第26話
『『これより危険度不明新ダンジョンその調査踏破依頼中に起きたスタンピードについてその引き金を招いた容疑でパーティ《剛腕の鉄斧》に対する審問を開始する』』
《公開審問》
これは大きな人的被害に対して人為的可能性が認められる場合、その罪を問う為に開く公開裁判。
ボクら《剛腕の鉄斧》三人は調査ダンジョンから生還した直後その身柄をギルドに拘束されギルド内闘技場に強制的に連行されてしまっていた。
理由は先に述べたように公開審問に掛けられる為である。
何故このような事になったかはある程度想像つく。
今回のスタンピードが未登録の新ダンジョンからであり単純にそこに居合わせたのがギルドから調査踏破を依頼された冒険者パーティ剛腕の鉄斧メンバーだけだったという只それだけの話。
つまり交通死亡事故に居合わせたからアナタが犯人かも知れないと云われているのと同じなんだよ。
酷くない?
そして闘技場にはこのエンデバー町を含むバーデン領の領主や冒険者ギルドのギルド長、そしてアース教異端審問官が待ち構えていた。
いわゆるお偉方の面々という訳。
うん、かなりヤバいわ。
「フレイン、これって……」
「不味いですね」
ボクは詳しく知らなかったがアース教下級神官であるフレインが連行前に公開審問について事前説明をしてくれていた。
ただ公開審問に呼ばれた時点でボクらの立場が極めて厳しい状況にある事も説明を受けたのだ。
ようは罪ありきの審問なのである。
「パーティ剛腕の鉄斧はギルド最新の情報ではメンバー5名。しかし被告席の人数が足らんのは何故だのう?」
「メンバーのうちリーリはダンジョン内で行方不明どえす。登録はマスコット役、元々は色町出身でありんす」
「どうせスタンピードの囮役にしたんだろうのう。酷い事をするのう」
「全くでありんす」
細身三角顔で燕尾服を着た気難しそうなのがギルド長。
クルクル巻き毛の口髭をアコーディオンのように伸ばしたり縮めたりしながら顰めっ面で決めつた。
それを四角顔のひげ面側近が頷きながらに変な方言で肯定する。
何だコレ?
前世ゲームとかに出てくるギルド長はみんな筋肉ダルマの実力派だったけど上に座する人物達は一様に事務方的な雰囲気。
なんか思ってたんと違う。
ボクは小声でフレインに囁いた。
『おかしいよフレイン。ギルド長はリーリの不在に言及したけどガブの事は何も話さない。変じゃない?』
『……確かに変な雰囲気です。先程の人数の発表と合致しませんね。我々は確かにガブも行方不明と伝達した筈です。ギルド長が言い間違っただけかも知れませんが』
うーんキャラクター的に三角と四角って悪人って相場が決まってるからボクらの未来は暗雲しかない。
まあ領主が女ボスじゃなくて少年なのが救いか。
え、ここの領主って小学生くらいの子供なの!?
『フレイン、ここの領主って』
『領主は先日のスタンピードに巻き込まれたんです。戦後処理含め長男であるエリック・フォン・バーデンが急ぎ後を継ぎました。確かまだ成人前の10歳だったと思います』
『あちゃ〜っ』
フレインの領主巻き込まれちゃいました発言は最悪だ。
煌びやかな衣服を纏う金髪碧眼の美少年。
俯き加減に不安そうな面持ちは慣れない立場に戸惑いを隠しきれてはいない。
その庇護欲をさそう佇まいは大事にされてきた証か。
だとしたらさぞかし領主は無念だったろう。
で、隣の性別不明の甲冑は何だ?
頭兜で完全武装の騎士みたいだけど顔が見えないし甲冑が重そうだ。
少年の護衛とかかな?
だけどさっきから肌にピリピリを感じてるんだよね。
ボクって敏感肌なんだけどそれが殺気とか怒りとかの感情にも反応してたりする。
得意体質と云えるけどだからこそ《《さっき》》から感じる《《殺気》》がハンパない。
いやダジャレじゃないから。
しかもその殺気の向かう先が横で終始無言に腕組みしてるゼンクトに向かってるんだよ。
うーん、これはもしかして………。
「それだけでも悪質極まりないがダンジョン内での件は当事者間の問題として処理されるのう。よってその事は罪に問えないからのう」
三角ギルド長が悔しそうに講釈をたれる。
そうなんだよね。
パーティ選択からが個人の責任となっているわけで特別な場合の現行犯でない限りは憶測の域を出ないダンジョン内での行いは暗黙の了解として処理されてきたんだよ。
この時の特別な場合というのは違法行為によってギルドや領の公共の利益が失われる事。
今回のようなケースなんだ。
つまりソレ以外は自己責任という事。
ようはパーティメンバーに罠にハメられようが闇討ちされようがダンジョン内での冒険者間の揉め事にギルドは口を挟めない。
パーティ選びからが自己責任という訳。
元々冒険者は個人事業主だし保険無しの根無し草。
その生死はやはり軽かった。
そしてそれは守りゼロの低ランク冒険者にはホントに無理ゲー厳しい世界なんだよなぁ。




