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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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ギルド戦・予選期間開始

 いよいよギルド戦開始の一時間前になると、各国で軍事パレードが一斉に行われる。
 俺たちは事前に良い場所の宿を確保し、二階の部屋の窓からその様子を眺めていた。
 今はその先頭が、ようやく近くを通ろうとしている段階である。

「それにしても何なんだ? あの金色の輿こしは……日光が物凄い勢いで反射しているんだが。目が痛いくらいだな」
「一人しかいないと思いますけどね。あんなものに乗るような人は……」
「まぁ、パトラ女王でござるよなぁ……」
「軍事演習に出ない癖に、相変わらず一番目立っているではないか!」
「う、うん。そしてカクタケアと親衛隊が女王様と一緒に大移動しているね……」

 屋根付きの金の輿に乗り、パトラ女王は女官に大団扇で左右から扇がれながら優雅に進んで行く。
 その周囲で高速移動しているプレイヤーたちは……まぁ、いつも通りといえばいつも通りだな。
 イベント仕様ということで、ほとんどフルメンバーでスクショを撮りまくっているが。
 女王はそのまま俺たちの前を横切り――!?

「あの、女王様が思いっ切りこちらを凝視していませんか!?」
「気のせい……じゃ、ないね。リコの言う通りかも」
「あ、笑った。圧が凄いです、圧が」

 恐らくシエスタちゃんが感じ取ったものは正しい。
 要は闘技大会と同じ……思うに、ある程度女王の好感度が高いギルドは等しくあの笑顔を向けられているのではないだろうか。
 サーラのために勝ってこいと。いては妾のために勝ってこいと。

「まぁ、今回の国家間演習は国家の浮沈がかかっているでござるから。さればこそ、こうやって大々的に戦士団を送り出すのでござろうが」
「分かり易く国力を示す好機だからな。上位になれれば、の話だが」
「改めて聞くと、とても大きなイベントだよね。影響範囲が広いというか」
「終わった後も順位による効果が残りますからね。それが次回の同種のイベントまでずっとなのか、それとも短期間なのかは分かりませんが」

 常に魔物という外敵がいる世界なので、兵が強ければそれだけ国が安定する。
 治安が良ければ人も物も活発に動くと。
 イベント説明にあった各種特典を生み出す動きが、現地人側にもちゃんと発生するという訳だ。

「しかし、これだけ派手だと他の国のパレードの様子も気になるな。国によって違いがあるんだろうけど、どんな感じなんだろうな?」
「グラド、ベリ辺りの軍事強国はどんな様子か容易に見当がつくのでござるが……マールとルストは全く想像できないでござるな」
「確かに気になるが、それよりも今は目の前のパレードだ! 戦士団が来たぞ!」

 ユーミルの声に窓に近付き、大通りに視線を戻す。
 打ち鳴らされる楽器を前後に、勇ましい顔で戦士団が行進してきた。
 まずはミレス団長、戦士長アンモス、魔導隊長アレーナ、弓兵隊長サブルムなどなど……。
 次々と部隊が通り過ぎていき、その度に見物している民衆が沸いた。
 そんな一団を見て何故か唸っていたユーミルが、ややあって手の平に拳をポンと落とした。

「何というかこれは……セッちゃんカラーだな、完全に! 明らかに昔の戦士団とは装備が違うのに、不思議な統一感がある!」
「まぁなぁ……ほとんどセレーネさん作になっているからな、戦士団の装備。そりゃあ統一感も出る。ちゃんと元の砂漠サーラらしい雰囲気を残した装備なのは、さすがだけど。全装備にフクロウを模した金色の装飾が入っていたりとか」
「な、何かちょっと恥ずかしいね。でも、そういう意味では三分の一はハインド君の防具だよね? 裁縫係の装備だって、決して少なくはないんだから」
「あー、確かに。何か見覚えのあるものばっかりですよね。戦士団の装備」

 他の国では多数のプレイヤーが装備を提供することもあり、国軍兵士の見た目はバラバラになりやすいそうだ。
 ちなみにそんな各国兵士の砦戦での見分け方だが、それぞれ色が付いたエフェクトが体にかかる。
 グラド帝国が白、ベリ連邦が青、ルスト王国が緑、マール共和国が赤、そしてサーラ王国が黄色と。
 これにより、敵味方を誤認する可能性はグッと下がるはずだ。
 プレイヤーたちも同様で、砦戦ではこの色付きエフェクトを頼りに敵味方の判別を一瞬で行わなければならない。

 そしてここまでのパレードで最も民衆が沸いたのは、当然ながら女王陛下の登場時である。
 ピークは早々に過ぎ去り、後はゆっくりとパレードが終わりに向かうかと思われたその時……。

「「「ティオ殿下ーっ!」」」
「「「聖女様ーっ!」」」

 パレードのやや後方、護衛兵と共にラクダに乗って登場したティオ殿下が大きな声援を受けている。

「おおーっ! あれが育成期間ギリギリに完成したという装備か! 綺麗だ!」
「ああ、そういえばユーミルとリコリスちゃんは見ていないんだっけ? センス良いよな、ティオ殿下」
「本当に綺麗ですねー、あの衣装……」

 彼女が身に纏っているのは銀の意匠が施された、自身でデザインした神官服である。
 女王の金に対抗しての銀なのか、それとも神官らしく邪気を払うために銀を選択したのかは分からないが……。
 その姿はとても清廉で美しく、見る者に凛とした印象を与えている。
 パトラ女王に劣らぬ民衆の声援を受けながら、ティオ殿下が見事にパレードの終幕を飾った。



 その後は戦士団が鬨の声を上げたり、カクタケアが女王を追いかけたまま戻ってこなかったりと色々あったが、俺たちは闘技大会と同じように帝国魔導士を通じて転移。
 対戦相手のマッチングが行われ……決定すると、転移空間から外へ。
 何度か下見を行い、構造を把握した砦の内部に到着。
 駐屯所に八人のプレイヤーと八十四人の現地人が一斉に現れた。
 そしていよいよ初戦が始まる。

「おおっ、凄い人数だな!」
「感心している暇はないぞ。ユーミル、部隊員を連れて配置についてくれ!」
「そうだったな! 時間制限があるのだった!」
「初戦はお前が一番やりたかったことができるからな。全力で突っ走れ!」
「うむ! 行くぞ、リコリス!」
「はいっ!」

 ユーミルが石床ならではの硬質な音を鳴らしながら駆けて行く。
 砦に出現した瞬間から、戦闘開始までの猶予は僅かだ。
 その間に任命や配置、作戦伝達などを終えておかなければならない。
 プレイヤーたちは事前に作戦を練って周知しておけるが、応援NPC以外のNPCにはこのタイミングで指示を出す必要がある。

「セレーネさん! サイネリアちゃん! あいつらを上手いこと援護してやってくれ!」
「うん、分かっているよ」
「了解です、ハインド先輩! ユーミル先輩に続きます!」

 特に迎撃にあたる弓兵部隊……ここの展開が遅いと、一気に敵に取り付かれる可能性がある。
 とはいえこれは初戦。
 そして今回のルール、攻め側が圧倒的に有利という環境。
 考えることは相手も同じなのではないだろうか? すなわち……。

「まずは全軍突撃だぁぁぁっ!! 何も考えずに進め、進めぇぇぇ!!」
「「「おおおーっ!!」」」

 ユーミルが嬉しそうに、実に嬉しそうに砦正面門が開け放たれた瞬間、先頭に立って突撃の号令をかけた。
 今のようなセオリーが分かっていない段階ほど、意志を統一し易い初手が大事だ。
 やはり相手も同じことを考えていたようで、砦の門が開放された直後、野戦エリアとなる平地部分に大部隊が飛び出してきた。
 さて、最初のぶつかり合いはどうなるかな……?
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