17 陽編 バラのお風呂の効果
翌朝。
朝の柔らかな日差しは、
ソフィアの部屋を明るく照らす。
いつもと同じ部屋。
コンコン。
「奥様。」
__侍女長の声だ。
室内に入ると、閉め切っていた部屋の空気を入れ替える。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
昨夜の溶けた氷を回収しながら、
「今朝は、湯あみをして、スッキリされてはいかがでしょう?」
なんだかご機嫌な様子だ。
「庭師がバラの花びらを用意しましたので、どうぞ・・」
そういうと、
侍女たちが湯あみの支度を始める。
「あ、え・・すごい。・・
ありがとうございます・・」
色とりどりの大量のバラの花びらが見える。
「バラのお風呂は初めてで・・」
すこし元気になった。
口元から、ほんの僅か・・笑みがこぼれた。
※※
閉め切った部屋にも、
朝日が差し込む。
いつもと変わらない部屋なのに、
無機質に感じる。
まるで、半年前に戻ったように。
__何の温かみも感じない部屋。
ああ。
仕事に行かなければ。
起き上がり、着替えをしようとするが、
ボタンを外すのが面倒で、グイグイ引っ張る。
なんだ・・服も・・脱げないのか。
こんなで、何の仕事ができるのか。
そう思いながらも、
なんとか気持ちを切り替え、部屋を出る。
使用人たちに、恥ずかしい姿は見せられない。
「おはようございます。旦那様」
執事のトマスがいつものように準備してくれている。
___ありがとう。
いつもは言わないけれど、
今日はふと、でた。
すこし、驚いたトマスだが、
すぐにいつものように動き始める。
一人分の朝食が並ぶ。
そうか・・。
今日からまた。
一人で食べよう。
食欲はなかったが、少し口に押し込む。
そうしているうちに、
ふと、花の香がした。
ん?
おもわず、顔を上げた。
そこにはソフィアがいた。
すこし恥ずかしそうにして、こちらを見ている。
__足は大丈夫か?
そういいたいのに、言葉が出ない。
すると、ゆっくりこちらに歩いてくる。
(足が・・)
そう思うと同時に、彼女に手を差し伸べていた。
「無理をしてはいけない。
医師に診てもらうんだ。」
そういって、彼女から離れようとしたとき。
「フレディ。
__どうか。私を本当の奥様に・・してください」
花の香りに・・酔ったのだろうか?
今、聞こえた言葉が信じられなくて。
ソフィアの表情をうかがう。
「フレディの。奥様になりたいです。」
すこし涙目の、かわいいソフィアが、
わたしにプロポーズしている。
いつのまにか、使用人たちはいなくなっていた。
二人だけになった食堂。
はっと、ソフィアの足が気になり、
近くの椅子を引く。
クスリ。と笑って、ソフィアは腰を下ろした。
__そして続けた。
「昨日のお話。最後まで聞かなくて・・
ごめんなさい」
__でも。
「あなたが、大好きです」
フレデリックの腰のあたりに抱きつくソフィア。
まだ信じられないけれど…確認のため、
もう一度、言ってみよう…
「ソ・・フィア。
どうか。お飾りの妻の・・契約を・・解消してくれないか?」
すこし声が震えていたかもしれない。
「はい。」
「それで・・今度は。」
怖い。この先を口にするのが怖かった。
でも信じて__
「今度は…契約でなく。本当の妻になってほしい」
目をつむって一気に話す。
「__はい。お願いします」
その言葉を聞いて…
思わず、羽交い絞めのように、
椅子に座っているソフィアを抱きしめた。
「ああ、ソフィア!・・本当に?」
先ほどまでとは違う涙がにじんだ。
ソフィアを見つめる。うるんだ瞳は美しい。
二人の顔がゆっくりと近づく。
ソフィアは目を閉じた。
驚かさないようにそおっと触れる、
優しい口づけに
フレデリックの愛を感じて
幸せな気持ちがあふれた。
一旦、二人には幸せを噛みしめて、
貰いましょう〜。
連投で、陰編へ入ります




