合場所に来ていた。
集合場所では既にゼンクトとガブが待っていてボクは早速にガブの嫌味の洗礼を受けていた。
昨日と同じパターンである。
そして今日のクエストも昨日と同じ新ダンジョン調査踏破でギルドの依頼。
既に2階層は踏破したのでボクは荷物持ちの役割を果たしながら地図作成という新たなクエストも行わないといけない。
背中の荷物と合わせちょっと荷重労働になる見込みだ。
「我らが地図を作成する事は後の冒険者の安全に繋がる。新人、心して地図を書け」
「は、はい」
珍しくゼンクトから声をかけて貰った。
少なくともボクには荷物持ち以外の役割が出来たわけでその事自体は素直に嬉しい。
なんだがようやくパーティの一員として役立てる気がした。
「なお、パーティには今回から新しいメンバーが加わる。我は要らないと言っているのだがガブからの立っての希望で入る事になった」
「へ?」
ガランッ
「宜しく、お願い、しま、す」
そう呼ばれて建物の陰から現れたのは気弱そうな獣人の少女!?
薄汚れた灰色の貫頭衣で黒髪黒耳の猫獣人。
まさか………。
「コイツの役割はマスコット役だ。上手く使ってやってくれ」
「ガ、ガブさんの勧誘で入る事になったリーリです。宜しくお願いします」
「俺様が色町で勧誘したんだ。まあ俺様専属だがどうしてもならフレインやガキにも貸してやってもいい。とにかく宜しく頼む。なあ?」ガシッ
「うっ、が、頑張って奉仕します。だって報酬が役割に関係なく均等なんですよね。嬉しい、です」
ガブがリーリの肩を掴みいやらしい笑みを浮かべる。
その衝撃で左右によれて体勢を崩す彼女。
それでも耐えつつ気に入られようと愛想笑いする姿勢は何だか物悲しさを感じてしまう。
どう見ても姿は14〜15歳程度。
前世ならまだ子供扱いなのだがこの世界では15歳で成人だ。
服装から察するに貧民街出身の色町稼ぎか。
普通にマスコット役に応募してきたという事はこの手の仕事に慣れているのかも知れない。
ただ報酬の良さに応じたのは理解出来るけどモヒカン筋肉ガブとは奴とボク並みに体格差がある。
アッチで体力は保つんだろうか……。
あ?何考えてんだボクは!?
ふう、にしても今更だがこの貞操の軽さには頭が痛い。
お父さんにはショックだよ……。
「あんだぁ?ガキ。コイツがだいぶ気になるようだな。色気づいたかよ」
「べ、別に」
「ようよう嘘つくんじゃねぇ。健全な男子なら当たり前なんだからよ。本音を言えや本音をよ。どうせソッチはまだ経験無いんだろう?コイツに初めてをくれてやれや。なあ」
「………………」
……初めてをくれてやれってどうすればいいんだよ。
ユリ百合になっての初めてって何?
いや考えてどーするん……。
「時間が惜しい。直ぐに出立つだ。急げ」
「へい、ゼンクトの旦那。おいお前ら、用意は終わってやがるな。出発だぜ。リーリ、可愛がってやるからな」
「は、いガブさん」
「…………うぇ」
「やれやれですね」
パーティ剛腕の鉄斧に初めてのマスコット役。
だけどゼンクトは寡黙に平常運転でガブは相変わらずだしリーリはそのガブに俯いてついて行きフレインはボクとリーリを見つつ呆れたような感じに溜め息をついた。
一応の新人が入って少しは皆の行動が変わるかと思ったけどやはりマスコット役はボクと同じ戦力外だから空気扱いか。
つまり空気が二人に増えたわけでパーティへの負担も増加しただけだからゼンクトは寧ろ腹立たしく思ってるのかも知れない。
まあ、それが普通の感覚だよ。
❇❇❇❇❇
⚫新ダンジョン第二層
再びの新ダンジョン。
今度の調査踏破は階層制限はなくゼンクトの指示が全てになる。
前回の調査踏破の結果を受けギルドが新ダンジョンをランクCに確定したからだ。
ギルドには現在管理するダンジョン含めて過去の統計データがある。
よって浅い階層に現れるモンスターレベルからダンジョン脅威度を測る事が可能なんだそう。
因みにこの新ダンジョン前回調査踏破で現れた高レベルモンスターは初級クラスのランクE。
第二層までがランクEなら推計してラスト階層ボスがランクCと定まりそれが脅威度となっているわけだ。
つまりダンジョン脅威度=《イコール》ダンジョン最下層ボスランクという分かり易い構図である。
そしてランクCならイレギュラーボスがいてもワンランク上のランクB。
過去のダンジョン情報から導き出せる結果らしい。
故にゼンクトによる単独踏破が可能なレベルでありガブを始め他メンバーは単なるオマケといういつもの作業日程になるわけだ。
で、パーティメンバーが4人から5人になり実質戦力は変わらないのだがここで一つ問題があった。
「どうしたんですメリアドール?」
「元々食料は言われた通り10日分用意したんだけど5人になるなんて聞いてない、から」
「成る程。荷物は前日用意が鉄則ですしパーティメンバーの変更は事前通達が原則ですからね」
フレインの問いにそのまま状況を伝えたら彼は直ぐに理解した。
つまりダンジョンに10日潜るには5人では食料が足らないという事。
単純な足し算引き算が理解出来れば誰でも分かる話である。
「ここは素直にゼンクトに事実を伝えるべきでしょう。まだ3階層の入り口です。万が一彼が最終踏破を考えているならダンジョン階層は最低でも7階層。一人増えたくらいなら分け方でどうにかなるとは思いますが新ダンジョンでは絶対がありません。間違いが起きる前にリーダーに知って貰う必要があると思います」
彼の言葉に頷き了解するボク。
フレインの判断は正しい。
ただ問題なのはガブの存在だ。
ガブはボクが直接ゼンクトと話すのを妨害する。
フレインだってそうだ。
どうしよう。




