第25話
「は?!」
くぅ~っくぅ~っくぅ~っ
コココココッ………。
「……………………」
その日寝付かれなかったボクはどうやら深夜の時間に起きてしまったらしい。
外には夜行性の鳥である夜告鳥や梟の仲間が夜を謳歌し我が物顔で鳴いている。
因みに時計も無いこの部屋で何故深夜と判断したかだがそれは窓の外からの月明かりに他ならない。
この世界の月は二つあり白月と赤月と呼ばれている。
夕方から夜半前にかけて見えるのが白月。
その名の通り白く明るい月なのだ。
前世でいえば満月である。
ただ面白い事にこの世界の月は満ち欠けをしない。
白月はずっと満月のままの白月だし夜半前には地平線に沈む月でもある。
そして交代で昇ってくるのが赤月。
夜半を過ぎた辺りから昇り世界を赤の光で照らす赤月。
形はずっと三日月で不気味な赤色で照らす暗い月だ。
夜月とも呼ばれる赤月だが様々な理由でこの時間帯の外出は憚られる事の決まりがある。
もっとも深夜帯の外出は防犯と安全上の両面から危険喚起は当たり前でどれほど世界が変わってもソコは共通認識というとこだろう。
しかしもっと深刻なのはこの世界には魔物がおり主に夜を好むという事に尽きるだろうか。
特に恐ろしいのは闇属性のモンスターで死霊系がヤバい。
アンデッドにレイスに吸血鬼とかが代表的モンスターらしくてまさかコッチ本物がいるとか絶句しかない。
「見た事無いけどホントにヤバいと思う。ただでさえ前世からのトラウマなのに………」
親友に誘われて富士山近のお化け屋敷に行ったんだけど病院丸ごと一棟の形をしてんだよ。
は?だよね。
おまけに親友の取り巻きが途中リタイア認めないとか言い出してフザケンナだわ。
いやね?ボクも悪かったよ。
親友に女の一人も回せって言ったら今度富士山のレジャーに誘われたけどお前が行きたいなら一緒に行く?って云われノコノコ付いて行ったのが運の尽き。
で、行ったら親友の取り巻き三人女が美女でも無いのにボクに何でついてくるん?的な睨み節の出迎え。
ちょっ最初から険悪ムードで親友の見えないところでどついたり転がされたりマジ女ヤンキー崩れかと思ったし正直お化けも怖かったけど親友の取り巻きの方がもっと怖かったとか全然シャレじゃなくてあれでボクの人生終わったんじゃなかろうか。
でも最後は転がされたところを親友が見ていて三人女に三行半。
結局帰りは取り巻き放置の親友と二人で帰ったという結果とか笑える。
まあアレでボクの女性に対するコンプレックスは限界を迎え二度とリア充のお裾分けは望まないと誓ったんだったか。
そしてあの凶悪さはハンパじゃなかったけど本物には敵わないだろうから絶対夜の外出は御免被りたい。
もちろん闇属性のモンスターの事で前世で女性恐怖症になった件とはほぼ関係ないと言っておく。
関係ない……よ。
「親友、元気にやってんかな……」
赤い三日月を見ながら窓辺の微風に黄昏れるボク。
前世はそれなりに駄目駄目な人生だったけどそれでもこのクソったれな世界に比べれば天国に違いない。
だからこそボクは生きてやる。
お金を貯めて幸せになって寿命まで生きて大往生してもう一度日本に転生し直す。
それが今のボクのささやかな願いであり確かな人生の目標なんだ。
「長生きするぞーっ!」
ガサッ「メリアドール、こんな時間に起きてるんですか?あまり夜中は騒がないでくれると助かります」
「フ、フレイン!??」
「また半裸で涼んでるんですか?女性なんだから少しは恥じらいを気にして下さい」
「な、なんで…………?!」
さっきまでボクが寝ていたベッド。
端が変に盛り上がっていると思っていたらフレインだった?!
はい〜っ?
とにかく慌てて近くの布地を纏うボク。
いやいや何で《《また》》ボクの部屋にいるのかな??
この人最近無断侵入が過ぎないか!
一応ボクは女でフレインは男。
なのに無断侵入+ベッドに潜り込むのは絶対におかしいから!
ボクが普通の女子だったら既に悲鳴を上げてるところだと思う。
「何で?私はメリアドールの保護観察官です。忘れたんですか」
「あ、あああ???!」
そうだった。
実は調査ダンジョンから町に戻ってきて大変な事に巻き込まれたんだった。
あの時遭遇したスタンピード。
ボクらはゼンクトのお陰で助かったけどスタンピードは止まらず3つの村が襲われたらしい。
察知した冒険者ギルドは冒険者を派遣したけどキングベアーなどが大挙して押し寄せ村の防衛に失敗して数百人の犠牲者が出てしまったんだ。
まさに災害級の被害になっていたのである。
幸い襲われたのは西の国境沿いの村でスタンピードはそのまま国外に向かったから少なくとも国にそれ以上の被害は無かったようだ。
しかしそれだけで終わらないのがこの世の常である。
前世の世界でもそうであったように大きな災害を行政は未然に防ぐ責任があるものだ。
そして支配層は社会不安が広がらぬようシビリアンコントロールとして民を安定に導く必要がある。
それを為す為には災害にたいする原因解明と責任の所在が不可欠だ。
そして未だ議会民主制度から程遠い封建的制度の根強い世界観の中においては支配層からすると短期に収束をはかり責任を回避する一つの常套手段がある。
スケープゴート。
つまりボクらが踏破を目指していた調査ダンジョンからスタンピードが発生しその厄災の中心から生き延びたパーティ。
そう、その責任を真っ先に問われたのは冒険者パーティ《剛腕の鉄斧》というとんでもないイベントが起きてしまったという事実なんだ。




