第24話 もう一つの人生
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
「和樹、ヤバいぞ!」
「ああ親友、確かにこれは荷が重い」
ボク達は誰も見つけていないダンジョン一層目に入り一つのクエストをこなしていた。
それは青銅の勇者になったばかりのボク達には最適なものだったが先ほど転移トラップに引っ掛かり第五層まで飛ばされたのだ。
そこで出会ったのはサイクロプス。
棍棒を持った一つ目の十メートルはある巨人である。
ステイタスインフォメーションの推奨ランクは鋼。
難易度レベル140の2ランク上のモンスターだった。
『ウガアアアアアアーッ』
「おい親友、こりゃどう見ても無理ゲーだ。課金しても追いつかないわ」
「ああ、今日も報われず二人で逝くか。せめて相棒が美女だったら良かったんだが」
「こっちだって願い下げだ!何で男と何度も心中しなきゃならないんだよ。だいたい親友はリアルで女に囲まれてるじゃないか。羨まし過ぎて腹立たしいわ!」
「成る程。和樹は私を羨ましいと思っていたのか?ふむ、意外だ」
「何が意外だだ?!その喋り方も腹立たしい。馬鹿にしてんか?」
「馬鹿にしてないぞ。ただお前はゲームしか興味無いかと思ってただけだ」
「おま?!そんなわけあるか。これは婚活の一環だ」
「ゲームで婚活…………なんの冗談だ?」
「あのなぁ、お前みたいにリアルでイケメンは分かんないだろうがボク達みたいな引きこもりはゲームから入るのが一番なんだ。ゲームでパートナーを見つけて鐘を鳴らすんだよ」
「相手がアバターで真実は見えないのに?」
「親友は知らないのか?この|セカキン《世界樹の巫女と金の勇者》はリアルの身体をベースにアバターを作るんだ。過度な盛りを許さず出来るだけリアルの身体能力も基本とする。だから人気なんだよ。本物の芸能人とかそのままで入ってくる。リアルじゃ近づく事も出来ないのに間近で推し活って最高じゃないか」
「成る程。だから我々はずっと始まりの町から出れないのか」
「それは違う。確かにボクの推し活もあるけどゲーム世界は金次第。大きく課金出来ないと満足にレベル上げ出来ないんだ」
「ふむ。ならば上位ランカーは皆課金をして強くなってるという事か」
「皆じゃない。皆じゃないけどリアルの攻略情報も金次第だから」
「それがどうやって婚活に結びつくんだ?」
「いや、ゲームの中なら話かけれるかなっと……」
「……和樹。日頃の自分を思い出してみろ。相手はリアルもゲームも同じだぞ」
「し、仕方ないじゃないか!ボクはリアルで背が低いんだ。だから誰にも相手されない」
「そう言えばそのアバターはリアルより若干背が高い。和樹、盛ったな」
「……………」
「それに低い事が相手にされない理由か?」
「……………」
「分かっているんだろう。お前女性の前で言葉が出ないんじゃなかったか」
「……………」
「それはゲームの中でも変わってないよな」
「……………」
「そもそもブレイン・ダイブは仮想現実をよりリアルに近づけたもの。我々の感覚はリアルと変わらない。そんな中で和樹は本当に声を掛けられるのか?」
「……駄目だった」
「そういう事だ。アバターになろうがそれがリアルと同じくらいに再現されてるなら基本は何も変わらない」
「じゃあ親友はボクにどうすればいいと思うのさ?このままお一人様で人生を終わらせた方がいいって思ってるの?」
「和樹。パートナーを捜す事だけが人生じゃないと思う」
「リアルでモテまくりの人生を歩む親友に云われたくないよ」
「まあそう悲観する必要はないって事だ。それより我々はいつ迄この岩場に隠れているんだ?」
「ああ、じゃあ」
「そうだな」
『ウガアアアアアアーッ』
❇❇❇
ポーン
((アース教教会にリボーンしました))
ごそそっ
真っ暗なフタを開けて顔をだすと隣の棺桶から顔を出した親友が親指を立てている。
いや死んだのにその親指はなんだ?
意味不明だろうが。
そしてこの場所は始まりの町にあるアース教教会。
このエリアでは死ぬとこの場所で復活するようになっている。
最近常連になっているのが悩みの種なところだ。
『おお勇者よ。死んでしまうとは情けない』
アース教の白色神官NPCが決まり文句を話して復活完了。
ペナルティを払って町に開放だ。
つまり罰金という事。
「このNPC、また同じ事を言ってるよ。フィジカルAIは何処行ったんだ?」
「NPCだけでも数億の稼働。AIでもそこまで対応出来ないのじゃないか」
「AIが手抜きってどこまで人間化してんのさ」
「システムに文句を言っても仕方ないだろう」
確かにそうだ。
システムは誰にも平等でその恩恵は|セカキン《世界樹の巫女と金の勇者》に参加するプレイヤーすべてに共有されるもの。
つまり課金以外の基本システムは少なくとも平等という事になる。
「うわお、また死んだー」
『おお勇者よ、死んでしまうとは情けない』
「…………………」
別のプレイヤーが復活したがあのNPCは平常運転。
平等に同じセリフを吐いていた。
平等は結構だがセリフが変わらないのは手抜き過ぎだろう。
「ここのAIは怠け者だな」
「人間臭くていいじゃないか」
「親友、それだと手抜きが良い事になってしまうよ」
「害がなければ良いだろう」
「ンな事あるかーい」
ポーン
『おお勇者よ、死んでしまうとは情けない』
「…………………」




