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お飾り妻を溺愛する事情  作者: シャルru


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16/24

16 陽編 涙の訳は

(え?・・・その反応は?)


真っ赤な顔をして、フレデリックを見るソフィア。

手で顔を覆っている。


「ソフィー。いつも私のために頑張ってくれる

君に、心から感謝しているんだ」


足に氷をあてながら、

フレデリックは続ける。


それで・・・


すこし、間があく。


「お飾り妻を解消したいと思っているのだが・・」


__そこまで話した時。


水滴が、フレデリックの手に落ちてきた。


驚いて見上げると___


ソフィアの目から

涙があふれていた。


「やっぱり・・私では・・旦那様の奥様役は

務まりませんでしたか・・?」


そういって、少し腫れが引いた足を、

庇うことなく、ソフィアは部屋から出て行ってしまった。


(え。・・どうしてこうなった?)

 


新しい氷を持ってきた侍女長が、

部屋から走り去るソフィアを見て、

驚いてフレデリックの元に来る。


「どうかされましたか?」

「あ・・いや。

なんでか、わからないのだが・・。」


(私は・・間違えたのか?)



※※


すこし、時間をおいてソフィアの部屋を訪ねる。


コンコン。


「ソフィア。どうしたんだ?」


部屋からは、何も聞こえない。


侍女長に、彼女が心配だから様子を見るように頼んで、部屋に戻ることにする。


__彼女の足を冷やした時、

彼女に感謝を述べた。


彼女は恥ずかしそうに顔を赤らめたから__

___きっと__

__きっと、お飾り妻でなく、


本当の妻になる事を受け入れてもらえると


・・・信じて。・・




しかし、結果は

(違ったのか?)



先ほどまでの、

高ぶった熱は、重くて暗い気持ちに

変わりつつあった。



この気持ち・・も。

知っている。

この苦しさは、長く続く辛いものだ。

明けない夜のように、

永遠にも感じる、暗くて重い・・


__気持ち。


・・だから、お飾り妻を選んだのに。


お飾り妻に恋をしてしまった。


ははは。


すこし、きついな。


フレデリックはベッドに横たわった。


※※


コンコン。


「奥様。・・よろしいですか?」


「は・・い」


侍女長は、足を冷やすための氷を持ってきた。


「そちらに掛けたままでどうぞ。」


そう言って、ソフィアの足を少し持ち上げ、

足首を冷やす。


「ずいぶん・・無理されましたね・・」


侍女長は、まだ熱を持ったままのソフィアの足を

そっとなでて

「きっと、屋敷を出るときから、

もう痛かったのではないですか?」


・・・。


「旦那様のために。頑張っているのですね・・」


__そういって、侍女長はソフィアを抱きしめる。


「うっ・・」

また、ソフィアの涙が止まらない。


「__だめなの。上手にできなくて・・・。

旦那様に迷惑ばかりかけてしまって・・

契約は・・解消しようって・・」


そういって、強く侍女長に抱きついた。


「わたし、ここの皆が好きだし。旦那様も好き。」

ぐすん。と喉がつまる。

「だけど、・・私では、奥様役を果たせないの・・」

侍女長は優しくソフィアの背中をなでる。


「奥様・・。本当に、そういわれましたか?」


侍女長はニコリと笑顔でソフィアを見る。


「__ええ・・。契約を解消したいって・・ううっ。」

真っ赤に腫れたソフィアの目。


あらあら。といって

侍女長は口元を緩めて、小さなため息をつく。


「奥様。旦那様は今。


__多分、ショックで。」


__部屋で倒れていますね。__


「しばらく、旦那様を懲らしめてやりましょう」


え?


真っ赤な目のソフィアは意味が分からないまま

侍女長を見る。


「今夜は、こちらに軽食を用意いたしますので、

ゆっくり過ごしてくださいませ。

湯あみもすぐに準備いたします」


それから・・


「足が痛むようでしたら、明日一番に医師を

手配いたしますので、

安心してお休みくださいませ・・奥様」


深々と頭を下げ、にっこりと笑い、侍女長は

待機している侍女たちに指示を出すために、

部屋を出た。


パタン。としまった扉をみて、


ソフィアは


何か自分が間違えたのか、


__よく考えることにした。


※※


__すこし、眠っただろうか・・


部屋は真っ暗だ。


誰もフレデリックに部屋には近づかない。


はぁ。・・


ソフィアの足は、少しは

__良くなっただろうか?

それが気になる。


コンコン。


「旦那様」


侍女長がやってきた。


「奥様の足は。明日の朝

医師に診ていただこうと思います。

今夜はゆっくりとお休みくださいませ」


・・それから


「何か…お持ちしますか?」

「いや・・いい」


では。そう答えると、侍女長は出ていった。


医師に見せるほど・・腫れているのか。

かわいそうに・・。

なぜすぐに医師を呼ばなかったのか・・。


足が痛い彼女に・・

嫌がっていた話をするなど・・


__ひどい夫だ__


どうしてもっと彼女を

思いやれなかったのだろう・・


優しい彼女は家族を助けるために契約した・・


そうか!


契約解消されたら、

彼女は大切な家族を

守れなくなるのか__。


そんなことも忘れて・・


私は。


__自分が嫌になる。


※※


「ベル、これからどうなるだろうか・・お二人は。」


トマスはベルの隣で、先ほどから何度も深いため息をついている。

__とても似合いの夫婦だと思っていた。


旦那様は冷たい人ではない。

優しすぎて、傷つきやすい方なのだ。

奥様はそんな旦那様をそっと包むように接してくれた。


(ふぅ。)

また、深いため息が漏れる。


「あら、大丈夫ですよ」


旦那様の部屋から戻ってきたばかりのベルは

手にしたカップを包み込んで、

「お二人とも、お互いが大切で、

        近づけないだけですから」

と、ほほ笑んだ。


__その会話を

離れたところでこっそりと聞いていた侍女たちは、


「ええー!?そうだったのですか。

  本当に、喧嘩してしまったかと・・・」


ほっとして、涙が出る。



侍女長は、若い侍女たちに


「明日はきっと、お祝いになりますよ。」

といった。

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