第37話 神聖歴767年3
チュパチュパチュパチュパッ
「痛っ、…………酷い目に遭った」
赤ちゃん、もうカズキでいいか。
カズキはお腹が空いていたみたいでボクにお乳を求めてきた。
当初は訳がわからすスキンシップの一つと思いカズキのやりたいようにさせていたら………酷い目に。
「うわっまだ真っ赤だよ。え?乳首左より長くない?出ないからって癇癪で噛まれて更に引っ張っられたからなぁ」
癇癪赤ちゃん侮るなかれ。
その力はとても強かった。
いやいやそれ以前にこんな少女でお乳出たら絶対にヤバいって。
倫理観完全崩壊するところだったわ。
だけどこれで左右形が違ったら何か嫌だな。
元々絶壁だからたいして変化ないか?
「とにかく哺乳びんにミルク残っていて良かったけどコレって粉ミルクとかの既製品じゃないよね?」
幸いカズキの入っていたヤシの実にあった哺乳びんは半分くらいミルクが残されていた。
容器がヤシの実似と同じ材質で造られていたからミルク残量が分からなかったのだ。
哺乳びんはやはりガラスかプラスチック系の透明でないと困る。
この世界には無いって事?
「飲ませてから鮮度が気になるって不味いよ。カズキお腹痛くならないよね!?って大丈夫そう?」
中身が見えないとはそういう事。
哺乳びんの材質チョイス絶対に間違いだろう。
だけどボクの心配をよそにカズキは飲み干すと同時におネム。
実はずっとボクは服をカズキに掴まれたままだったんだけどようやく開放される事となる。
そーっとヤシの実似の揺り籠に戻して中に寝かせた。
揺り籠には起毛タイプの植物由来のお布団で中々の手触りだ。
カズキが夢の中に旅立つまでたいした時間はかからなかった。
あと癇癪カズキに引っ張られたのは胸だけじゃなく耳も。
気づいてたけどボクの耳は左右に十センチは突き出している。
時々上下に動くから気になっていたけどカズキの事でそれどころじゃなかったから確認を後回しにしていたのだ。
だけどカズキに引っ張られて痛みを感じたから耳だと認識できたところなわけ。
ウサギの耳くらいにデカいけど感覚は間違いなくボクの耳なんだよな。
うーんボクの人種って………。
「地球の人間とは明らかに違うね。どちらかと云えばラノベのエルフか」
エルフは漫画やアニメでの認識しかないから実感がない。
エルフ自体がラノベの創作だから当てはまるとは言えないか。
この世界独自の種族という可能性もあるわけで少なくともアフリカベースのターザン伴侶は無くなったわけ。
いやターザンは無いって。
ホントは何処かに姿身か客観的に見れる他の同族が居れば良かったんだけど現状はサバイバル中で不安定な泉を鏡面に見立てるしかないのが現状というところ。
不確かな鏡面で不確かな種族確認は難航を極めるわけで先送りはやむ無しであろう。
「カズキの耳は地球人類と変わらない、か。つまりどっちかがこの世界の主流種族かって事なんだよなぁ」
主流か主流でないかは種族間の人口密度による。
そしてそれは間違いなく種族間格差に繋がるわけだ。
つまり地球における歴史が証明するように少数民族は力ある主流種族に呑み込まれる運命にある。
ネアンデルタール人がホモ・サピエンスとの生存競争に負け絶滅したように時代や世界が変わってもその本質は変わらない。
「そして往々にして支配種族は少数民族を弾圧するわけだ。嫌だなぁ」
まあ今のは極端な話。
同族であっても内紛はあるしこの話題は尽きる事はない。
まあ支配種族の作るルールを逸脱しない事がいわゆる身を守る処世術という事になる。
すーすーすーすーっ
カズキの可愛い寝息が聴こえ始め本格的スリープへの移行を確認。
そーとヤシの実似揺り籠のフタをする。
そして実を軽く揺らせばヤシの実似の形状が安定のお舟揺れ。
成る程、ヤシの実似を使ったのはこんな機能があるからかと関心した。
製作者の想いに感動してみたり。
あとオムツ確認は忘れずに。
揺り籠には代えが1枚。
パンパース並みのサラサラ吸水性能で僅かな汚れウンチは粉みたいにパラパラと取れ至って清潔……。
地球の科学技術を凌駕してね?!
「やっと手も空いたことだしここで総点検するか」
正直転生したてで何もかも分からない事ばかり。
とにかく転生は受け入れたのだからこれから生きるにあたって色々と情報収集は必要不可欠である。
まずは自身の装備を点検する事にした。
「先ずは服装。サファリジャケットにビスヘルメットはいわゆる探検家ルック。ブーツは革製で全体的にタグは無し。微妙に完成度が低いのはやはりバンドメイドなんだよな。ん…市販の物は全部かな?未だ工業化出来てない可能性があるか。一つ謎はデザインが地球のものにソックリな事。製作者が転生者かはたまた地球に近い平行宇宙か」
あくまでこの地が異世界の仮定。
基本異世界は連続する平行宇宙。
その概要はボクの元宇宙から離れるほど異質に変化するはず。
まあ異世界転生でなく異惑星転生の可能性も捨て切れないけど少なくともどちらかだろう。
こんな耳の長い人種は地球には居なかったはずでまた持ち物から推察するに高度に文明が発達した世界とも違うようだ。
「は〜どちらにせよスマホは無いのは確実か。何かと不便になるよな」
★総点検(分かった事)
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♢自分(メリアドール?衣服に名前有りで異世界語とカタカナで記載。つまりこの肉体の名前らしい)
性別▷♀
種族▷グリーン髪で耳が長くエルフ的な種族。
服装▷サファリジャケット+ビスヘルメット+ブーツ+ベルト
装備▷ベルト装着ポーチ(内容物▷丸い丸薬?数十。導火線?小さなナイフ。ロープ)+木製?背負子(後から池に浮いていたのを発見)+パチンコ?
――――――――――――――――
自身の点検で衣服や装備に名前らしき記載を確認。
以前の自分がメリアドールという名前を使用していた事を理解。
メリアドール?
まあ元の自分の名前はカズキとダブるわけだし性別も変わった事を踏まえ以後その名前を名乗る事とする。
元の自分?
「……………」
ここは落ち着いて考えてみよう。
赤ちゃんからでなく突然の小学生高学年少女への転生は転生と言っていいのか?
ゲームや小説ではスルーもあるが現実として深く掘り下げれば色々と矛盾が生じるのは否めない。
もしかして転生じゃなくて憑依とか??
だとしたら元のメリアドールさんの人格は何処に?ってボクは人の身体を奪ったって事なの!?
「だとしても彼女の魂は感じない。そしてこのサファリジャケットの前後二つの穴と回りにある黒いシミ……まさか、ね」
肉体には損傷は無い。
無いのだが脱いで確認したら明らかに前側2箇所後ろ側2箇所に破れ穴、其々同一線上にあるのは何ががジャケットを貫通したと見れば納得できる理由。
そして特に胸部の穴の回りはおびただしい黒いシミでいっぱいだ。
「これ、古く固まった血、だ」
……だとしたら彼女は亡くなったという事になる。
そして転生特典のような形て死んだ彼女の身体にボクが転生したのか。
「……全ては仮定の話の域を出ないか。今は備品の点検に努めるのが先だね」
という事で再び総点検に集中する。
メリアドール名は衣服や装備品全部にご丁寧にカタカナと異世界語二言語で記載されていた。
以前の彼女?ボク?はかなり几帳面だったらしい。
異世界語は三角四角の象形文字だったが普通に読解可能。
カタカナ併記は以前のボクの趣味?
それと御多分に漏れずステイタスオープンを唱えたけど無反応。
空中に画面は現れず中二病を拗らせただけだった。
あー恥ずかしい!




