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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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ギルド戦のルールと砦の視察

「兵科を揃えて部隊を組むと能力にボーナスかー……悩ましい」
「そもそも、どういうバランスでNPCに参加してもらうか決まったのでござるか? ティオ殿下は固定として、他の兵科バランスは自由なのでござろう?」
「頼りなくてすまないが、こればっかりは何戦かしてみないことには。神官の数を必要最低限まで減らした状態が、一番強いとは思うが」
「……それは前線を維持できる前提で、ですよね? ハインドさん」
「そうそう。要は約百人が遊兵なしで機能するのが理想的ってこと。後衛が多過ぎると、前線が後退して間違いなく押し切られるからな。大軍ってほどじゃないんだし、完璧は無理でも、ある程度までは理想バランスに近付けられるはず」

 ギルド戦、予選開始前夜。
 俺たちはギルドホームの談話室で、部隊編成に関する相談中だ。
 短時間でログアウト予定だが、本番用の装備を整えたメンバー全員がこの場に揃っている。

「神官が可能な限り少ないほどいい、というハインド先輩のお話は分かりましたけど……他の兵科、職業はどんなバランスで組むおつもりなのですか?」
「そうだなぁ……折角だし、現地で下見をしながら考えない?」
「下見……今日開放されたという、ギルド戦で使用される砦ですね?」

 サイネリアちゃんの言葉に頷く。
 すると、それに対して即座に二人のメンバーが同時に立ち上がった。

「うむ、行こう! 正直、ここで何か話していても全くイメージが湧かん!」
「行きましょう! そこでお話を聞けば、もっとちゃんと理解できるかもしれません!」

 そして似たような言葉を放つ騎士コンビ。
 いつも通りテーブルにつんのめって話を聞いていた――どこから持ち込んだ、その枕?
 テーブルに枕を置き、その上で寛いでいたシエスタちゃんが二人の言葉に声を上げる。

「ええー、行くのー?」
「行こうよ、シーちゃん! 行かないと何も分からないよ!」
「でも、セレーネ先輩も行きたくないって」
「――へ?」

 急に話に巻き込まれたセレーネさんが呆気に取られる。
 慌てて手と顔を横に振って否定しているが……大丈夫ですよ、みんな分かってます。

「シー、セレーネ先輩が困ってるでしょ!」
「おおう、サイがご立腹……分かりましたよ、行きますよ。ところで先輩、移動ってどうやるんです?」
「闘技大会と同じ。街に帝国魔導士がいるから、その人たちに話しかけて転移」
「あー、懐かしいですね。最初の転移の時には、激しく酔いましたよ。リコが」
「うん、シーちゃん不参加だもんね……闘技大会」
「あの転移の演出、不満続出ですぐになくなったでござるからなぁ。拙者は嫌いじゃなかったのでござるが」

 そんな話をしながら、俺たちはギルドホームを出た。
 ティオ殿下は現在休養中で、ギルド戦――もとい、国家間演習に体調を合わせるとのこと。
 応援NPCは全員同じ状態だそうで、公式からも育成期間は昨日までだと告知されていた。



 転移させられた場所は、自陣となる砦の内部のようだった。
 指揮所らしきやや広い部屋で、メンバーがキョロキョロと周囲を見回す。
 そんな中で、セレーネさんがとある場所を示しながら俺に声をかけた。

「ハインド君、まずは旗の確認をしない? あっちだと思うんだけど」
「ああ、そうですね。塔の上という話ですから、合っていると思います」
「旗? ハインド、何のことだ?」

 指揮所の奥に見えた階段を上りながら、真後ろをついてくるユーミルが訊いてくる。
 そのくらいは確認しておいてほしいものだが……まぁ、いいか。いつものことだ。

「ギルド戦の勝利条件は三つあるんだよ。一つが総指揮官を倒すこと。もう一つが時間切れによる判定。そして三つ目が――これ」

 小さな塔の形状になっている頂上には、風になびくサーラの旗が立てられていた。
 少し狭いが、塔にはメンバー全員が上れるくらいのスペースがある。

「この旗を敵に奪い取られると、その時点で敗北。だから旗と総指揮官、この二つを守りつつ戦うのがギルド戦の基本的なルールだ」
「旗を弓で射落としたり、魔法で撃ったりしたら駄目なんですか?」

 リコリスちゃんが弓と魔法のジェスチャーを交えながら質問してくる。
 その愛らしい仕草に思わず有効! と言ってしまいたくなるが……。

「遠距離攻撃は無効だ。何か飛ばして命中させても、すり抜けると思うよ」
「そうですか……じゃあ、直接乗り込んで奪うしかないんですね?」
「そうなるね。旗の位置は固定、総指揮官は一戦ごとに自由に変更可能。ただし応援NPC以外のNPCを総指揮官に指名することはできない」
「つまり、私たちの場合はティオ殿下なら総指揮官にえることが可能ということですね?」

 サイネリアちゃんの言葉は適切だ。
 だから一人ギルドでNPC軍団を率いる、などという極端なことをしていた場合……。
 総指揮官はそのプレイヤーか応援NPCのどちらかということで確定する。

「時間切れによる判定は、撃破された回数とか総合スコアとか色々あるんだけど……基本的には自分たちよりも相手を多い回数倒しつつ、敵陣深くまで押し込んだ方が優勢勝ちになる。こっから先の説明はトビ、頼む」
「えっ、急にそんな!? 何故に!?」
「だって、シエスタちゃんがめっちゃ眠そうな顔してるからさ。俺の説明に飽きてるんじゃないかと」
「先輩の声の安心感、そしてお布団のごとき背中の魔力……抗えないー……」
「抗えないー、ではありません! ハインドさんに寄りかかって寝ようとしないでくださいっ!」

 リィズが険しい表情でシエスタちゃんを俺から引き離す。
 それを見たトビは納得したようなしていないような顔ながらも、説明を引き継いでくれた。

「あー、ええと……あっ、そうだ。ハインド殿が多い回数倒す、という表現を使ったでござろう?」
「使いましたね! どういう意味なんです?」
「ギルド戦では、総指揮官以外は倒されても一定時間でリスポーン可能なのでござるよ。……ハインド殿、どうしてユーミル殿は目を輝かせているのでござる? ここまででそんな表情になる要素、何かあったでござるか?」
「放っておけ。どうせ何度でも突撃できる! とかアホなことを考えているだけだから」
「惜しい! 正解は後顧こうこうれいなく突撃できる、だ!」
「それ、同じことではござらんか? 突撃も時には有効でござろうが、何度も何度も倒されていると……復活時間がその分だけ伸びるでござるよ?」
「えっ?」

 更に言うなら、リスポーン地点は自陣砦の詰め所という場所である。
 指揮所に戻った俺たちは、砦内を移動してその詰め所まで行ってみることにした。

「むう、指揮所と塔まで結構な距離があるな。これでは攻め込まれている時に急行できん……」
「もしかして、相手陣内に行く場合も少し遠いですか?」
「然り、でござるよ。リスポーンは可能でござるが、ひとたび戦闘不能になればそれだけ状況的に不利を背負うでござるなぁ」
「ぶつかり合いで負けていると、リスポーン時間と位置取りの問題で段々と押し込まれていく訳ですか」
「その通り。それから、判定では防御よりも攻撃のスコアが優遇されるそうでござる。故に、自陣に引きこもって迎撃・完封という戦法は成立し難いと」
「ああ、だから敵陣地に押し込んだ方が……とハインド先輩が仰ったのですね」

 質問者はユーミル・リコリスちゃん・サイネリアちゃんの三人。
 ルールを把握しているだろうセレーネさんとリィズは静かなものだ。
 シエスタちゃんは別の意味で静かだが。解説役がトビに代わって、少しは目が覚めたか?
 サイネリアちゃんもおそらくルールは把握しているのだろうが、確認とリコリスちゃん……それからユーミルのために質問してくれている感じだな、これは。
 俺はトビの解説の補足にと、そこで少し口を挟む。

「ただ、敵を一旦自陣に引き込んで殲滅――相手のリスポーン時間を利用して一気に反攻、なんて戦法も考えられる。どんな作戦でもルール上、最終的には攻める必要があるだろうけど、ただ攻めれば良いという話でもないはずだ」
「やっぱりハインド殿が説明した方が早くないでござるか? ハインド殿の言の通り、自陣砦を用いた防御も使いようでござるよ。従ってユーミル殿、考えなしの突撃はくれぐれも自重なされよ」
「なるほど……分かった、きちんと機を見て突撃するとしよう。しかし、これって観客の目も考えたシステムではないのか? この絶対に攻撃する必要があるという構造は」
「どういう意味でござる?」
「ほら、予選はともかく決勝トーナメントに入った後は……」
「あ、ああー! そうか、そうでござるな。確かに遠距離から慎重に、ぺちぺちやって終わりというのは……見ている側は何も面白くないということに」
「ユーミルの意見、俺も正しいと思うぜ。何かしら動きがあって、それから決着に向かうようなシステムになっているのはそういう面もあるだろう」

 仮にどちらも消極的だった場合は……いや、ないか。
 そういったギルドは早々に予選でレートを落として敗退してしまうだろう。
 それくらい、攻撃スコアが優位に設定されていたはず。
 自陣砦を出た後は、向かい合う砦の間にある平地を視察。
 続けて相手の砦に攻め込み易い方向などを検討しながら移動していく。
 一通りの視察を終えた俺たちは、改めて作戦を練るべくギルドホームに――

「……ん? トビ、ちょっといいか?」
「何でござるか?」
「帰る前に、ここで例のあれを使ってくれないか? なんかさ、あの辺の石壁に違和感があるんだよ。周りから少し色が浮いているというか」
「ほう……!」

 ……細かな部分までチェックを入れてから、ギルドホームへと戻った。
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