強欲な世界-5
黄金で彩られた道を歩くこと15分程度。僕たちは"高台"に出た。
思わず唖然。呆然。
ここは地下だ。なのになんだここは。
地上と同じ、いや、地上の上位互換とも言える世界がそこには広がっていた。
家、マンション、ホテル。商店や入り組んだ路地。パチンコ屋や噴水などのオブジェクトだって。その全てがあらゆる宝石で出来ていることを除いては、ただの街だった。
少しの光があらゆる宝石に反射して街全体が輝いて見える。電力は少量で済みそうだが、目が疲れそうな街.....
クロとアオはやはり催眠が抜けていないようだね。驚きや感動と共に"欲しい"という欲求が前面に出てしまっている。文字通り、目を奪われている。
軽く頭を叩くもとい撫でると我に返ってくれるんだけどなぁ。
僕がこの国で為さなければならないこと。それは王族の糾弾と子ども達の解放だ。
強制力の働いている国を一時的に無法地帯へと変える。
ただでさえ金品に目がない人間達、そこに無法無秩序を与えれば起こるのは暴動だ。だけどそれで良い。
大人達に根強くかかった催眠はもうどうにもならない。なら一度リセットしてしまおう。
この国を滅ぼす。
そして子ども達を救う。
無理難題だ。どうすれば良いのか、考えてはいるが全く浮かんでこない。
だからとりあえず無法地帯に変えてしまおう、話はそれからだ。
街の広さはよくわからないが最奥が見えない程には高い。高台から地面までも中々に高い。普通に飛び降りたら全身が砕けて死んでしまうほどには高いだろう。
上みたいな塀はなく、直下からすぐに街だ。小さく見える人間達は蟻が蠢くような気味悪さを醸し出している。
ここにいる人達が全員敵であって欲しくはないな。
敵だろうけど。
敵だった。
空間移動で下に降りている最中に目視で発見された。
街中の人間にではない、この高台を成す壁側が監視塔のようになっていた。
眼下は壁が沿っていてよくわからなかったが、降りるために落下途中、姿を現した時に発見された。
そしてベタな警報である。
街中の人間が自分の家、店、宿舎へと戻る。
僕は二人の少女を小脇に抱えつつ屋根を飛び移動する。軽くて本当によかった。
トントンと飛びつつ一際大きい屋根の上で身を低くし一旦止まる。
点と点を空間を無視して移動する空間移動は、切り替え時にアニメーションが一切ないスライドショーのように視界が動く。
慣れないと物凄く酔うのだ。現にアオとクロがフラフラし、僕でさえ立て続けの移動に頭が痛くなってきた。
移動経路を見られないため移動後の僕らを見つけることは至難。
だが今は状況が違っていたことを忘れていた。
街外の壁には、あたかも街を監視するために作られたような部屋がある。
そこから常に位置情報が漏れていた。