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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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図書館とイベント情報

 俺たちの町の図書館は、他の地域に比べて規模が大きく蔵書量も多い。
 広いフロアには常に人がおり、常識的な範囲であれば会話をしても咎められることはない。
 予想通り少し高めの室温にされている館内を三人で移動していると、干物のような状態で机にしがみつく友人の姿を発見した。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」
「おい、秀平……」
「あ゛あ゛……あ、わっち? それに未祐っちと理世ちゃん……」
「これは酷いな、亘。秀平のやつ、ゾンビみたいだぞ?」
「終わらねえ……課題が終わらねえんだよぉぉぉぉ……」
「しっかりしろよ。ほら、スポーツドリンク買ってきたぞ」
「ありがとぉぉぉ……ああ、生き返るぅぅぅ……」

 基礎が弱い分、調べながら進める箇所が多くて大変なんだろうな……。
 秀平が使っている机の周囲には、図書館のものと思しき参考書の数々が。
 俺がスポーツドリンクを渡すと、秀平が勢いよくそれを飲み始める。
 館内は飲み物は可、食べ物はNGだ。

「お前、ちょっとそれ飲んで休んでいろよ。理世、この中で使いやすい参考書ってどれ?」
「これとこれは基礎から分かり易く記述してあります。こちらの二つは踏み込んだ内容が多いので、今の秀平さんには必要ないかと」
「了解。てな訳で秀平、返してきてもいいか?」
「お願ーい。参考書よりもわっちだなぁ、やっぱ……」
「褒め言葉なのか、それは? 未祐も一緒に来てくれよ。頼みたいことがある」
「む?」

 疲労困憊の秀平を残し、俺たちは書庫へと向かった。
 参考書を返すついでに、理世の調べ物の資料を揃えてしまおう。



「兄さん、一段目の右端の――」
「これか? 了解。よっと……未祐、頼む」
「うむ……ぬおっ! 重いな!」

 既に塞がっている手と逆の手で、棚から引き抜いた重い本を未祐に渡す。
 無事に受け取ってくれた未祐だが、そちらも俺と同じように既にいくつかの本を両手で持って移動している。

「――理世が調べ物って言う時は、ネットにはない専門知識……要はこういう学術書とか図鑑の類を必要としている時が多いんだよ。悪いな、持つのを手伝ってもらって。俺だけじゃ持ち切れないと思って」
「ああ、別に構わないぞ。しかしこれは……鈍器だな、まるで……」
「カバーがしっかりしていて重いよな。ついでに中の紙までしっかりしている上に、分厚いから」
「カラー写真掲載、と書いてあるものが特に重いのだが?」
「ああ、それ図鑑か百科事典のどっちかだろ? 重いよな」

 これをしている時にいつも感じるのは、司書さんだとか本屋の店員さんだとかは、想像以上に肉体労働だということ。
 段々と本を使った筋トレでもしている気分になってくる。

「お二人とも、ありがとうございます。電子化されていない資料、というのは結構ありまして」
「ああ、分かってるよ。しかしこれ以上は持てないから、ひとまず秀平のところに戻ろう」

 そうして元の場所に戻ると、だらけていた秀平が急に跳ね起きた。
 不審に思いつつ視線を辿ってみると、どうも俺たちが持った本を見て怯えているらしい。

「なっ、何その難しそうな本の山は!? 俺に何を勉強させる気!?」

 動揺のあまり少し大きな声を出した秀平の誤解を解くまで、それから少しの時間を費やした。



「うーん、物理の勉強を投擲に活かせないかな? と思ったけどそんなことはなかった」
「無理矢理にでもゲーム内で応用してやろうっていう根性は嫌いじゃないがな。投擲といえばフィリアちゃんが抜群に上手かったけど、何か言っていたか? ほら、大型手裏剣の時に少し話していただろう?」
「色々教えてくれたけど、最終的にはとにかく数をこなせって結論だったと思う」
「要は体で覚えろということだな? そう聞くと、やはりアルベルトの娘なのだと改めて感じるな……」

 腕組みをした未祐が二度頷いてから、アイスティーを口にする。
 そしてチョコレートがコーティングされたドーナツに齧り付いた。

「改めて、今日はありがとうね三人とも。もう夕方だけど、今食べちゃって大丈夫? わっち、夕飯は?」

 三人体制で秀平の課題を手伝った結果、全て終わりはしなかったものの全体の九割ほどまで進めることができた。
 後は独力でも仕上げることができるだろう。
 そのお礼にということで、秀平の提案によりドーナツ屋で少し遅めのおやつをご馳走になっている。
 席順はテーブル席で野郎二人が横並び、対面に女子二人だ。
 これがこの四人の時は一番揉めない席順なので、ほぼ固定である。
 俺は時計を確認してから、秀平の問いかけに答えた。

「少し時間をずらして用意するから、問題ないぞ。ごちそうさん、秀平」
「そっかそっか。いやー、それにしてもイベントに間に合いそうで良かった! 闘技大会とほとんど同じ仕様だから、時間が取れないと厳しいし」
「む、その口振りだと発表されたのか? ギルド戦の概要!」
「あれ、未祐っち知らなかった? もしかして、みんなも? ちょい待ち、確かバッグにタブレットが……あったあった。確かブックマークが……ほい、どうぞ」

 秀平がタブレット端末を取り出し、公式サイトのページを表示して未祐に渡す。
 それを三人で回し読みしながら、時折ドーナツを口に運ぶ。

「――闘技大会と特に違うのは、レートの上下幅かな? 一戦辺りの重要度、それから対戦時間の長さを考慮して差が出易いように設定されるそうだよ。レートに差があっても、負けるとそれなりに持って行かれる感じになると思う」
「そりゃあ団体戦なんだから、闘技大会のタッグ戦と比べれば遥かに時間はかかるわな。そのレート制の予選の成績を元に各国代表三ギルドが決定、国ごとのチーム戦で決勝トーナメント……枠はたったの三つかよ。狭き門だなぁ」
「定番のイベントポイントと報酬はあるから、もし予選で脱落しても無駄にはならないけどね」

 それが終わると決勝トーナメントとなっている。
 どうやら今回のイベントは闘技大会よりも予選期間が長く、決勝トーナメントは一日で終わる構成のようだ。

「案ずるな、亘! 要は勝てばいいのだ、勝てば! ところで秀平、同一国のギルド同士はマッチし難いとあるが……」
「ああ、それ? よっぽど相手が見つからないような深夜だけだと思うよ、同一国同士のマッチングなんて。そんで、国単位の総合成績で決勝トーナメントの試合数が変わるんだって。TBの国は五つ、つまり五チームによるトーナメント戦だから……」
「下位二チームの試合数が増える形でしょうか?」
「そうそう、理世ちゃんさすが。逆に勝率の高いギルドを多く抱えている国は、試合数が減るね」

 なるほど、大体分かった。
 確かにこれはある程度の試合数をこなさないと、上位に残ることは難しいだろう。

「で、また賭けがあるのか……」

 イベントページの最後には、闘技大会に引き続き勝敗予想による賭けの開催が表記されていた。
 前回もこれの存在のおかげで、観客に回ったプレイヤーが最後まで盛り上がっていたから当然か。

「今回の賭けは熱いよ! 一位から五位までの順位をぴしゃりと当てれば、高倍率! 億万長者! 国だけじゃなくギルド単位の成績予想、果ては個人単位の成績予想まであって今から期待大!」
「楽しそうだな、秀平」
「もちろんだぜ! わっちはどうなのさ?」
「そりゃあ楽しみにしているよ。そこの今にも立ち上がって、どこかに駆け出しそうなやつほどじゃないけども」

 俺の言葉でようやく気が付いたのか、目を輝かせてそわそわする未祐に秀平が目を止める。
 隣に座る理世は素知らぬ顔で、静かにミルクティのカップを傾けていた。

「あの、未祐っち? ちなみにだけど、今回は報酬に勇者のオーラはないからね? おーい」
「むふーっ! 楽しみ過ぎて、居ても立っても居られんぞ! 全員、早速帰って準備を――」
「本当に立つなよ。座れ、落ち着け。イベントはまだ先だ。ドーナツ食え」
「もごっ!?」

 とりあえず俺は鼻息が荒くなった未祐の口めがけ、ドーナツをシュート。
 もごもごと口を動かしながら着席、静かになる未祐。
 それを横目に、俺は再度タブレットに表示されたイベント概要へと視線を落とした。
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