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お飾り妻を溺愛する事情  作者: シャルru


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5 陽編 屋敷中が見守ってる

ギルフォード伯爵家の侍女たちは

この数か月で活気づいた屋敷に、働き甲斐を感じ始めていた。


以前は毎日間違いなく繰り返されるリズムのような生活が狂うことなく、流れるように気遣うこと。が

仕事の核だったのだ。


しかし今はどうだろう。


その都度、主人の目線に気を配り、思いを量る。

以前と全く違う旦那様は特にわかりやすい。

今までと変わらずお仕事は多忙なようだが、

帰宅されたらまず

奥様を探しているように見える。

以前なら人の顔などあまり見ることもなかった。


先日は

すこし遅れて広間に出迎えに来られた奥様を見て、

明らかにホッとされた様子が見受けられた。


そして、何よりもあんなに嫌がっていた

“誰かと食事をとる事”も、今では当たり前だし、

あれほど静かな食事を希望されていたのに、


今では「次は?」と会話をご所望されている。

奥様を待たせすぎないように、少し早く帰ってくるようになったのはもちろんのことだが、


さらに、

昨夜は奥様が入れた紅茶を、特別おいしそうに飲んでいた。


旦那様はとても分かりやすいのだ。


本当にこのまま“お飾り妻”でよいのだろうか?


使用人たちの間でも頻繁にこの話題が持ち上がる。


そんな若い侍女の話を耳にして、

「旦那様は以前お付き合いしていた、

子爵令嬢との古傷をまだ引きずっていらっしゃるから。」

と、長年屋敷に仕えてきた侍女長は

旦那様の考えを尊重している。


若い侍女たちは、

「奥様がいらしてから、屋敷が明るくなったし、

新しい提案もしやすくなったし・・・。」


そう言いながらだんだんと力が入ってくる。


なんといっても、“いつかのため”に奥様を常に磨き上げている。

その気合は、ギルフォード伯爵家に今までなかった

“美”を磨くという仕事に対する熱量だ。


「・・お飾りなんて。もし、解消されるような事になったら、私たち、ショックです。」

と、まだありもしない未来に、侍女たちは不安を抱く。


しかし一方で、ソフィアの気持ちは侍女たちにもよくわからない。


そこで、


侍女たちによる、

“奥様の気持ちを探ってみる”という企画が

提案される事となった。


侍女長のベルからは

「ご主人様を探るような事をしてはいけない」

と注意を受けたが、

それでも、

「二人が幸せになるためなら・・」と緩く認めてもらえた。


奥様は毎朝、執事のトマスに“旦那様の帰宅予定時刻”を確認される。

そして、遅いようなら夕食は軽めに、と、

旦那様のため。とは言わず、

“自分の食事の要望”として厨房に伝えている。


さらに

執事には可能な範囲で

“伯爵家の仕事で手伝えること”を教えて欲しいといって、日々トマスの横でメモを取っている。


そして何より、


毎日、会話のない食事をつづける奥様が気になり、

ふと、質問した時のこと。

「毎日ご多忙の上に、一人のお食事はさみしいと思って…」

という答えだった


その時の奥様の言葉に

その場にいた侍女達は言葉が出なかった。


最初はずっと、会話もない、目も合わない食事だったのだ。

それでも二人で向かい合って食事をしたのだ。


とても。とても、できた奥様なのだ!


先日、旦那様が奥様に購入された

ドレス、靴、バッグ、髪飾り、宝石類に驚きつつ

どれも明らかに奥様に似合うものばかりで、

旦那様が口添えされたことがわかると、

ほんのり頬を染めていらした。


ん!


これは、ある!


侍女同士の報告持ち寄り、

二人の恋模様に目を輝かせる。


そんな日常も楽しいギルフォード伯爵家だった。


長年、屋敷全体を見渡している

侍女長のベルと、執事のトマスは

目を見合わせる。


ホントに。


奥様がいらしてから、

旦那様はよく笑うようになった。


それがどういう意味をもつことか。


長く仕える二人は

とっくに気づいているのだった。

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