第47話 神聖歴770年2
武装した人族…………。
そもそも人族自体はカズキしか知らない。
まあ前世の人間は皆んな自身も含め人族そのものだったけど。
「10人。旧街道を見つけコチラに。到着はおよそ1時間」
「1時間……それは厄介だね。旧街道を探してた?」
「確認してた。馬上の指導者はコチラ方面を指指していた」
「もしかしたら単なる調査かも知んないね。旧街道だけならこっちに向かう可能性は薄いさね」
旧街道。
嘗てランスロット王国とエルフ達が交易に使っていた遺跡のようなもの。
その道は下の渓谷沿いを進む道でランスロット王国方面に向かう道だ。
そしてボク達のいるこの台地はあの旧街道から外れて山を登らねば到達する事は出来ない。
つまり《《知っていなければ》》来れないはずの場所なのだ。
「……彼らの目的は何でしょう?わざわざ武装して旧街道を確認してるのはよくわかりません」
「メリ姉っ」
カズキのボクの手を握る力が強くなる。
怖がらせるつもりはないけれどこの子は聡くて人の気持ちに敏感だ。
ボクの不安を感じとってしまったようだ。
「分からないねぇ。目的なんてアタシらには想像もつかない事さね」
「………おそらく斥候」
「クロさん?」
思いついたように言葉を話したクロさん。
斥候って戦時下において前線の情報収集をするスパイみたいな部隊の事だ。
だとしたらこれから戦争が始まる?
「戦争が始まるのかな?」
「メリ姉、せんそうって?」
キョトンとして聞いてくるカズキ。
しまったなぁ。
まだ五歳児に聞かせる話じゃないよ。
「国と国の喧嘩さ。ろくでもないもんさね」
「くにとくに?」
「うーん、なんていうか。ほら、先日クロさんがベンさんとやってたヤツ。あれの大人数でやるのだよ」
「なぐりあいだ!」
「カズキっ殴り合いって嫌だよう、五歳児に何教えてんさね」
「あははっあの時はクロさん強かったもんね」
「メリアっ」
そう、先日ラルゴさんの部下でベンさんという新しく入った犬?獣人の人がここに来たんだけど何故かボクに詰め寄ってきたんで後退りしたらクロさんがベンさんをぶっ飛ばして殴り合いになったんだ。
後で聞いたらベンさんは種族的女性への挨拶をしたかっただけだと分かって喧嘩は終わったんだけど結果的にクロさんがぶっ飛ばしたのは変わらない。
まあ種族間のスキンシップは色々あるから何とも言えないけどクロさんにボクが感謝をしたら彼は頷くばかりで後ろ向きになった。
なんでか知らないけど恥ずかしかったみたい。
何でだろ?
「クロさん、そこで何で恥ずかしそうにしてるのさ?あの時はカッコ良かったよクロさん。でもベンさんに申し訳なかったけどさ」
「メリアっ」
「ありゃりゃ、こりゃあクロに脈がないかね」
「脈?」
「ふーっ、しょうがないね。クロ、ちょっとカズキと向こうに行ってな」
「……っ」
「ハンナまま、ぼくはメリ姉のところにいる!」
「いう事聞きな。これからメリアドールと重要な話があるんだからさね」
「カズキ、ハンナままのいう通りに」
「カズキ、向こう、行く」
「うん、わかった。メリ姉、ちょっとだけだよ」
「はいはい」
クロさんに連れられて渋々部屋を出て行くカズキ。
それを軽く手を振ってニコニコしながら見送るボク。
うん、聞き分けも分別もちゃんと出来るようになってお姉ちゃんはホント嬉しいよ。
「行ったさね。さて何から話そうかね」
「重要な事って何ですか」
ハンナさんからの重要な話。
さっきの斥候の話より重要なんだろうか。
ちょっと何を話すのか想像出来ないな。
「メリアドール、あんたクロに服を贈っただろう」
「クロさん?あ、サファリジャケットなら贈りましたけど」
「やはりね。その程度かい」
「?」
「まずは言うよ。あのベンがアンタに近づいたのは犬獣人としての発情期からさね。♀への求婚をしようとしたというところさ。だからクロが怒って殴り合いになったさ」
「??あー?ベンさん?がボクに近づいたのが求婚?!はいいとして、いや良くないけど、それで何でクロさんが怒る事になるんですか?」
「獣人は異性に対して物を贈る行為を求婚と認識してるのさ。つまりアンタはクロに求婚したさね」
「はい?」
「だからベンに怒った。そりゃそうさね。自分の女に別の男が求婚するのは獣人にとって絶対に許されざる行為だからさ」
自分の女。
いや混乱しかないけど誰がクロさんの女って…………ええっ!?




