19 陰編 過去から届いた手紙
それは二人が結婚式を挙げた頃・・
「おめでとうございます」
使用人達から祝福の花束が二人に贈られ、
フレデリックはソフィアの肩を抱き寄せ見つめあってほほ笑む。
「旦那様、
今後、部屋はどのように使われますか?
改装が必要でしたら、早めに準備しないと・・・」
急な式の手配に追われ、部屋の改装は案のままで止まっていた。
そもそもお飾り予定だったから、
この屋敷に、夫婦の寝室はないのだ。
(改装が終わるころには、仕事が落ち着きそうだな・・)
フレデリックはしばらく泊まり込みになりそうな案件を抱えていた。
早く着工できるように二人で念入りにチェックを入れる。
「お仕事、忙しくなりそうなのですか?」
「ああ、他国との会議があって・・」
「いつも大変ですね。お仕事以外で手伝えることは、
おっしゃってくださいね」
ソフィアの気遣いにいつも心が温まる。
「ああ、それから。」
といって、フレデリックは執務室の扉を開ける。
「結婚後、初めて長期留守にするので、
ソフィアがさみしくならないように」
といって、大量の
”植物栽培本”や”果実園栽培”について詳しくかれた
専門書、研究者レベルの書籍をプレゼントした。
執務室に置かれた数十冊以上の本をみて、
「まぁ。こんなにたくさん!フレディの帰りまでに
とても読み切れないわ」
とソフィアはうれしそうだ。
「あ、無理に勉強しなくていいんだ。
この中から、好きなものを読めばいい」
そういうと、ソフィアは
さっそく1冊手に取り、中身をペラペラめくり、
気になる部分を読み始める。
(ほんとうに好きなんだな)
集中している彼女のとなりで、ゆっくりとお茶をのんですごす。
しばらくゆっくりと時間が流れる。
「旦那様、奥様、食事の支度が整いました」
もう、夕方になっていた。
「あ、ごめんなさい。読みふけってまって・・・」
「いや、そんなに気に入ってもらえて、うれしいよ」
頬にキスする。
さっき読んだばかりの 本の話をしながら
食事を終えて、別々の部屋で休む。
結婚してからは、フレデリックの部屋で過ごしたり、
ソフィアの部屋で過ごしたり、自由に使っている。
(お部屋が完成するのが楽しみだな・・・)
そうしてまた、日常が始まる。
やがて、内装工事の日程がきまり
侍女たちとソフィアが中心になって、移動のための
荷物の分別をすることになった。
旦那様の部屋は、ソフィアの部屋より広いため、荷物もそれなりにある。
長年ため込んだものも、これを機に処分しなければ。
侍女たちも気合がはいる。
荷物の仕分けに侍女たちは総出で取り掛かる。
仕事の資料などはあらかじめ旦那様に移してもらっているので、
あとのものはソフィアと侍女で判断する。
書斎の荷物はほとんどないが・・
念のために確認する。
侍女のカリーナは
あまり使用してなかった、棚も念のために確認する。
すると、
中から宝石の箱らしきものが出てきた。
(あら、旦那様の忘れものだわ)。
と、その中身を確認すると・・・
どう見てもソフィアには似合わない、
真っ赤なルビーのネックレスだった。
(これは・・・女性へのプレゼント・・よね?)
ぱたん。
急いで宝石箱の蓋をしめる。
(こ、これは どなたの者でしょう??)
カリーナは焦る。そっと仕分けの荷物に紛れ込ませ、
ソフィアの目に触れないようにする。
(ふぅ。・・・と、とりあえず。侍女長に確認ですわ)
何事もなかったように、その日の作業を終え、
カリーナは、今日仕分けた荷物の一部を部屋から運び出す。
そっと宝石箱を忍ばせて・・・




