22 陰編 日々の研究
アップ遅くなりました。
そう思い立ったソフィアは、
2,3日パオ農園を見学してくると
トマスにつげ、農地に行くだけなので供はいらない
といって
翌日には屋敷を発つことにした。
「奥様、急なご予定ですが、心配事がございましたら
現地の管理人一家にご相談くださいませ。」
執事のトマスは先に連絡を入れてくれたようだ。
「助かります。ある程度視察したら戻りますので、その間お願いします」
ソフィアの熱心な顔に一同は留守を預かり、応援することにした。
パオ農園は王都から馬車で半日ほどの場所にあった。
窓の外に広がる緑を眺めながら、ソフィアは久しぶりに心が軽くなるのを感じていた。
「まぁ……本当に広いのね」
到着した農園は想像以上の規模だった。
出迎えてくれたのは、農園管理を任されているセルノア夫妻だ。
「ようこそお越しくださいました、奥様」
歓迎を受けながら案内された農園では、
多くの領民が働いていた。
栽培記録や収穫量の管理も徹底されており、ソフィアは興味深そうに資料へ目を通す。
「ここ数年の生育記録です」
差し出された帳簿を見て、ソフィアの目が輝いた。
「こんなに細かく記録されているのですね」
「その管理を任せているのが息子です」
そう言われて視線を向けると、一人の青年が真剣な表情で帳簿と向き合っていた。
「ルイス!」
呼ばれた青年が顔を上げる。
「初めまして。ルイスと申します」
落ち着いた物腰の青年だった。
「私もパオについて勉強中なのです。ぜひ色々教えてください」
そう言うソフィアに、ルイスは少し驚いたように目を見開く。
「奥様が、ですか?」
「ええ。まだまだ初心者ですけれど」
その日からソフィアは、ルイスと共に農園を見て回ることになった。
翌日からは朝早くおきて、気温や湿度。
水やりなどから始まり、
過去のデータと、収穫したものでき具合を比較してそこから今後どのように育てていくかを考えるのだった。
「奥様が、パオの有効活用を考えてくださっていると聞いて、私の思いが通じたと思ったくらいうれしかったです!」
ルイスはとてもいい青年だった。
ソフィアより2歳年上で、王都の学院を卒業した優秀な研究者の卵だ。
それからというもの、毎日のように新しい知識のシャワーをあびて、ソフィアはイキイキと過ごせるようになっていた。
「奥様はどうしてこちらに?」
ある日ふとルイスは気になった。
「え。と。」
すこし言葉に詰まる。ソフィア
「あ、いえ。失礼なことを・・・」
ルイスは頭を下げた。
「いえ、構わないのよ。少し忘れたいことがあって・・」
一瞬曇る瞳。
「そう、でしたか・・」
伯爵夫人が、一研究員のように農作業をしながら研究に明け暮れることを不思議におもっていたルイスは、その言葉に、年の変わらないソフィアの苦労を想った。
「でも、旦那様の相当な愛妻ぶりを聞いておりますので、何があっても守ってもらえますね!」
励ますつもりのその言葉が、ソフィアの胸をチクリと突いた。
「・・・・そう。ね」
今まで見せていた笑顔とは違う、不安げな笑顔だった。
少し心配に思いながらも、午後の作業に取り掛かることにした
朝は農園をみて回り、
昼は記録を読み
夜は研究をノートにまとめ、
疑問や今後の注意をメモする。
こちらの生活は、一日があっという間にすぎた。
…そして
気がつけは、2週間も滞在していた。




