↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

Episode4、二度目の挫折と不公平。

 人生で二度目となる、大きな挫折だった。


 そう簡単に立ち直れるものではなかった。


 積み重ねてきた実績も、周囲から寄せられていた期待も、たった一度の失敗で崩れ去ってしまった。


 信用を築くには長い年月が必要だというのに、失うのは驚くほど呆気ない。


 それでも、クイは諦めなかった。


 失った信用を取り戻したかった。


 そして、いつか気兼ねなく笑い合える友人が欲しかった。


 そのささやかな願いを叶えるため、ひたすら依頼を引き受け続けた。


 迷宮に潜り、魔物を討伐し、依頼人を無事に送り届ける。


 一つ仕事を終えれば、また次の仕事へ。


 どれほど疲れていようと、頼られれば断らなかった。


 実績を積み重ねていけば、いつか周囲の見る目も変わるはずだ。


 そう信じていた。


 しかし――。


 現実は、そう甘くなかった。


 働けば働くほど、なぜか悪評ばかりが増えていく。


 しかも、そのほとんどが身に覚えのないものだった。


 事実とは異なる噂が、いつの間にか尾ひれをつけて広まっていく。


 弁明しようにも、誰が言い始めたのかさえ分からない。


 気付けば、かつて自分を称賛していた者たちまで、距離を置くようになっていた。


 それでも、クイは依頼を受け続けた。


 いつか、誰かが自分を正しく見てくれると信じて。


 ーーーーー


 ――そして、現在。


(……結局、今日も誰も来なかったか)


 目の前に置かれた酒杯を、ぼんやりと眺める。


 気付けば、すっかり酒に手をつけてしまっていた。


 普段なら、仕事があるかもしれないと思って控えているのだが、今日ばかりはどうにも我慢できなかった。


 とにかく飲みたい。


 飲んで、嫌なことを全部忘れてしまいたい。


 そう思っていた、その時だった。


「しっかし、【転生勇者】様ってのはすげぇよなぁ。魔王を倒して世界が平和になったってのに、今でも身を粉にして働いてるらしいぜ」


「ははっ! 俺だったら絶対無理だね。魔王を倒した時点で、一生遊んで暮らすわ!」


「違いねぇ!」


 少し離れた席から、陽気な笑い声が聞こえてきた。


 何とも楽しそうな馬鹿話だ。


(……また勇者の話かよ)


 俺は酒杯を傾け、残っていた酒を一気に喉へ流し込んだ。


 喉が焼けるように熱い。


(何が【転生勇者】だ。馬鹿馬鹿しい……)


 魔王を討伐した英雄。


 世界を救った救世主。


 どこへ行っても、耳にするのはそんな話ばかりだ。


(……ちーと、だっけ?)


 確か、異世界から来た奴らが持っている、規格外の能力のことをそう呼ぶらしい。


(そんなもんがあるなら、魔王ぐらい倒せて当然だろ……)


 いや、分かっている。


 魔王を倒したことが、とんでもない偉業だということぐらい。


 それでも、どうしても素直に称賛する気にはなれなかった。


(……くそ)


 酒杯を握る手に、思わず力が入る。


(俺だって……)


 俺だって、強い。


 死ぬほど努力して、ここまで来た。


 何度も死にかけて、それでも生き延びて、レベル95まで上り詰めたんだ。


 それなのに。


(……何なんだよ、この扱いの差は)


 片や、誰もが憧れる世界の英雄。


 片や、酒場の隅で誰からも相手にされない嫌われ者。


 ……まったく。


 世の中、不公平にもほどがある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。