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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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準決勝中堅戦 その2 分散と突撃

 さてと、準備は整ったが……。
 壁上で待機していると、ひそひそとユーミルが話しかけてくる。

「ハインド、まだか!?」
「まだだ。これが決まったらもう反撃不可能っていう、ギリギリの――」
「おお! ギリギリのタイミングで攻めるのだな!?」
「……ギリギリのタイミングまで待ったりはしないから、心配するな。動くのはそれよりも大分前だ」
「む? 急かしておいて何だが、ギリギリでは駄目なのか?」

 今はこうして戦闘中に話をする余裕すらあるくらいに、戦場が静かだ。
 ラプソディはこちらが何かを狙っていることを承知で、砦の前で待ち続けている。
 これは何をされても対応可能という余裕の現れでもあるだろう。
 人数も35から40……足りない人数は、砦に残って防衛していると見て間違いない。
 そしてユーミルの問いに対する答えは簡単だ。

「ギリギリのタイミングだと、まず間違いなくラプソディはこちらに攻め込んでくるぞ。残り時間によってはリスポーンになっても問題ない上に反撃潰しにもなるから、そうしない理由がない。そうなったらこちらは詰みだ。それを防ぐためには、少し仕かけるタイミングを早めにずらす必要がある」
「なるほど……」
「だから事前に、最低限の防御を残すって話をしたんだろう? それに、こうしてラプソディの様子を観察して――おっ!」

 非常に軍隊じみた統率によって引き締められたラプソディだか、別に彼らは軍人ではない。
 ゲーマーである。
 いつまで続くのか分からない待機状態に、徐々に退屈さを感じて緩みが出始める。
 対してこちらは、仕かけるタイミングを自由にコントロールできる状態にあり……。
 増えていくスコアと反比例するように、ラプソディの集中力と士気がじわじわと下がっていくのが見えるようだ。
 試合時間が終盤に差し迫れば、再び集中力が増してくるのだろうが……。

「……セレーネさん、どう見ます?」
「余りに気が緩んでいる人が増えすぎると、統率者の誰かが引き締めると思う。待ち過ぎるのは良くないよ」
「ですね。それに、これ以上ポイント差が付くと相手が自陣に引き返す恐れもあります」

 最後の詰めは先程ユーミルの言った、駄目押しの攻撃以外にもう一つ。
 勝利を確信できるだけのポイント差が付いたら、自陣に下がって防御を固める――どちらかと言えばこちらがより確実な方法だろう。
 レーヴの攻撃的な性格上、前者を選ぶ可能性の方が高いが……どちらにしても俺たちが動くのは、その前でなければならない。

「そうだね。残り時間がそろそろ半分を切るから、もう一呼吸くらい置いたら……」
「行きますか。では、後を頼みます」
「うん、任せて。そっちも頑張って」

 セレーネさんとの会話の途中から、既にユーミルは出撃の気配を察して嬉しそうな顔でそわそわし始めている。
 防衛組はセレーネさん、サイネリアちゃんの弓術士隊、リィズとシエスタちゃんの混合魔法隊、重武装の前衛少数を連れたリコリスちゃんといった面々。
 ただし現地人がかなり少なく、全部で15人程度。
 攻撃組は俺、ユーミル、トビ、ティオ殿下と残りの現地人兵士全員。
 軽戦士・武闘家を中心とした総勢72名が、正門と壊れた壁から――

「先輩方、お見送りの花火はお任せをー」
「吉報をお待ちしています」

 リィズとシエスタちゃんが同時に放つ、光と闇の魔法に続いて一斉に出撃した。
 ラプソディの整った布陣を避けるように、そのまま魔法・矢の援護を受けつつ分散して野戦ゾーンを駆け抜けて行く。

「うおおおおおっ! 突っ走れぇぇぇぇ!!」
「目標は砦、砦だ! 敵に構うな!」
「軽戦士と武闘家の本領をっ! 機動力をぉぉぉ! で、ござるぅ!」

 ステップ系のスキルを使用しながら、回避行動を取りつつの全力疾走。
 しかしラプソディの横を通り抜ける間に、攻撃を受けておよそ30人ほどが脱落した。
 ――予選時よりも射撃精度が上がっているじゃねえかっ! 畜生! 
 考えていたよりも多くの脱落者が出てしまった。
 俺たちの動きに僅かに動揺した様子を見せたラプソディだったが、それが整うまではほんの一瞬。
 すぐさま大部分は俺たち攻撃隊を無視し、砦の陥落を目指して進軍を――

「――っ!?」
「フラッペ!? 馬鹿な!」
「この距離で頭部を!? くそっ、セレーネか!」

 開始しようとした直後のことだった。
 一瞬の隙さえあればそれで問題ないと言わんばかりに、大型のクロスボウから放たれたボルトが地面に突き立つ。
 セレーネさんが放った『スナイピングアロー』が、敵の弓術士エース・フラッペを吹き飛ばした。
 進軍再開の動き出しに重なったこともあり、フラッペは蘇生されずに光になって消えていく。

「セッちゃぁぁぁん!! 最高過ぎるぅぅぅ!!」
「弓兵隊の攻撃が緩んだ!? このまま一気に抜けるぞ! 攻撃部隊、そのまま左右に散りつつ突撃!」
「うむ! 攻撃部隊、突撃だっ! 足を止めるなよっ!」
「なっ……ソルダ! フラッペの穴埋めを!」
「ああ! こんなもんはただの無謀な特攻だ! さっさと砦を落としてくれよ、大将!」

 よっしゃ、考え得る限り最高の獲物が釣れた!
 たった今指示を飛ばした声は忘れもしない、レーヴのものだ。
 さすがに総指揮官のレーヴは動かなかったが、前衛の要である重戦士ソルダが抜けてくれれば防衛がかなり楽になる。
 思うに、フラッペを中心にこちらの足止めをすれば十分という腹積もりだったのだろう。

「ふふん! レーヴめ、見るからに慌てていたな! セッちゃんのおかげで少しだけすっきりした!」
「まだ気を抜くなよ!? ここからが勝負だからな!」
「分かっている! まだまだへこませたりないということだな!?」
「違うけど、まあ今はそれでいい! はぁ、はぁ、砦までもう少しだっ!」
「――あんまりウチの大将を舐めてもらっちゃあ困るな」
「ぬおっ!? 下がれ、ハインド!」

 気付けば俺が全く反応できなかった剣閃を、ユーミルが目を見開きつつ受け止めている。
 速い……明らかに俺を狙った攻撃だったので、ユーミルが止めてくれなければ危なかった。

「ちっ、さすがにそう簡単に総指揮官はやらせてくれねえか……まっ、そもそも総指揮官が攻め込んでくること自体おかしいんだが――なっ!」
「くっ、その身のこなし……貴様、本当に重戦士か!?」
「おうともよ! 重戦士・ソルダ様だっ!」

 ラプソディのサブギルドマスター、重戦士のソルダ。
 重戦士とは名ばかりの軽装で、取り回しの良い中型の剣「カットラス」を振り回して襲いかかる攻撃重視のスタイルだ。
 よくもまあ、あそこから追いついてきたものだ。攻撃速度だけでなく、足もかなり速いらしい。

「軽戦士は攻撃力が寂しくてなぁ……気が付いたら、俺ぁこんな変なスタイルに落ち着いちまった。ってこら、逃げんな! 話を聞けよ!」
「馬鹿を言うな、逃げるに決まっている! お前に構っている暇はない!」
「ハインド殿ぉぉぉ! まずい、こっちは全滅しそうでござるぅぅぅ!」

 トビの声に視線を向けると、ソルダが連れてきた追撃部隊によって現地人の軽戦士たちが次々と倒されていく姿が見えた。
 さっきから何度も何度も練度の高さを見せ付けられているようで、いい加減腹が立ってきた……!
 しかも、ちらりと見えた自陣砦の状況もかなり良くない。
 既に結構な数のラプソディの侵入を許している。

「お前らみたいな作戦を考える輩が、今までにいなかったと思うか!? こちとら慣れっこなんだよっ! もっとも、俺が欠伸した瞬間を狙ってくるたぁ大したタイミングだったが! ちと驚いたぜ!」
「ティオ殿下ぁっ!」

 俺はおしゃべりなソルダの言葉を無視してティオ殿下の名を叫んだ。
 人数が勝っているので、このままでも全員が止められることはないだろうが……これ以上減ると砦内での戦闘に支障が出る。
 ティオ殿下が即座に反応して杖をかざし、走りながらの詠唱を開始した。

「何をする気か知らねえが――うおっ!?」
「やらせんっ!」

 ユーミルがソルダを止め、もう一人飛び込んで来た詠唱妨害もトビが『縮地』を使用して割って入ってくれる。
 ティオ殿下の装束が力のうねりを受けてはためき、巨大な魔法陣が光を放つ。

『サーラの勇敢なる戦士たちに、慈しみの光を――!』

 特殊スキル『聖女の祈り』が不思議な声音と共に響き渡り……。
 周囲の現地人兵士のみならず、このフィールド全域のサーラ軍兵士のHPが小回復した。

「はっ、そんなショボイ回復効果で何ができる! ヒールオールと変わんねえじゃねえか!」
「おおっ、ティオ殿下!」
「我らには聖女様が付いておられるぞ!」
「恐れず進めぇ!」
「なっ、こいつら急に!? ……んん!?」

 ソルダが二度見したHPバーの変化については、錯覚ではない。それを教えてやる気は更々ないが。
『聖女の祈り』の効果は味方全体のHP小回復に加え、自然回復の追加……あのアイテム『湿布』と同じように、時間経過でHPが少しずつ回復していくというものだ。
 即効性は低いが、一撃で戦闘不能にならなければ目に見えて耐久力に差が出る優良スキルである。
 そして俺たちは追撃を受けながらもようやく、相手の砦の正門が手に届く範囲まで近付くことに成功。

「ハインド殿っ!」
「壁を壊している時間はない! 正門を強行突破だ! ユーミル!」
「おおっ! 攻撃隊、私に続けぇっ!」

 重戦士ソルダ率いる追撃隊の猛攻の結果、俺の目測によると砦に突入できた人数はおよそ30人ほど。
 砦に残っていると思しきラプソディの兵が約10、ソルダの追撃隊も約10人……。
 つまり砦内では現地人込みの30人対精鋭プレイヤー20人の対決ということになる。
 戦いの行方は、どちらが砦を先に落とすか――すなわち、どちらが先に旗を奪うかという局面を迎えつつあった。
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