15 陽編 初めての夜会
夜の馬車から見える景色は、
街の灯りがキラキラしていて、
二人の気持ちを高める。
ソフィアのうるんだ瞳にフレデリックはまた
発作を起こしそうだ。
※※
王都_宮殿
“あれは__ギルフォード伯爵夫妻よ”
会場に入ると、あちらこちらから
そんな声が聞こえる。
気が付けば、社交界で話題の夫婦だ。
まずは侯爵夫妻の元へあいさつに。
「ボルソワーレ侯爵、夫人、
お久しぶりでございます」
夫妻はフレデリックとソフィアを歓迎する。
「体調を崩されたと聞いて、心配していたのよ。
元気になられてよかったわ。」
優しく抱きしめてくれる夫人。
侯爵は、初めて見るソフィアに
「これは・・美しいご婦人だ。
聡明なだけでなく、こんなに美しいとは。」
フレデリックとソフィアは恥ずかしそうに
顔を見合わせる。
その後も、歩くたびに二人の元に
挨拶に来る人が絶えない。
(なんだ?こんなに忙しい夜会ははじめてだ)
ダンスを踊る暇もなく、次々に声を掛けられる。
__ソフィー。疲れていないかい?
「少し、外に出ようか」
ずっと笑顔で対応するソフィアを気遣い、
バルコニーにある、テーブル席へとエスコートする。
飲み物をとってくるよ。
__少し、一人でも大丈夫?
「ええ。ここで待っています」
ソフィアをあまり一人にしたくなくて、
会場内のウエイターに目星をつけて、サッと離れた。
__夜風がきもちいい。
ハイヒールは慣れないが、今日一日は
頑張れそうだ。
すこし、表情を緩める。
そこへ・・
「これは・・初めてお目にかかります。
フレデリックの同期、ロイル・ハイマーと申します。」
バルコニーに現れたのは、
フレデリックと同じくらい背が高い、
美しい男性だった
(フレデリック様の同僚の方ね。)
「・・はじめまして。夜会は慣れなくて、
こんなところで失礼いたしました。」
にこりとほほ笑む。
「ああ・・本当に美しい方だ。
フレデリックが隠していたのがわかる。」
隣に座っても?」
そういって、ロイルは近くの椅子に腰掛ける。
「ええ・・。あ、もうすぐ
フレデリック様が戻られますので・・」
くすくす。と笑うロイル。
「性格はとてもかわいらしいのですね。
フレデリックがうらやましい」
そういって笑っているところに、
フレデリックが戻ってきた。
「ロイル。妻に何か用かな?」
…ほんの少し。離れただけで、
もう誰かがソフィアの隣を奪ってしまう。
その焦りから、声が硬くなる。
「そんなに怒らなくても。挨拶しただけだよ」
美しいソフィアに触れそうなほど
近くに座るロイル。
しかし、同僚に嫉妬する夫など・・
フレデリックは、湧き上がる感情をぐっとこらえる。
ソフィアの向かいに腰掛け、飲み物を渡す。
ソフィアはそれを嬉しそうに受け取り、
口をつける。
「それにしても、外交を兼ねた夜会なのに、
夫妻の社交パーティーのようだったな」
会場の隅で様子を見ていたロイルは
異様さを感じていた。
「まるで皆、
二人に会いに夜会に来たようにみえたよ」
それから、
「素敵な奥様がいて、うらやましいよ。
__末永く、お幸せに!」
そういって、ロイルは席を離れた。
(ふぅ。)
(本当に・・)
たった数時間の夜会なのに、
こんなにつかれるとは。
__そろそろ帰ろうか。
ソフィアに手を差し出し。
エスコートするフレデリック。
__しかし。
ソフィアは足が痛くて、うまく歩けない。
「ごめんなさい。・・足を痛めたみたいで」
「ダンスしなくてよかったよ。
これでは痛めてしまう」
…そっと、ソフィアの足に手を添える。
(すこし・・腫れているかもしれないな・・)
フレデリックはソフィアを抱き上げ、
夜会会場から出る。
その後ろからは、
「まぁ。素敵な夫妻ね」
と、二人を称賛する声だけが聞こえた。
※※
屋敷に戻っても、ソファーまでは
抱き上げたままソフィアを優しく運ぶ。
さきほどより、足が腫れているように見える。
「ヒールも履けないなんて・・恥ずかしいです」
すこしシュンとする彼女に、
「いや、どれ程長い時間立っているのか
わからないのだから・・それより早く
足を冷やそう」
侍女が用意した氷を、跪いて
優しく足に当ててくれる。
「あ・・自分でできます・・」
思わず前かがみになるソフィアに、
「妻は夫に任せていいんだよ」
と答えた。
その言葉に、真っ赤になるソフィア
(え?・・・その反応は)




