第6話
チュンチュンチュンチュンッ
「知らない天井だ」
ああ、宿屋でベッドに寝たんだった。
初めて泊まった宿屋だから知らない天井なのは当たり前。
しかし久方ぶりのベッドのせいか夢見があまり芳しくない。
内容は覚えていないけど悪夢だった気がする。
ゴソゴソ
「慣れないせいか普段と違う事をするもんじゃないな………」
チュンチュンチュン
小鳥のさえずりは今日の始まり。
これが朝チュンとかはよく知らん。
そして悪夢?のせいで寝起きは最悪天気はいいからプラマイゼロ。
仕事は大変だけど珍しいドワーフが取り仕切るパーティのお陰で初日の実入りは絶好調。
今日も頑張って仕事に行きますか↗
(テンション高)
「うーん」ボスンッ
「かはっ!?」
唐突に降ってきた太い腕はボクのやる気を台無しに起き上がった身体を再びベッドに沈めるのであった。
はーっ???
「ゲホゲホッい、一体何が!?」
「んーっ?メリアドール起きたんですか?」
「フ、フレイン?」
「おはようございますメリアドール」
「???」
朝起きたら布団の中にイケメンが住み着いていた。
しかも上半身裸で。
どうやらイケメンは勝手に他人のベッドに巣を作るのが習性らしい。
なんて迷惑な生き物なんだ!?
で、慌てて自分の状況を確認したけど一応ひよこ柄パジャマは脱がされてはいない。
セーフ、でいいのか??
因みにパジャマのひよこ柄は前世某菓子メーカーの図柄で出来ている。
何故それだったかはボクの趣味。
そして再確認だが信じられないけどボクはフレインとベッドインしていたらしい。
フェードインなら前世懐かしロボットアニメ主人公セリフだがベッドインだと全く意味が違ってしまう。
ドユコト?!!
「……とにかくどいて」
「メリアドール、アナタは柔らかいですね」
「…………」ゾクッ
うう、鳥肌が止まらない。
今迄のフレインの人となりは称賛に値するけど今回で全てがチャラだ!
この野郎、ボクを何らかの方法でベッドに誘い込んだらしい。
だけどおかしい。
同じ宿屋だから一緒に食堂で夕食を食べたまでは覚えてるけど記憶がそこで途切れている。
部屋に戻る過程もベッドインの記憶も全然思い出せず頭の中はパニックしかない。
「まさか一服盛った?」
「何の話です?」
「この状況の話に決まってるよ!」
「貴方が悪夢が怖いから一緒に寝たいと言ってきたんじゃないですか」
「悪夢?ボクが」
「ええ、えらく取り乱して泣きながら縋ってきました。一人は嫌だから一緒にいて欲しいと。だからエールは控えるようにと言ったのにアナタときたら久方ぶりの太っ腹だからってジョッキを何杯空けた事か」
「へ???」
困ったようにボクに訴えるフレイン。
ボクからフレインをベッドに誘ったって?
有り得ない。
どうしてそんな事になってんだ!?
「まっ待ってよ。ボクがエールで酔っぱらいフレインに添い寝を頼んだって言うの?言っとくけど、こう見えてもボクは酒に酔わない体質だよ。エール数杯で酔っぱらうはずはないじゃないか!」
「確かにそう言いながら《飲み溜め》とか言って十杯以上は空けてました。さすがに飲み過ぎです」
「飲み溜めっ?………ボクが??」
「しかもメリアドール、泣上戸の挙句大泣きして宿屋の店主に食堂から追い出されたんです。他の客からも迷惑がられて私も散々でしたよ」
「…………………」
最悪だ。
確かにエールをやった記憶はあるがボクって酔っぱらったら泣上戸だとか知るわけも無い。
そんで大泣きした挙句のフレイン誘ってベッドインとか!?
穴があったら入りたい。
「フレイン、何か色々迷惑かけたみたいでゴメン」
「それはもう今さらですが、それよりメリアドール。あなた、女性だったんですね」
「なっ?!」
と、ここでフレインからの爆弾発言。
性別がバレてるーっ!!?
「……まさか、見た?」
「私の目の前でパンツ一丁になってパジャマに着替えてました。男物のトランクスを履いてましたが体型的に男女の違いを誤魔化せるものではありませんよ」
「最悪だ?!」
駄目だこりゃ。
自分で自分が信じられない。
酔っぱらって大泣きしてフレインに絡んで他の宿泊客の総スカンくらって食堂を追い出されて部屋に戻った。
そしてフレインの目の前でスッポンポンになりパジャマに着替えて彼をベッドに引っ張り込んだとか洒落にならない乱れっぷり。
いや痴女じゃん、痴女!
何か色々終わってるわ。




