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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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準決勝中堅戦 その3 勝敗

「ハインド!」
「MPはチャージ済みだ! 思い切って行け!」
「そうか! では、行くぞぉぉぉっ!!」

『バーストエッジ』が正門を塞ぐラプソディのプレイヤーを吹き飛ばす。
 盾で直撃を避けているのはさすがだが、その威力の前に退かざるを得ない。
『クイック』と『エントラスト』でユーミルを回復させていると、俺たちの左右を味方が進んで行く。

「お二人とも、ご武運を!」
「しっかりやんなさいよ! ……皆、私と共に進みましょう!」
「手筈通りに、三部隊に別れて突入! 二人とも、部隊指揮を頼んだ!」
「三部隊に分散して突入だ! 人数はミーティング通りに、部隊長はトビ、ティオ、それから私だ! 右の部隊は私たちに続けぇっ!」
「「「おおー!!」」」

 砦内、旗のある指揮所の塔へ至る道は三ルート。
 一番大きな経路、正面戦力はティオ殿下率いる約十五人の兵士。
 左の入り組んだ細道には、トビと共に特に機動力の高い五人程度が侵入。
 右の半端な道には俺とユーミルが十人ほど連れて突入した。
 砦の構造は自陣のものを反転させただけのものなので、迷うことはないはず。
 俺は僅かに立ち止まって必要最小限のMPをチャージすると、部隊の移動に合わせて進行を再開した。

「で、どうなのだ!?」
「見たところ特に異常はない。指揮所と塔付近だけ注意だ!」
「分かった!」

 砦内に視線を巡らせてみるが、罠の類はない。
 考えてみれば当然か……ラプソディにも罠型トラップタイプはいるだろうが、あれだけの正面戦力を揃えているのだ。
 必然的に罠の数は絞られ、要所にだけ設置されているものと思われる。

「待てや、てめえら! 俺を無視するんじゃねえ!」
「ぐあっ!」

 後ろから追いついてきたソルダが、武闘家の現地人を斬り付けながら再登場した。
 足は止めていなかったのだが……俺とユーミルは兵士たちを先行させると、最後尾で対応に回った。
 まだ武闘家の兵も戦闘不能になっていない。
 詠唱の短い『ヒーリング』でHPを最低限回復させると、助け起こして部隊に合流させる。

「しつこいぞ、お前!」
「うはっ、きっつい斬撃! 趣味じゃねえけど、盾が欲しくなるなっ!」

 ソルダはユーミルが『ヘビースラッシュ』で止めてくれたが、その後ろから多数の足音が響く。
 こっちに人数をかけてきたか……。
 二人が激しく斬り結ぶ背後から、敵の増援が出現した。

「しつこいのも当然だぜ! 砦を落とさなくても、ハインドを倒しゃあ戦いは終わる! かかれっ、お前ら!」
「ユーミル、一旦離脱だ! 時間をかけ過ぎると倒した敵がリスポーンしてくる! 進軍優先っ!」
「分かった!」
「逃がすかっ!」

『アサルトステップ』で防具を軽くしながら駆け出すユーミルの背後に、ソルダが迫る。
 俺は落ち着いて機会を窺ってから、『シャイニング』をソルダの目に向けて放った。

「うげっ、しまった!」
「フハハハハ、馬鹿めっ! さらばだ、ソルダとやら!」
「んだとぉ!? 見えなくても、そんだけ大声出されたら位置ぐらい分かるわ! くらえっ!」
「ソルダさん、下ぁっ!」

 ――カチリ、と何かのスイッチが入る音がソルダの足音から響く。

「は?」

 直後、重戦士でありながら軽装のソルダは爆風と共に吹き飛んだ。
 倒し切れなかったが、足止めには十分なダメージが入る。
 罠を設置しながら走る仲間のサーラ兵が、俺たちに向かって笑みを浮かべた。
 拳を握って返事をしながら、その後を二人で追いかけていく。

「くっそ、追いかけろ! 俺も後から行く!」
「罠に気を付けろ! 奴ら、罠を撒きながら走ってやがる!」」

 ご名答。
 今の罠は咄嗟に仕かけたものではなく、事前に指示を出して実行させておいたものだ。
 罠の設置数には上限があるが、自陣砦のものが何らかの形で消滅すれば新たに置き直すことができる。
 それと同時にこれだけの数の罠を置き直せるということは、自陣砦陥落も時間の問題か。
 指揮所前の大広間では、既に主戦力であるティオ殿下の部隊とトビの部隊が交戦を開始していた。
 上手く横合いから出られた……これで敵の防衛戦力は全てか? 何人かリスポーンした敵が混ざり始めており、やや劣勢だ。
 両部隊とも押されているが、俺たちはこのまま指揮所に――

「だ、だから待てって……言ってるだろうがぁ!」
「本っ当にしつこいな! ソルダ!」

 確かに、この短期間でユーミルが名前を憶えてしまうくらいにはしつこい。
 罠で若干HPを減らしたソルダの追撃部隊が、肩で息をしながら俺たちに追いついてきた。
 最後の方はダメージ無視で強行突破したのか……敵ながら良い判断をしている。
 一瞬で距離を詰めたソルダが指揮所の入り口を塞ぐ。

「すまん、ソルダ!」
「本当にな! 何を油断してんだよ、フラッペ! おめえさんのおかげで、こっちゃあ走りっぱなしだっつーの! 反省しろ!」

 時間をかけ過ぎたせいか、弓術士のフラッペも復帰してしまっているようだ。
 屋内戦闘な上に近接戦なので、さほどの脅威にはなっていないようだが。
 これがこの試合、最後の戦いになる……が、ここまで来て更にもたつく訳にはいかない。

「ユーミルッ!」
「ああ、分かっている! そこをどけぇぇぇっ!」

 俺の『マジックアップ』を受けたユーミルがソルダに向かって走る。
 他の部隊員が追撃隊との交戦に入る中、剣を両手持ちに変えたソルダが深く鋭く息を吐き――。

「見切ったぁ!」

 踏み込んでカットラスを下から上へ跳ね上げた。
 何もない空間で魔力の爆発が生じ、周囲の空気を激しく震わせる。
 ――躱された!?
 俺はそれを目にした瞬間、何かを考える間もなくソルダに向かって全力の体当たりを敢行した。

「ぶはっ!? な、何だぁっ!?」
「――うぐっ! 走れぇっ!」

 俺がその言葉を口にする必要はなかったのかもしれない。
 ユーミルは俺がソルダを止めることが分かっていたように、既に指揮所の入り口へと走り出していた。
 それを横目にソルダと同時に立ち上がると、今度は俺が入り口を遮るように立って杖を構える。
 ソルダは忌々しそうな顔をしていたが、ややあって表情をふっと緩めた。

「はっ、最後の最後で判断ミスをしたな! ユーミルを残して総指揮官のあんたが行くのが正解だったろうに……なあ? ハインド」
「……」
「悪いが、ユーミルが旗を奪うよりも早く決着をつけさせてもらう」

 話しながらもソルダの剣が赤い輝きを放ち始める。
 これは『ランペイジ』のチャージエフェクト……当たれば間違いなく俺は一撃で戦闘不能にされてしまうだろう。
 ユーミルが指揮所から塔の階段を上り切るまでは、まだ時間がかかる。
 せめて初撃を凌げれば、もしかしたら……。

「――行くぜ」

 スキルのチャージを完了させたソルダが地を滑るように肉薄してくる。
 速いっ……! ユーミルはこんなのと打ち合っていたのか!
 俺はどうにか初撃だけでも防げないかと、思考を懸命に巡らせる。
 ユーミルに追いついてきた時のソルダの初撃は、いずれも袈裟斬り、袈裟斬り、袈裟斬り……。
 その後の剣筋は変幻自在だったが、初撃に関しては記憶にある限り全て袈裟斬りである。
 俺はそれに望みをかけ、タイミングを合わせて杖を左上に構えた。

「ははっ、マジかよ!」

 ソルダがそれに対して笑みを浮かべた。
 そしてまるで俺がそうすることを知っていたかのように、小さなフェイントを入れてから体を沈める。
 杖がない逆方向、右からフルチャージされた剣で腹を横薙ぎに裂かれ――俺は激しく柱に叩きつけられた。

「――がっ!!」
「ハインド!?」
「ハインド殿ぉっ!」

 遠く、ティオ殿下とトビの声が聞こえる。
 真っ赤に染まったHPバーを見て勝利を確信したソルダが、悠然とこちらに向かって歩みを進める。

「残念だったな! しっかし、ウチの大将の言った通りだったぜ。ハインドの観察力は並じゃない。必ず相手の癖を読んで対応してくるから、自覚があるなら気を付けろ……ってな。まさか本当に、俺の初撃の癖を読んでくるたぁ驚いたぜ」

 そして俺が戦闘不能になり、指揮所前の広間が静まり返る……だが、システムから試合終了の表示は出されなかった。
 真っ先に異変に気が付いたのは、俺を倒したソルダである。

「何でだっ!? 総指揮官を倒したのに、どうして試合が続いている!? ――はっ!」

 もう動けないので視線は動かせないが、困惑した様子で互いの顔を見るラプソディのプレイヤーたちの姿は確認できた。
 そんな中、ソルダはこちらから目を逸らせないでいる……痛みの中、勝ちを確信して口元を緩ませたまま戦闘不能になった俺の表情から目を逸らせないでいる。

「ハインド、てめぇぇぇぇっ!!」

 総指揮官には、それ以外の者と違い蘇生猶予時間というものが存在しない。
 そのため戦闘不能にすることができれば、即座に試合が終了する仕様となっている。
 そこから導き出される結論は――。
 直後、試合終了のブザーがフィールド内に鳴り響く。
 リスポーン寸前だった俺の戦闘不能状態が解除され、視界に表示されたのは……。

『ベリ連邦 砦 の旗を ユーミル が奪取しました! サーラ王国 の勝利です!』

 サーラ王国の戦士たちが、歓喜の叫びを上げた。
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