18 陽編 これからの二人
陽編はここまでです
連投で、陰編が始まります。
もう少し、お付き合いください。
それからの伯爵家は、ひっくり返したような
騒ぎとなる。
くすぐったい雰囲気の二人の間に
大慌てで、割って入る執事のトマス。
「ち、遅刻でございます!旦那様!」
見たことないようなトマスの慌てぶりにも、
「・・そうか」
と答え、一口紅茶を飲むフレデリック。
心に羽が生えたフレデリックは、
違う意味で仕事が手につかなさそうだ。
その傍らで、
恥ずかしそうに顔を赤らめる奥様を囲み、
侍女たちは
「今夜はきっとパーティーよ」
と、張り切り始め、
厨房にパーティーの連絡を入れ始めたかと思えば、
庭師には花を注文。
「飾り付け用と・・花束と・・えーとそれから」
侍女長は、冷静に医師を手配したかと思うと、
「・・ところで奥様、今夜はドレスで
旦那様を迎えましょうか」
と、早くも夕食用のドレスを選びに行ってしまった。
その侍女長の後をついていくと、
「よかったですね、奥様」
と、抱きしめてくれた。
伯爵家のみんな。 ありがとう。
それからはかみ合っているような
かみ合ってないような時間を過ごし・・・
※※
やがて、夕方が近づき
伯爵家の皆は、またソワソワし始める。
“そろそろ旦那様が戻られる。”
ソフィアは昼間に侍女長と選んだ
ドレスに着替えていた。
「このドレス、奥様がまだお輿入れしたばかりの頃、
旦那様が選んだのですよ。」
そういって、一枚のミントブルーのドレスを出した。
実はフレデリックはとてもセンスが良い。
ちらりと見ただけで、
ソフィアに似合うデザインと色を
指定してきたという。
初めて袖を通すドレス。
やはり、ソフィアによく似合う。
ソフィアは早くフレデリックに見てほしくて
ウズウズしている。
「おかえりなさいませ。旦那様」
下のフロアから聞こえるトマスの声。
その声にソフィアの体がぴん!と反応し、
フロアに急ぐ。
足は痛むけれど、気を付けながら階段をおりて、
人の声がするフロアにいそぐ。
トマスと侍女たちが話している中に、
フレデリックを見つけた。
「ソフィア!
どうしたの?今日は一段と美しいよ」
言い終わらないうちに、フレデリックに抱きつく。
トマスは
「おお、これは、これは。」と
二人をみて目を細める。
フレデリックもソフィアを抱きしめる。
それは、
もう、ぎゅうぎゅうと。
「・・えへへ。苦しいです。旦那様」
広間に笑いがあふれる。
※※
それから三か月後。
優しい日差しが差し込む教会で。
二人は式を挙げる。
__フレデリック・ギルフォード。
汝は、ソフィア・メルベリーを妻とし、
永遠の愛を誓いますか?
はい。誓います。
__ソフィア・メルベリー。
汝は、フレデリック・ギルフォードを夫とし、
永遠の愛を誓いますか?
はい。誓います。
誓いを述べた二人は、向かい合い
ソフィアに掛けられた薄いヴェールを上げる。
そっと、ソフィアの肩に手を添え
フレデリックは誓いのキスを贈る。
唇が離れるとき、
「愛してるよ、ソフィア」と耳元でささやいた。
二人は、両親に見守られて
改めて式を挙げることにしたのだ。
※※
あの日、
フレデリックは、両親に本当のことを打ち明け
もう一度式を挙げようと、ソフィアに提案してくれたのだが。
それ以降、ギルフォード伯爵夫人の説教が止まらない。
「___フレデリック。先日もお話しましたが、
本当に前回はおかしいと思ったわ
ソフィアに会いに行こうにも、いつも留守だというし
だいたい、契約で妻をめとるなんて、いったいあなたは・・・」
__以降、終わらない説教を毎日聞いている。
(私だって、実家を支援してもらっていたのだから)
ギルフォード伯爵夫妻は深々と頭を下げるが、
メルベリー伯爵家もさらに深々と頭を下げる。
「親たちには迷惑をかけてしまったな」
連日の説教もあって、フレデリックは、反省していた。
ソフィアの左手には真新しい指輪が光る。
「私、本物の奥様になれたのね」
感動に震えるソフィアを
そっと背後から抱きしめるフレデリック。
ソフィア。
ずっと一緒にいてほしい。
そんな甘い二人に、両家の親は唖然としている。
※※
そして・・数日後。
「フレディ。
きょうは新しい提案があります」
ん?
私の奥様は鋭いからな・・
「何かな?」
わくわくした顔のソフィアもかわいい。
「パオの実をさらに加工して販売しようと思います」
ソフィアは今まで書き留めておいた
メモをフレデリックに渡す。
「完熟の時期を調整する方法が確立されつつあるので、ジュースにして販売しようと思います。」
「ええ?」
「ダメ?」
「・・・ダメじゃない!」
「ふふ。」
あれだけ忙しい日々の中で、
パオの研究をしていたのか。
「ソフィアなら、きっとうまくできるよ」
優しくキスをする。
「私の奥様は、いつも驚かせてくれるからね」
「ソフィー。
これからはなんでも話して。
君を支えるのは、夫の役目だからね。
ソフィアからもキスを贈る。
「愛しているわ。フレディ」
「僕もだよ。ソフィー」
その日満開を迎えていた庭の花…
やがて、移ろう季節のように、
二人の関係も変化していくのだった。
このあと、連投して
陰編へと移ります。




