第4話
「ガブ、働きの差は無しで均等割り。リーダーのゼンクトがそう取り決めたはずです」
「うるせぇ。そう勝手に決めたのはテメェだ青二才。俺は働きを示せない新人まで均等割はおかしいって言ってんだ。コイツは今回が初めての新人で何もしてねぇ。だから均等じゃなく新人に相応しい報酬が妥当だ。おいガキ、お前もそう思うだろう?」
「荷物持ちに何を期待してるのか知りませんがメリアドールはきちんと自分の仕事をしましたよ。ひ弱なエルフの筋肉を酷使して我々の貴重な物資を運んでくれたのです。その努力に報いるに正当な報酬以外の方法はないと思いますが」
「だーから報酬に色をつけろって言ってんだ。だいたい他のパーティなら均等割なんて馬鹿な事はしてねぇ。テメェのやりようはそういった冒険者ギルドの秩序をぶっ壊すんだ。いい加減に分れや!」
「はぁ、貴方から冒険者ギルドの秩序について発言があるとは思いませんでした。ですが貴方の考えがどうであろうとリーダーからパーティのやりようを任されているのは私です。そして貴方の発言はリーダーが決めたパーティ秩序を壊す発言との認識はありますか?」
「ああ、それはどういう事だ?」
「パーティの運営は私に一任されています。つまり私がパーティの秩序。それを否定する事はパーティの秩序を壊す事に他なりません」
「テメェ屁理屈言ってんじゃねぇ!」
「そのまま返しますよ」
「青二才、テメェは」
うわあぁ、フレインがボクを庇ってくれたのは有難いけどガブも全く引かないから完全に二人の争いがヒートアップしちゃってる。
ただ正論等は別にしてボクを挟んでの頭越しの争いは止めて欲しい。
このままだとボクは二人に挟まれたまま揉みくちゃにされて一巻の終わりだ。
打開策は……。
「お前ら、何を争っている。いい加減にしろ!」
「?!」
打開策きたーっ!
パーティの散開を待っていたゼンクトが振り向いて言葉を放ったのだ。
めちゃくちゃ嫌そうにね。
その剣幕に流石のガブも黙ってしまった。
さもありなん。
ゼンクトはこういったパーティ内の揉め事が一番嫌いらしい。
フレインからの情報だけどゼンクトらしいと納得だ。
だいたい運営すら丸投げするくらいなのだからパーティそのものに何の想い入れも無いのだろう。
そして今はその面倒事大っきらいなゼンクトの威光が頼りなんだから大いにイライラうっ憤を晴らしてボクを救い上げてもらいたい。
「我は面倒事は嫌いだ。余計な揉め事をするならソロに戻る。パーティなど要らん」
「ま、待ってくれ、ゼンクトの旦那。俺はパーティの規律を」
「ガブ、だったら我に従え。我が決めた事に逆らうな」
「………わ、判った。だからソロに戻るなんて言わないでくれ」
ガブが必死に取り繕うのを初めて見た?!
成る程。
元々ゼンクトはソロでやっていてそれを上手く言いくるめてパーティに引き込んだのがガブという構図か。
つまりパーティはゼンクトの力を利用したいガブの都合で後付けされた、つまりそういう事だ。
そりゃそうだ。
アレだけ力を持っているなら誰かに頼る必要はない。
だいたいドワーフは鍛冶と酒に生き甲斐を持ち自分の矜持を優先して面倒事を嫌う。
その殆どは個人主義でありドワーフの同族同士ですら群れるのは稀だ。
冒険者パーティを率いるドワーフなんて明らかに異質だと思っていたけど正直ゼンクトにとってはパーティなんてお荷物でしか無くガブが上手く口説いた末の結果なんだろう。
確かダンジョンによってはソロでの入場が制限されているところもある。
回復職フレインが入っているのもガブがゼンクトにパーティ結成を促す口実に使ったのかも知れない。
「ならここで散開。明日は朝にギルド前に集合、以上だ」
「了解だぜ旦那」
「ゼンクト、承知です」
「はい」
ザッザッザッザッ
そう言い残すと振り返らずに居酒屋街方面に遠ざかるゼンクト。
今日も一人晩酌らしい。
流石ドワーフである。
ぼそっ
『チッ亜人風情が偉そうに。その腕力がなけりゃテメェなんぞに従うかよ糞が』ぺっ
「!」
その後ろ姿を見ながら小声で悪態をついて唾を吐くガブ。
そのイラつきをぶつけるが如くボクに目を落とす。
え、今のはボクに聞こえるように言ったんだろうか?
直ぐにフレインに振り返るも彼はやや後方に居て多分今の小声は聞こえない。
ヤバくない、コレ?!
「ガブ、ではこれで私とメリアドールは宿に向かいます。また明日という事でいいですね」
「連れねぇな。俺は新人の祝いをしてぇんだ。貴重な荷物持ちが初仕事で初報酬。ここで祝ってやらなきゃ可哀想じゃねーか。なあガキ」
どっ
「ぴっ!?」
ヤバいヤバいヤバい!
ガブがボクの肩に手を乗せて顔を寄せてきた。
完全にターゲットにされてる。
何とか断りを入れる方法は!?
「メリアドールは私と先約があるんです。一緒に銭湯に行く約束ですから。食事は宿で取るつもりです。既に宿屋にも話てあるので」
「は?」
そこに助け舟で横から声を掛けてくれたフレイン。
銭湯って、ええっ?!
「あにおう?銭湯だぁ??ケチ臭せぇな。報酬が入って最初に行くのが銭湯とか庶民臭ぇ。チッ興が削がれやがる。アホくさ、俺は歓楽街に行くぜ。じゃあな」
ザックザックザックザック……。
フレインの機転?でボクに興味をなくした様子のガブ。
大股で捨てゼリフの後に歓楽街方面に歩いて行った。
どうやら助かったらしい。
スタンッ
「ふぁーっ」
思わず尻もちをついたボク。
溜息と共に背中のリュックが随分と重く感じる。
肉体よりも精神的疲れがどっぷりと押し寄せてくる今日この頃。
もう勘弁して欲しい。
「メリアドール、大丈夫ですか?」
「……神経が擦り切れそう」
「ガブはいつもあんな調子です。慣れるしかありませんね」
「慣れる事とかあるんかな?」
「まあ、こんな所でしゃがんでるのもなんです。取り敢えず銭湯に行きませんか。ダンジョンの汗を流せば色々とスッキリしますよ」
「…………………」
銭湯って男湯にって話だよね?
まさに一難去ってまた一難とか。
これからボクはどうすればいいんだよ!




