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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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準決勝中堅戦 その1 奇策と防衛

「ラプソディが相手なら話は早いですよね? ハインドさん」
「え、そうなんですか!?」

 リコリスちゃんが驚いた様子でこちらに注目する。
 リィズの言う通り、ラプソディ対策は既に考えてある。
 俺は少ない編成時間を有効活用するべく、両ギルドメンバーとティオ殿下を集めた。

「今回は事前に知っておいてほしいことが結構多い。一度しか説明する時間はなさそうだから、しっかり聞いてくれ」
「わ、分かりました! 一生懸命覚えます!」
「確か、今回の相手は以前……私も全力を尽くすわ。勝ちましょう、ハインド」
「はい、ティオ殿下」

 話ながらも出撃を確定させた兵士が既に詰め所に続々と入ってくるので、ティオ殿下は外行きモードだ。
 前回負けたという事実を飲み込み、ただ勝とうとだけ口にした。
 こうやって味方の士気にまで気を遣えるようになった殿下を見ると、ついつい表情が緩みそうになる。
 俺はまず最初に、みんなに今回の編成を伝えると――

「随分と思い切った割り振りでござるな………」
「でも、編成を聞くとやりたいことは何となく分かるね。問題は最後の守りになると思うんだけど……」
「トラップ持ちの兵士なら、両方の役目を遂行できると思いますよ。そうですよね? ハインドさん」
「ああ。最後の守りはかなり難しいが……残していく罠を上手く使えば、少人数でも守り切れるはず。居残り組も攻撃組も、どちらがしっ――どちらも成功させることができれば、勝利が見える」

 危ない危ない、ティオ殿下がああなのに俺が士気を下げるような言い回しをしてどうする。
 このように編成を見れば俺の作戦が何となく分かってしまうので、それを悟らせない努力もある程度必要になる。
 序盤から終盤まで、メンバーによってはひたすら我慢を強いることになる。

「まあ、正攻法じゃ勝てないって認めているようなものだが……」
「何を恥じることがある! これだけリスクを孕んだ作戦なのだ、成功すればさぞ爽快だと思うぞ!」
「ハインドさんの仰っていた数の利も活かせますしね。とはいえ、能力差も考慮すれば元々殲滅できるほどの人数差ではありませんから、これで良いのではないかと」
「……ありがとうな、二人とも。じゃあ、全体の流れをざっと説明する。ちょっと早口になるけど」

 制限時間が間近に迫る。
 若干目を回している様子のリコリスちゃんは、サイネリアちゃんとシエスタちゃんに任せるとして……。

「――と、各部隊長はそんな形でお願いしたい。セレーネさんはひたすら敵幹部を狙い続けてください。撃破は可能なら、という感じで。プレッシャーを与え続けるだけでも、状況が有利になります。もちろん幹部格に関わらず、倒せそうなのはやっちゃってください」
「うん、やってみるね」
「口調の割に物騒な会話でござるなぁ……」

 がっちりとやることが決まっているメンバーの中で、セレーネさんだけはあえてフリーにしてある。
 過度な期待は禁物だが、彼女ならひょっとしたら――という考えがあるのも事実だ。
 その狙撃の成果次第で、こちらが大分有利になる可能性がある。
 で、それよりも問題はこっちだ。

「……ユーミル、大丈夫か? ちゃんと作戦内容を把握できたか?」
「う、うむ!」

 表情を見る限り、若干怪しいが……。
 俺はユーミルに顔を寄せると、念押しの一言を残すことにした。

「今回は最初から最後まで、俺はユーミルの近くにいる――多分」
「そこは断言してほしいのだが!?」
「ま、まあ、とにかくだな。作戦通りなら近くにいるはずだから、何か分からなくなったらどうにかして訊いてくれ。できる限りのフォローはする。だから、例のアレだけは忘れずにやってくれ」
「あ、そ、そうだったな! 大丈夫だ、きちんとやる!」
「よし……」

 言葉を切ったところで、試合開始の秒読みが始まった。
 そろそろ配置につかなければ。
 俺はヒナ鳥トリオに素早く視線を向けた。

「そっちは?」
「問題ないです、ハインド先輩。今度は勝ちましょう!」
「お?」
「あれですよ、先輩。私たちだって私たちなりに、先輩を慕っている訳でして」
「ええと?」
「簡単に言うと、私たちもハインド先輩に嫌味を言ったあの人を見返してやりたいです! ファイトです! 気合です! そして勝利ですっ!!」
「おお……」

 ヒナ鳥たちから予想外の激励を受けた。
 トビがその言葉に続くように俺の背を叩き、セレーネさんも彼女らしからぬ力強い頷きを見せてくれる。
 ティオ殿下もああ言ってくれたし、ユーミルとリィズは――

「もし上手くレーヴに接敵できたら、粉微塵に斬り刻んでくれる!」
「シャドウブレイドで地面に縫い付けて、ポイズンミストを――」
「ほ、ほどほどにな……」

 言わずもがなである。
 二人のはちょっと過剰だが、これは俺も気合が入るな。
 みんなにここまで言わせておいて、そう簡単に負ける訳にはいかない。

「あーっと、じゃあみんな……頼んだからな。ユーミル、時間だ。号令を」
「うむっ! サーラ王国中堅チーム、出撃!」
「「「おおーっ!!」」」

 ユーミルのかけ声に応え、俺たちはサーラの国軍兵と共に武器を突き上げた。



 そして俺たちは、試合開始と同時に野戦ゾーンに展開……しなかった。
 ラプソディのプレイヤーたちの困惑が、遠くここまで伝わってくる。
 俺たちは砦内に籠り、強固な防衛体制を敷いていた。
 砦の防壁の上で、俺は忙しく指示を飛ばす。

「まずは罠、罠優先だ! 神官からMPを受け取ったら入口付近にどんどん設置してくれ! 魔導士隊、弓術士隊は手を休めるな!」
「聞こえたな!? 軽戦士隊は神官からMPを受け取って罠を、魔導士隊と弓術士隊は射撃だ! 急げ!」

 ユーミルが通りの良い声で復唱したことで、俺の声では届かない階下まで確実に聞こえたことだろう。
 各部隊が動き出した。
 まずは罠を入口少し奥……敵の射線が通らない位置に次々と設置しておく。
 交戦していない前衛職はMPの溜まりが非常に遅く、神官のフォローが必須だ。
 それから、壊れる壁付近の通路にも罠設置を怠ってはいけない。

「ハインド先輩、ラプソディが撃ち返してきましたっ!」
「それから、射撃を掻い潜っての侵入者数名です! ハインドさん!」
「! ダメージを受けた者は下がって治療を! 壁をしっかり使って、牽制重視で! 射撃を途切れさせないように! 下の前衛部隊も、聞こえたか!? 侵入者の対処を頼む!」
「生存優先、ダメージを受けたら下がって治療だ! 射撃は撃ちっ放しで、前衛部隊は侵入者の撃退を!」

 再度の復唱。
 相手が中央よりも前に位置していることで、どんどんポイント不利が付いていくが――

「ハインド殿。罠を予定数、仕かけ終えたでござる!」
「先輩、威力偵察と思しき侵入者も撃退済みです。相手はリスポーン時間増加を嫌って、消極的な動きに変わりました」
「ここまでは順調か……何かを狙っているのはバレバレだろうけど」

 砦を利用した防衛は完全に成功。
 あちらは侵入を試みた数人が戦闘不能。
 更にはセレーネさんの狙撃により、数名の兵士がリスポーン。
 今は既に合流済みなのだろうが、これは後々効いてくるはず。
 一方こちらは一兵も損なうことなく、戦場はそのまま膠着状態に陥った。

「狙いが読めたからといって、止まるものでもあるまい! さあ、ここからだ!」

 ユーミルの言葉に俺たちは頷き、静かに反撃の準備を整え始めた。
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