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準決勝 サーラ王国対ベリ連邦

 休憩時間が終わり、俺たちは準決勝のために再度ログインした。

 次はベリ連邦との対戦になるのだが……。


「「「ハインドー」」」

「あー、はい。別に俺が決めても構いませんけど、今回は相手が強過ぎます。前回ほど自信を持ってこうとは言えませんよ?」


 対戦順に関して、ギルマス三人が俺に意見を求めてくる。

 しかし正直、ルストの時ほど自信を持って順番を決められない。


「強いて挙げるなら、スティーリアがイグニスに似ていますね。近接系多めで、序盤から一気に攻め込むタイプです。上手く出鼻を挫ければ、勝機が生まれるかもしれません」

「なるほどぉ。後の二つは? 聞くのも野暮だけどさぁ」

「ラプソディとルーナですか? バランス編成で弱点は……特にないですね。どちらも」

「えっ、ないのかい!? あんたの分析でも?」

「予選1位と3位ですからね……しかも、どちらも予選を最後まで戦っていましたし。レートが上がり切っているのだから、もう戦う必要なんてないのにですよ?」

「相当な自信だな!」


 それだけ対応力が高く、穴のない編成を組んでいるということになる。

 一方で、アルテミスのような極端な編成の相手に負けたりもしているので……。

 要はどれだけ相手の想像を上回れるか、どれだけ突き抜けた行動を取れるかが肝だろう。

 中途半端な行動は、全て簡単に対処されると思って間違いない。


「詳しく解説しますと、ラプソディは言わずと知れたプレイヤーのみの精鋭部隊。ルーナはプレイヤー30、現地人が40ですね。実はこの二ギルドの勝率はどっこいなんで、正直どちらと当たっても厳しいです」

「試合数が多いんだっけ? ラプソディの方がさぁ」

「後は対戦カードの内容もあるだろうね。時間帯によっては、かなりレートが下の相手とばかり当たるだろうからさ」


 スピーナさん、ルージュさんの順に補足を入れてくれた。

 そんな訳で、ラプソディとルーナの実力差はほとんどないレベル。

 それからグラドの戦闘系ギルド、予選2位のソールもそうか。


「ラプソディには予選で俺たちも負けていますし、ここは――」

「くじだな! もしくはじゃんけん!」

「まあ、ぶっちゃけ全部強いんで。いっそ運に任せるのもありかと」

「よっし! じゃあじゃんけんにすっかぁ!」


 大丈夫なのか、それで……という顔を周囲の各ギルドメンバーたちがしている。

 とはいえ、前戦よりも読めない部分が多過ぎるので仕方ないだろう。

 互いに持ち得る限りの情報は交換したので、後はそれぞれがベストを尽くすだけだ。


「ユーミルさん、分かっていますね?」

「当然だ! ラプソディがどこになるかは分からんが、必ず引き当てる!」


 じゃんけんのために拳を構えるユーミルに、リィズが近付いてきて声をかける。

 そういえば、ラプソディへのリベンジはまだだったな……。

 普通に予選順位で考えれば大将だろうが、ギルマスであるレーヴの性格を踏まえるとそうとは限らない。

 どこに入ってきても不思議はない。

 ギルマス三人によるじゃんけんが終わり、決まった順番は――


「また先鋒かい。だが、一番手ってのは気分が良い! 一発かましてこようかね!」

「むう、中堅……ラプソディ来い、ラプソディ来い、ラプソディ来い!」

「予選1位と戦いたいなんて、鳥ーズは相変わらず変だなやつらだなぁ。で、今度は俺らが大将ね」


 先鋒イグニス、中堅渡り鳥・ヒナ鳥同盟、大将カクタケアとなった。

 そして始まった先鋒戦、イグニスの相手は……。


「け、獣対蛮族……」

「酷い大乱闘ですね……戦術とか戦略はどこに行った」


 スピーナさんの唖然とした表情での呟きに、俺はそんな言葉で応じた。

 画面の中には、野戦ゾーンの土煙ばかりが表示されている。

 イグニスの相手は予選5位のスティーリアだった。

 同系統のギルドがかち合った戦場は、見ての通りの有り様である。

 ユーミルも楽しそうに観戦しながらも、さすがにこれには小首を傾げた。


「本当にこれが準決勝の試合か? なあ、ハインド」

「俺に言われてもな……大体、一回戦も同じだっただろう? イグニスの戦い方は」


 とはいえ、近接偏重のギルドではこれしかないのも確かだ。

 スティーリアも全く同じ戦い方であり、獣耳と尻尾を装備したプレイヤーたちが野生的にイグニスのメンバーに噛みついていく。

 そんな純粋な力比べの結果は――


『おおおおおおっ!!』

『はあああああっ!!』


 双方の護衛、そのほとんどが戦闘不能になった戦場で、ギルマス同士が激しくぶつかり合う。

 もはや野戦ゾーンに立っている兵は数えるほどだ。

 気合の声と共に振り下ろされるルージュさんの大剣を掻い潜り、雷のような速度で鉄爪が翻る。


『っ……』

『っしゃああああ! おらぁぁぁっ!』


 大剣が轟音と共に地に落ちた。

 スティーリアのギルドマスター、武闘家のデンスが鉄爪付きの拳を突き上げて吠える。

 総指揮官のルージュさんが彼によって討ち取られ、血みどろの先鋒戦の決着がついた。

 残っていた周囲の数少ないプレイヤーたちも、彼に呼応して手を上げる者と悔しそうに地を見下ろす者たちの二つに分かたれ……。


「アホかぁ!? 予選の結果を考えれば当然だろぉ! ハインド、あいつらアホなの!? 真っ直ぐ突っ込んで玉砕しやがった!」

「……まあ、とても賢い戦い方だったとは言えませんけど。では、スピーナさんだったらどうしました? イグニスをスピーナさんが率いていたと仮定して」

「どうって、そりゃあ………………突撃しかないか、あいつらの場合。それが持ち味だもんなぁ」

「でしょう? デンスのHPもミリですし、惜しいところまでは行きましたよ」

「あ、マジだ。ってことは、残りもう一発だったのか……ルージュも悔しそうにしているし、これ以上文句を言うのは酷かぁ」


 隣のユーミルがスピーナさんの言葉に何度も頷いている。

 ユーミルはこういう分かり易い戦い、大好きだもんな。

 戻ってきたイグニスのメンバーは、ルージュさんを始め平謝りだったが……。

 スピーナさんが先んじて不満を吐き出していた効果もあり、誰も敗戦を責める者はいなかった。

 案外、スピーナさんはそれを狙ってあんなことを言ったのかもしれない。

 そして俺たち、渡り鳥・ヒナ鳥同盟が出場する中堅戦のスタート時間に。


「頼んだよ、鳥同盟!」

「いつも通りに行けば勝てる勝てる。頼むよぉ、鳥ーズ!」


 二人のギルドマスターとギルドメンバーたちの見送りを受けて、俺たちは戦場へと転移した。

 そして目の前に表示された、対戦相手の名前は……。


「よぉぉぉし、来たぁ! ハインド、リターンマッチだ! 今度こそ勝つぞ!」


 ユーミルの叫びから分かる通りに、予選1位のラプソディだった。

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