Grotesque in the Rage《グロテスク・イン・ザ・レイジ》
Grotesque in the Rage
作詞・作曲 Reiji
編曲 Jesus Pain
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All thing I see is falling down
No pray, no love, no tomorrow in my head
Crying voice is drowning under dirty sky
Broken angel laughing with the knife in my dream
壊せ! [shout]
殺せ! [shout]
Grotesque in the Rage
MAD in my mind
売女の腸で首を飾れ!
裂けた子宮に黒い花を咲かせろ!
Burning my brain, biting your fake salvation
Red rain falling, falling, falling into hell
壊せ! [shout]
殺せ! [shout]
Grotesque in the Rage
MAD in my mind
聖者の脳髄で祈りを汚せ!
腐った神の眼球で夜明けを潰せ!
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「ぐろてすく……?」
「まっど……?」
「何か分からぬ! だが恐ろしい響きだ!」
英語部分は、魔族たちにはほとんど意味が通じていないようだった。まあ俺の英語も大概だからそれはいい。それでも、音と狂気だけは確かに伝わっている。
シンジのドラムが腹の底を抉り、シンイチの低音が床を震わせ、俺のギターが叫びのように歪む。その上に、ハヤトの声が突き刺さった。
【壊せぇぇえ!!!!】
その瞬間、魔族たちの目が変わった。
「壊せ……!? 何をだ!?」
「目の前の恐怖を、だろう!」
ハヤトがさらに吠える。
【殺せぇぇえ!!!!】
「うおおおおおおお! やってやる……! やってやるぞおおおおお!」
「人間どもに、我らの牙を見せてやる!」
「もう逃げぬ! もう下がらぬ!」
ホール全体の空気が、一瞬で沸騰した。
さっきまで『首吊惨歌』で胸を締めつけられていた魔族たちが、今は胸の奥から獣性を引きずり出している。拳を握り、爪を立て、床を踏み鳴らす音がドラムの裏拍に重なる。
正直、怖い。
盛り上がっているのは分かる。だが、数千の魔族が一斉に「やってやる」と咆哮する光景は、ライブの成功などという言葉では片付けられない。
【売女の腸で首を飾れ!】
ハヤトが歌った瞬間、何人かの魔族が一瞬だけ固まった。
「はらわたで……首を!? そ、そこまではさすがに……」
「だが、覚悟は伝わった! それくらいの勢いで戦えということ!」
「四候の覚悟、しかと受け取った!」
受け取らないでほしい。本当にただの勢い任せの歌詞なんだ。
【聖者の脳髄で祈りを汚せ!】
「祈りを汚せええええ!」
「我らはまだ戦える! 人間など恐るるに足りぬ!」
ロザリアが拳を高く掲げた。
「前線へ向かう者たちよ! 黒き冥府の四候の咆哮を胸に刻め!」
魔族たちの雄叫びが、黒いホールを揺るがした。
やはりこの曲は正解だった——効果がありすぎるくらいに。
獣人の体格が二回り近く膨れ上がり、虫翼の魔族の翅に黒い光沢が走り、悪魔系の爪が長く鋭くなる。ただの兵士だった者たちが、次々と戦場の主役へと変わっていく。
「レイジ!」
シンジがドラムを叩きながら叫ぶ。
「これ、また何かヤバいこと起きてるぞ!」
「見えてる! 止めたらもっとヤバくなりそうだから続ける!」
「了解!」
ザントの姿も変わっていた。乾いた灰色の肌に深い皺が刻まれ、細く萎びたような印象だった老宰相の体が、今は違う。
肌には艶と血色が戻り、頰の窪みはふっくらとして若々しく、目には鋭い光が宿っている。
背筋は伸び、肩幅も広がり、黒い宰相服の下で胸板と腕の筋肉が逞しく盛り上がっていた。
「小生まで……この身体、まるで若き日の戦場に戻ったようだ!」
そして魔王さん。
疲労の影が完全に消え、背筋が伸び、黒いドレスの奥から圧倒的な威圧感が滲み出ている。
近づいてはいけない“何か”が、そこに人の形を取っていた。
ああ、これが本当の魔王なんだ。
ハヤトが最後の歌詞を叩きつける。
【腐った神の眼球で夜明けを潰せ!】
「夜明けを潰せえええ!!」
「我らの夜を守れ!!」
「我らは神をも恐れぬ!!」
曲が終わると、一瞬の沈黙の後、爆発的な咆哮が巻き起こった。
「うおぉぉおおおおお!!」
「前線へ!」
「人間どもを押し返せ!」
ロザリアが剣を高く掲げる。
「前線部隊、出陣!」
魔族たちが雪崩のように動き出した。さっきまでの不安など微塵も感じさせない、異様なほどの力強さで。
魔王さんが俺たちへ駆け寄ってきた。
さっきまでとは違う、どこか超然とした気配をまとったまま、それでも口調だけはいつもの丁寧なものに戻っている。
「四候の皆様。これほどの力を授けていただき、感謝いたします」
「いや、授けたつもりはないんですけど」
「ご謙遜を」
ザントが若返った顔で、深く頷いた。
俺たちはただ演奏しただけなのだが……。
俺たちはホールに残った。前線へ行くわけではない。いくら見た目が物騒でも、中身はただの四十代バンドマンだ。戦場へ出ても邪魔になるだけだろう。
その日の夕暮れ。遠くで音がした気がした。
城の外。さらに遠い国境付近。実際に聞こえるはずはないのに、どこかで戦場の響きが鳴っているような気がした。シンジは落ち着かない様子でスティックを回し、ハヤトは何度も水を飲み、シンイチは黙ってベースの弦を拭いていた。
俺もギターを置けなかった。
時間がどれくらい経ったのか分からない。
やがて、ホールの奥の扉が勢いよく開いた。
ロザリアだった。
鎧には傷があり、髪も少し乱れている。だが、顔は笑っていた。
「魔王様!」
ロザリアは片膝をつき、声を張った。
「魔王様! 前線、押し返しました! 人間側は後退、国境付近の陣地を奪還しています!」
残っていた魔族たちが歓声を上げた。
魔王さんは静かに目を閉じ、小さく頷いた。
「よく、戻ったな」
ロザリアは背筋を伸ばしたまま、続けて報告した。
「それと、手土産がございます」
魔族たちが道を空ける。
数人の兵士が、縛られた人間の女性を連れて入ってきた。
上等な鎧、血と泥に汚れた金髪。若く、しかしまだ折れていない光が目にある。
彼女は黒い床の上に転がされた。
「勇者と呼ばれていた者です」
ハヤトが小さく、呆然と呟いた。
「……なあ、レイジ」
「ん?」
「俺たち……完全に悪役側じゃね?」




