第44話 神聖歴767年10
《魔法とは》
魔力を介し物理法則に干渉しうる生命の力と云われている。
魔力は全ての生命に宿るがその量には種族差と個体差がある。
魔法を物理法則として顕現するには魔力適性が必要でその適性にも個人差があり顕現出来る魔法の違いになっている。
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「魔力を完全に持たない生物は存在しないし魔力が体力知力にも関わっていると云われているね。そしてアタシら獣人は魔力を持ってはいるが魔力適性が殆どなく魔法の直接行使は出来ないというわけなのさ」
「魔法は存在するけど使えない者もいるっ、そういう事ですか」
「獣人は仕方ないね。その代わり身体強化というスキルを生まれながらに持っているさね。もちろん人族にも発現するスキルだけど持っているのは少ないさ」
「身体強化?」
「魔力を体力に変えるスキル。アタシらはそれで大抵の力仕事はお手の物なのさ」
「それは便利ですね。ボクも出来たら色んな事でお手伝い出来そうです」
「あっはっはっはっエルフが力仕事?あっはっはっ、エルフの里の連中が聞いたら目ん玉飛び出るじゃないさね」
「変、でしたか?」
「いや気持ちは嬉しいけどアンタには無理さね。エルフは昔から魔法特性が強力な種族だよ。その弊害か身体強化や元々の体力が人族並みかソレ以下さね。畑違いは大変な事。狙うなら魔法使いか錬金術師かねぇ」
「魔法使いに錬金術師!?ボクにその素質があるんですか?」
「だと思うさね。だってアンタからはウチの旦那が警戒するくらいには魔力の量を感じるからね」
「ボクに魔力が???だって全く魔法なんて使えないんですけど?」
そう言ったボクにハンナさんはゆっくりと手を取り目を瞑った。
「ホント不思議だよ。こうやって触れないと分からないさね。だけど触れるとアンタの中の魔力がトンデモなくデカい事が分かるのさ。見てな」
「……ハンナさんの髪が逆立った?」
「髪だけじゃない。鳥肌と冷や汗が大変なのが分かるかい?」
「あ、」
ハンナさんの髪が逆立ち額に流れる汗が酷くなる。
肌には鳥肌のぶつぶつで息が荒く風邪を引いて苦しんでるみたいだ。
ええっ?!
「正直こうやって触っているのは苦痛だよ。魔力の差はそのまま相手を屈伏するくらいの威圧になる。特にアタシら獣人は魔力に敏感。魔力を測る事で相手の力量が分かるのがアタシらの領分だからね」
「ボクに大きい魔力がある?」
「大きい……どころか底が知れないさね。旦那や男共が触って飛び退いたのがよく分かるよ。こりゃあぶっ飛んでるさ」
「触って飛び退いた……」
「これが眠っていた無害なエルフの子供を皆が慌てて椅子に縛った理由さね。アンタはどういう理由か分からないけど巨大な魔力を内包していながら外部に全く悟らせないのさ。まるで魔力を封印してるみたいさね」
「封印?!もしかしてそれが魔力を持ちながら魔法を使えない理由ですか?」
「あたしゃあ専門家じゃないから分からないが少なくともこれだけ魔力持ちで魔法が発動出来ない理由はとんと想像出来ないね。もしかしたら何らかの障害があるのか」
「障害……なんか方法はないでしょうか」
「一つだけ稀に獣人の子供で身体強化が出来ない子にやる方法が在るさ。魔力循環という滞ってる魔力の流れを他人の魔力で押し流す方法さね。やってみるかい?」
「是非。ボクが魔法使いになれればきっとカズキを守れますから」
魔力は体内を流れる血液のようなものとハンナさんは言う。
前世に無い魔力という体内の力。
このまま使えないのは勿体ないし中二病の血が疼くというものだ。
ここは何としてもハンナさんのお力に縋るしかない。
「じゃあこのままいくさね」
「はいっお願いします」
ズ……ズズズッ
これは……目の前に目を瞑ってボクの手首を両手で握るハンナさん。
そのハンナさんの握る手から何かがボクの腕に流れてくる。
あーなんだろう、例えるならお風呂で温かいシャワーにだんだん手を入れていくみたいな感覚だろうか。
それが更に全身に波及するような感じかも知れない。
気持ちいいようなくすぐったいような何とも言い表せない感覚だ。
「これは随分と滞っているさ……」
「ハンナさん?」
どうしたんだろう?
ハンナさんの目が虚ろだ。
え、何かヤバくない?!
「………………………」
「あ、ハンナさん、ちょ、大丈夫ですか。え、正気?」
どうしよう。
ハンナさんが反応せず身動き一つしなくなった。
それだけじゃなく僕達の周りだけ真っ白な光に包まれて、い、る?
そしてボクを見るハンナさんの瞳は金色。
そう、ボクと同じ金色の瞳だったんだ。




