第34話 とある世界の片隅で2
グオオァ
「カズキ、左!」
「まかせろ!」ザクッ
《漆黒の森》
それは瘴気という人に有害なガスを放出する危険な森である。
その近くで俺達は新たなクエストに臨んでいた。
新たに出来たゴブリンの巣の討伐だ。
この《漆黒の森》は地上のダンジョンのようなもの。
次から次に魔物が湧き出す強い魔力を秘めた深淵の森だ。
しかも瘴気により人の侵入を阻んでおり十年前より現れ拡がり続けている。
まだダンジョンのようなスタンピードを起こした事はないが拡がり続けるのは不気味だ。
発見されたゴブリンの巣は数十匹の巣と聞いていた。
だが今は予期しないオークとの集団戦を余儀なくされている。
これは他パーティが残した宿題だがその余波は目標のゴブリン達にも伝わる可能性を秘めていた。
『ゴワアアッ!?』
ドシャッ
「よしオークはあらかた倒した!」
「右から新手!ゴブリンの群れ。かなりの数よ」
「くそっ、やはり動いたか!」
「私に任せて!範囲魔法ギガフレイム」
ゴオオオッ
ぎゃあぎゃあぎゃあッ
ぶぎゃあっ
あぎゃぎゃぎゃっ
「凄い。百は仕留めたわ?!」
「やはりその魔法は凄い」
「アメリア、最高よ!」
「はは、褒めすぎ」ブゥウーン
一人上空から巨大な炎の塊でゴブリンを滅してしまった彼女。
先日の隣国から現れたスタンピード、その初めての町防衛戦で彼女には多大な助力を頂いた。
しかもその彼女が今は俺達のパーティにいる。
最も欲しかった遠距離攻撃の出来る火魔法使いでその力は圧倒的だ。
今日もゴブリンの巣の掃討のクエストでは圧倒的な彼女の魔法に俺とカエラの出る幕は無かった。
お陰で俺達のパーティもワンランク上のCランク。
パーティ名も先日《焔光の鋼》に改定したばかりだ。
スタンッ
「だけど残念ながら私の力はダンジョン内では半減よ。悔しいけどダンジョンで強い火魔法は使用不可だからね」
「謙遜しないで。それでも大いに助かってるわ」
「あはは、私だってカエラの前衛には頼りにしてるわよ」
「うふふ、そうね」
魔法を撃ち終わり空中から帰還したアメリアを迎えるカエラ。
赤髪ロング魔女と黒髪ポニーテール剣士のコンビは絶妙だ。
正直俺が居ないとしてもかなり強力なパーティとして機能するだろう。
「ちょっと、私を忘れてませんか?」
「もちろんよアリエル。アナタなくして私達のパーティはあり得ない」
「アメリアのいう通りよアリエル。あなたの神聖魔法は私達の安心に他ならなわ」
アリエルの神聖魔法は青色神官にしては上位。
途切れた部位があれば再び元のように繋げる事が出来るほど有用だ。
俺達のパーティにはなくてはならない回復職である。
「ふっ」
「あらカズキ、何を笑っているの?」
「イヤだわカズキ、なんか変な事を思ってない?」
「まあ、どんな事を考えていたの?」
「三人とも美人で実力者で俺の鼻も高いって事さ」
「は、私が美人なのは当たり前ね」
「カズキ、嬉しいけど美人はパーティの実力とは別よ」
「まあ、カズキらしいというか」
パーティには連携は重要だ。
4人の気持ちが一つになれば俺達はもっともっと強くなる。
「俺も頑張らないとな」
「は、私とカエラの力は強力よ。ちょっとやそっとじゃ追いつけないわ」
「アメリア、カズキは勇者なんだから私がカズキを越えて強いわけないわよ」
「そうは言っても日々の鍛錬をしているのを私達は知っているわ。アナタの努力は十分分かってる。そうでしょ、カズキ」
「その通りだアリエル。俺達は日々の努力を惜しまないから強い。だからまだまだ強くなる。そしていつか必ず大陸最強のレガリア・ダンジョンを攻略し大陸全土に名前を轟かせるんだ」
ガレリア・ダンジョン
大陸中央ランスロット王国内にある大陸最大のダンジョンだ。
未だ階層深度不明の誰も踏破出来ていないダンジョンでその秘宝は世界を揺るがすとも云われている。
そのダンジョンを攻略する事はすべての冒険者の憧れだ。
「それがこのパーティの目標というわけね」
「やってやるわ。私は必ず剣聖になる。このパーティを最強にする」
「私は白色神官の上位を目指すわ。皆んなの助けになるように」
皆んなが手を組みしっかりと前を見る。
俺もそこに加わり共に頷いた。
俺達はまだこの辺境の町の冒険者上位に過ぎない。
だがいつか必ず大型ダンジョンを攻略して大陸一を目指すんだ。
そうすればきっと《《彼女》》は気づいてくれる。
それまで俺も努力を忘れない。
すべては彼女に出会う為。
すべては彼女の恩に報いる為。
俺も頑張らないといけないから。
「ところで皆んなに話があるの」
「アメリア?」
「話って例の話よね」
「なんだ、例の話って?」
アメリアの話は一時帰国の話だった。
なんでもアメリアはランスロット王国のとある貴族の子女でその実家が今大変な事になっているらしい。
しかもこの町を襲ったスタンピード。
それに関わる話だったのだ。
「まさかあのスタンピードに関わることで家が取り潰しになりそうとか寝耳に水だったんだけど両親がそれで死んだって聞いて、とにかく戻って話を聞かないとと思って」
「ご両親が?大変じゃない!だけどスタンピードで何でアナタの家が責任を取らされるの?災害なんだから仕方ないじゃない」
「そうよ。言いがかりだわ」
「まったくだ」
「どうやら十分に防衛体制を取らず多くの領民が亡くなった事に対する責任ね。国は国民保護を優先しているから領民を守れなかったら領主が責任を取る。明確に誰か人為的犯罪行為でもない限りね」
「スタンピードを人為的に起こす方法なんて無いわ」
「あり得ないわね」
「だがそれだとアメリアが行っても家を救うのは難しいな」
「十分な防衛体制を敷いていた、この事の証明をしていくしかない。向こうにもギルドがあるし協力して説明責任を果たせばまだ道はあるわ」
「それをアメリアがしないとならないの?」
「元々無理やり政略結婚させられそうだったから家出したのよね?」
「スマン初耳だ。そうだったのか」
「はあ、今更だけど仕方なかったと思う。だけど亡くなった両親には申し訳ない気持ちもあるわ」
「………アメリア」
「……カズキ」
「う、む。俺達も行こうか?同じパーティなんだし向かえば何か助けになる事もあるかも知れない」
「それは駄目よ。この町の防衛はどうするの?それに私の家の事にパーティを巻き込むつもりはないわ。でも勘違いしないでね。終わらせたらちゃんとココに戻ってくる。それまで皆んなが私の居場所を守って欲しいのよ」
「当たり前よ。アメリアが居ないと焔光の鋼にならないじゃない」
「当然ね。カズキ」
「ああ、アメリアの話は分かった。こっちはちゃんと守っておくからよい話を聞かせてくれ」
「ありがとう皆んな。必ず私は戻ってくるわ」
こうしてアメリアは故郷に帰った。
俺達は彼女の言葉を信じ今のランクを守るだけだ。
もちろん日々の努力は欠かさない。
そしていつか必ず大陸全土に俺達の名前を轟かせる。
それが《彼女》を見つける一番なんだとしっかりと心に刻んだ俺だった。




