14 陽編 君を隠してしまいたい
「おかえりなさませ」
執事に迎えられ、二人は一日の疲れを癒す。
「今日はいかがでしたか?」
侍女長の問いかけに
「とっても良いところでした」
と笑顔で答えるソフィア。
フレデリックも満足だった。
ただ・・気がかりが残った。
それから数日後、
以前から声がかかっていた
“外交官の夜会” が近づいて来ていた。
前回のドレスは急いで仕立てたが、
今回は準備万端。
ドレスはもうすぐ仕立てあがる。
お茶会のドレスは
ソフィアの若々しさを前面に出した衣装で、
下手をすれば、独身に見えるようなかわいいものだったが、
今回は“妻”としての出席のため、落ち着いた色味とデザインをお願いしている。
ソフィアは色打ち合わせで
ある程度の仕上がりを知っているようだが、
フレデリックは全く知らない。
美しい妻を見るのが楽しみで、
わくわくしている。
仕立てあがったドレスを見て、
息をのむ。
上品なブルーのドレスは、
細いウエストが強調され
背中が大きくあいている。
え・・
そんな大人っぽいドレスを着て
皆の前に出るのか?
きっと28歳のフレデリックと並んで
おかしくないように
大人っぽいデザインを考えてくれたのだろうが・・・
見せたくない。
フレデリックもまだ見たことなない
ソフィアの背中。
腰に手を回したことすらないのに!
前回、直前で瘦せた為に、サイズが合わなくなったこともあり、屋敷で最終のチェックをすることになった。
さらりと流れるロングドレスの裾。
上品な透け感が、若い肌には映える。
ぐっと開いた背中には
いやらしさを感じさせないが、
フレデリックにとっては、
__今すぐに、この穴をふさいでほしい。
とデザイナーに言いたいところだ。
・・・ああ。ソフィア。
君を隠してしまいたいっ!
その衝動を抑えつつ。
この日のために用意した宝石を
ソフィアに贈る。
「ソフィア。とっても美しいよ。
君に似合うと思って、宝石を選んだのだが、
気に入ってもらえるだろうか?」
そういって差し出したのは、
ダイヤがいくつもちりばめられたネックレスだった。
えぇ!
これにはデザイナーであるマダムも驚いた。
周囲の驚きにソフィアは
その宝石の価値になんとなく気づく。
「旦那様。こんなに立派なものを・・・
よろしいのですか?」
(お飾り妻の私に。)
フレデリックには、そう聞こえた気がした。
どうか、これからは、“フレディ”と呼んでほしい。
ソフィー。
その言葉にソフィアは笑顔で答えた。
(よかった・・)
ソフィアが笑顔で答えてくれた。
植物園での表情が気になっていたフレデリック。
もしかして、何か気に入らないことがあるのでは?と
思って心配していたのだ。
ソフィアの隣にいる権利を手放したくない。
それがたとえ契約であっても。
※※
夜会当日
昼過ぎからすでに、夜会の準備は始まっている。
湯あみの後、
丁寧にマッサージされた肌に
香油が薄く塗り込まれ、瑞々しい若い肌は
より光を放つ。
そこに、仕立てあがったばかりの
ブルーのドレスをまとう。
ハイヒールは慣れていないが、
何度もダンスの練習をしたから大丈夫。
長く、美しい髪を結い上げ、
首筋から背中へのラインが映える。
とても21歳には見えない大人っぽさだ。
ドレスに合わせた、いつもより少し濃いメイクは、
ソフィアを特別美しくする。
__コンコン。
「ソフィア。準備はできたかい?」
ドアを開けて、目に飛び込んできたのは、
試着の時とは比べ物にならないほど
美しいソフィアの姿。
思わず、息をのんでしまう。
今までも夜会には参加していたが、
こんなにも美しいを思う女性がいただろうか?
今日は絶対に彼女を一人にしてはいけない。
___そんなカンが働く。
「ソフィー。
こんなにも美しくて・・困ってしまうよ・・」
「フレディ。
ありがとうございます。嬉しい。
夜会は初めてだから、なるべく側にいてほしいです」
すこし緊張しているのか、
ソフィアは少し、ぎこちない。
そして、二人は馬車に乗り込む。




