第32話 もう一つの人生3
「親友、突然消えて悪かった」
ボクは翌日ネット上で親友に謝罪した。
モニター越しの親友は頭をかきながら本当に心配した旨を伝えリアルで一度会いたいと打診してきた。
ボクは思案の末自宅近くの公園で会う事を承諾。
次の日の昼間に会う事となった。
「カズキ、本当に久しぶりだな……」
「親友も」
「親友、か。私達は兄弟にも等しい間柄でもあるんだが」
「………変わらない、んだね親友」
「ふ、お前も、な」
その日ボクはリアルで数年ぶりに親友に会った。
前にリアルで会ってから早数年。
前回の富士お化け屋敷ツアー以来というのはなんとも複雑な話だ。
あの直後にボクは無職となりネットにのめり込んだ。
当時親友はあの日のトラウマでボクが引きこもりになってニート化したと思っていたみたいだけどそうなったのは巡り順の悪さだけ。
いや確かにリアルの女性不信にはなったけどその理由で無職のニートはちょっとボクが可哀想すぎだ。
「未だ引きずってるのか」
「やめてよ。ボクのニートはあの日のトラウマのせいじゃないからね。何度も説明したよね?」
「すまん。ゲーム内婚活が頭に残っていてな」
「たまたま言っただけだよ。ネットジョークと同じだからね」
「お前、少しは明るくなったのか」
「ジョーク飛ばすと明るくなるは違うと思う。それブラックユーモアとかの部類に入るよ」
「ブラックか。お前が働いてた所だったな」
「確かに雇用環境はブラックだったけどそれはリストラ対象になってからの話。元からでなくその締め付けに過ぎなかったはずだよ。ちょっと今更何言わせんのさ?!」
「すまん」
「はあ、親友は誤ってばかりだね」
「すまん、な」
「いいって」
「………」
相変わらずイケメンで背の高い親友。
その背の高さをできる限り傾かせて低く見せるのはボクが見上げなくて済むようにの配慮だけどその気遣いがかえってボクのプライドを残念な方向に向かわせてると分からないのがまた親友の残念なところ。
まさに残念イケメンとは親友の事。
「親友も相変わらず人の機微が読めないみたいでその鈍感さには感服するよ」
「ありがとう」
「いや褒めてないからね?」
「そうなのか?」
「いや、そういうところだから」
「気をつけよう」
「マジ変わらないなぁ」
笑えるくらい親友はリアルでも変わらなかった。
その安定の安心感に久方ぶりのリアル対面に緊張してたのが馬鹿みたい。
その一つ一つがボクの親友の親友たる所以。
色々なんか拍子抜けだった。
「お互いに30越えて独身か」
「ボクはともかく親友が未婚なのは信じられないんだけど」
「確か魔法少女になるんだったか」
「いや魔法使いの間違いでしょ」
「魔法少女なら性転換だな」
「だからちがーう! 30歳▶魔法使い、40歳▶大魔導士、50歳▶大賢者、60歳▶神だから」
「お前が女なったら私が結婚してやろう。それで婚活コンプリートだ」
「怖いわ、この話から離れてよ」
親友の悪い癖はアホなところ。
普段は真面目な警察官なはずだけど口を開けば脱線する残念イケメンの典型なやつ。
だけどそんなところも含めて憎めないのが親友だ。
なんもかんも自然体。
今どき天然記念物並みな良心と鈍感とアホで出来たイケメンは何処までもボクに気遣う親友だ。
なにしろ親友は小学生のころに近所に越してきた時からの付き合い。
あの日親友はボクの小学校時代初めての友達になった。
❇
(隣に越してきた〇〇です。これから宜しくお願いします)
ボクら家族に挨拶する親友家族。
親は警察官同僚結婚で警部補と婦警さんコンビ。
そんな一人息子な親友は当時目も合わせられないシャイな子供だった。
「こんにちは、君が和樹君だね。ウチの〇〇と同級生で同じ学校に通ってるとご両親から伺ったよ。もし差し支えなければウチの〇〇と友達になってくれると有難い。職業柄あまり一緒に居られなくてね。この子はすっかり人見知りになってしまったんだ。お願い出来るかい?」
「はい」
「ありがとう。ほら〇〇、和樹君が友達になってくれると言ってくれたよ?挨拶しなさい」
おずおずとご両親の後ろから現れた背丈の低い少年。
その身体の小さいが為に前の学校では虐めにもあっていたらしい。
そのせいもあり初めて会った親友は非常に怖がりの内向的な子供だった。
「そこのチビ、お前が転校生なんだってな」
「……………」
「おい、何か言えよ!」がっ
「うっぐ」
「また黙りかよ。生意気なんだよチビの癖に」
〇〇、また虐められてる……。
ほんとにほっとけないな。
「おい、ボクのダチに何やってんだ?」
「あ、お前は2組の和樹!?」
「そいつはボクの親友だ、放せ!」
「うるさい。お前も生意気なんだよ」ばんっ
「やったな。お前こそ虐めをやめろ!」
「このやろうっ」
こうして何度か〇〇の虐めに遭遇して助けてたけど無抵抗な本人も問題だ。
たから何度か忠告したんだけど……。
「〇〇、言いなりじゃ駄目だ。言い返さないとずっと舐められるよ」
「……和樹君は強いね。僕は怖がりだから」
「自分が怖かったら相手も怖い気持ちがある。そこは同じだから悪い事は悪いと言い返す勇気は必要。それは相手の為でもあるんだから」
「うん、考えてみる」
結局中学に上がるまで親友は変わらなかったけど中学に上がると自然と〇〇への虐めは激減した。
代わりみたいに増えたのがボクへの虐め行為。
もちろん抵抗するからそれなりだけど色んな意味で逆転していた。
「僕の兄弟を虐めるな!」
「〇〇が来た。逃げろ?!」ダダッ
「ちくしょう、和樹覚えてろよ」ダダッ
「うるさい、悪人風捨て台詞で逃げるな!」
「和樹、大丈夫か?」
「馬鹿共が」ペっ
「口切れて血が!?ハンカチを」
「止めろ!お前また兄弟って言ってんのか。本当は隣に住んでるだけなんだから嘘つくな。まるでボクの兄みたいに皆に見られてる。こんなの不愉快だ」
「す、すまん。だが和樹は僕の唯一の友達だから」
「今のボクはお前の後ろに隠れる卑怯者扱いだ。自分の事は自分で守れる。もう放っておいてくれ」
「か、和樹……」
中学に入り様々な事が逆転した。
理由は分かっている。
成長期を過ぎボクらは其々大人への階段を昇っていたがその成長には大きな差があった。
〇〇は身長180センチ越えのバスケ部レギュラー選手。
ボクは身長158センチの卓球部控え選手だ。
つまり成長期を経て大きな体格差と様々に〇〇との差がついていたのである。




