↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/31

鶏ガラスーププロジェクト

作業そのものは難しくはないけれど、とにかく大変

血抜きの後、処理された部位は肉と鶏ガラに綺麗に分かれていた。

 肉は塩漬けにしてすでに数日寝かされている。

 ある程度汚れを取った鶏ガラは、更によく洗わなくてはいけない。

 だが、それには大量の水が必要になるが、この世界では水は貴重だ。

 悩んでいると提案されたのは魔法で浄化する方法なのだけど、こんなのに魔法を使っていいの?

「そもそも、魔法って簡単に使えるモノなの?」

「使えるのは、その才がある者だけです。ですが、召喚の儀で魔力を使い切っていたので、しばらく枯渇しておりました」

 何? その残念感。

「で、溜まった魔力でやる事が鶏ガラの浄化?」

「最重要案件が最優先されます」

 何を言っているのか分からない。

 だって鶏ガラ洗浄だよ。


 いいのか?


 ……


 うん。

 ここは、考えるのをやめよう。

 必要なのは鶏ガラスープだ。


 三人の高位の魔法使いによって、鶏ガラの汚れが一掃された。

 全体が一瞬光った後、すごく綺麗になった。

(これに魔法を使っていいのかは別問題)

 一度湯がいて、アクをとり大鍋に入れてポワーロ(ネギっぽい)とジャンジー(生姜っぽい)と一緒に茹でる。

「沸騰すると濁るので、その直前を維持して下さい」

「はい。時間は如何程」

「ん〜、最低4時間。できればそれ以上で」

「はっ。畏まりました」

 え? それだけ? いいの?

 でも、鍋の前に仁王立ちしてやる気満々なので任せる。

 地味な仕事だけど重要なのでよろしく。


 さて、それよりもやるべき事がある

 

 そう麺を作る!


 事前に灰を茹でて、それを濾して置いておいた水で小麦粉をねり、しばらく休ませて伸ばし、薄い板状にすると料理長にガン見される。

 視線と周囲の響めきはこのさい無視だ。無視!

 何より、今は麺に集中しなくちゃいけない。

 なんせ記憶を頼りに作っているから不安しかない。

 迷いながら打ち粉をかけて折り畳み細く切る。

 所々太くなって心許ないが一応麺だ。でも、茹でるまでは気を許してはいけない。

 乾燥しないように、濡れた布をかけて鶏ガラスープを見に行くと、なかなかいい色が出ている。

 香りもいいし、これはいけるかも。

 もうしばらく煮込む間に塩漬けした鶏肉を焼いて塩チャーシューにする。

 出汁は無い、醤油も無い。

 だが、旨味は肉の焦げからも出ると、これまたよく見ていた番組『ボイル言語 十』で伝染説の家政婦のリクさんが言っていた。

 手っ取り早く顆粒コンソメを使っていたけど、ここは焦げを使う。


 なので、取り敢えず皮目からじっくり焼こう。

 これにはもう一つ理由がある。やはり鶏皮はカリカリが好き!

 香ばしく、かつ柔らかく仕上がる。

 じっくりと焼き、ワビソウの塩キンピラをメンマの代わりにして、ポワーロをネギ代わりに刻む。

 これでトッピングは整った。

 

 そして満を辞して挑む。

「麺を茹でます」

「かしこまりました」

 特注の大鍋に沸騰したお湯に麺を投入。

 茹で時間は数分。

 湯切りは風魔法で迅速に。

 この日の為に用意した大きめのサラダボウルに、塩と干し肉で作ったタレ入れてそこに鶏ガラスープを注ぎ、茹でた麺に鳥ソテーにワビソウ、ポワーロを散らして完成だ。

 見た目はラーメン!

 いざ、実食!


 箸を手にしたいただきます。

 なぜこの時点で騒めく?

 だが、面倒だから無視。


 ツルツルとした麺は、太めで不揃いでも嬉しい。

「あ〜、鶏ガラスープだ」

「佳代さん、ラーメンです!」

「うん、ラーメンだ」

 味は足りないし、具も違う。でも、ガラスープが身に沁みる。

 久々のクリームとチーズ系以外の味。


 心と体に沁みる。


 ズズズと無心で麺を啜る。

「佳代様」

 ハンナさんの声でハッとなった。

 この音はまずいか。

「その道具は?」

「え? 箸の事?」

「はい。それは、どのような魔法でしょうか?」

「これ? ただの道具よ。コツがいるけど、誰でも使えるけど」

 動揺が走る。でも、だって箸だし。

「ね、舞ちゃん」

「はい」

 箸をカチカチして見せる。


おおおおお!


 何この盛り上がり?

 見よう見まねで箸を使おうとするが、持つのも難しそう。

 現代日本でもちゃんと使える人は結構稀だし、初めて箸を目にして使うのは難しく当然だ。

「えーっと、これなら簡単に使えるかと」

 試作のフォークを渡す。

「これは?」

「これだと食べやすいので、使ってみて」

 料理長がフォークで麺を掬う。

「何だと!」

 周囲がどよめく。

 でも、フォークに麺が絡んでいるだけだ。

 ゆっくり口に麺を運び食べた。

 その目がカッと開く。

 咀嚼し飲み込む。

「佳代様! これは神の食べ物ですか?」

 料理長、ただのラーメンです。しかも、本来のラーメンの劣化版です。

 そのラーメンを厨房のみんなが一斉に食べ始めた。

「!」

「!」

「!」

「!」

「!」

 一瞬、動きを止めるが、今度は無言で貪り食べる。

「怖い」

「佳代さん、私達ヤバイものを作っちゃった?」

 そうかもしれない。

 食べ終わると、スープを見つめる物や生麺を引っ張り、弾力を確かめたり、小麦粉を捏ね始めたり。

 みんなの目が怖い。


「とりあえず、食べちゃおう」

「そうですね」

 鶏ガラスープはよく出来た。それでいい。


 色々改良すべき点はあるが、久々の鶏ガラ味のラーメンはやはり美味しい。

「か、佳代様!」

「魔法局長? どうしました?」

 何故いきなり跪く!

「はやはり貴方様が、異界から使わされたお方なのですね」

「はぁ?」

「なんで?」

 舞ちゃん、もっと突っ込んで!

「まさか棒で食せるなど、まさに神のみ技」

「いや、舞ちゃんもできるから!」

「は? では、この状況は何故に?」

 私に聞かないで欲しい。

 調理長が無言でラーメンを差し出した。

「これは?」

「いいから食せ!」

 威圧で無理やり従わせる。

 それに負けて、恐る恐る麺を口にする。

「ん?」

「スープも飲め!」

 言われるまま飲む。

「こ、これは! 何という味わいだ!」

「これが、鳥の骨で作られている」

「ま、まさか」

 またこっちを見る。

「やはり選ばれたお方ですね!」

「何故そうなる?」

 

 気が遠くなる。

 と、肩をポンポンと叩かれた。

「舞ちゃん?」

「佳代さん、諦めた方がいいよ」


 何で〜?


別方向で大変

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。