11 陽編 愛しいソフィア
物語、中盤に差し掛かりました…
(すまなかったソフィア)
何度も頭の中を駆け巡る言葉。
帰ってこない夫のために
何も知らない
知り合いもいないお茶会に出る事。
今日のお茶会が
“夫の仕事にとって重要な意味を持つ”
ということを知っていたかはわからないが、
彼女が “自分が思いつく限りの努力”
をしていたことは
侯爵夫人の様子ですぐにわかる。
控えていた侍女は頭を下げ、
部屋を後にした。
ソフィア。
君を失いたくない。
君の明るい声で一日が始まる幸せ。
帰宅したらいつも温かな笑顔で迎えてくれた。
そして
平凡な領地にまで興味を持ってくれた。
何より、
少し暗い印象だった伯爵家を
君は一気に変えてくれた。
以前は何も感じなかったが、
仕事漬けの毎日でも
この頃は休みを待ち遠しく思うほど
君のそばにいたいと思い始めていた。
だって、
この先も君の隣にいるのは、
……ずっと僕なんだ。と思い始めていた。
これ以上素敵な妻がいるだろうか?
王都中探したって見つからないはずだ。
フレデリックは
帰宅したままの姿で
ソフィアが眠るベッドから離れない。
※※
夜が明け始めた。
薄暗い室内が少しずつ明るくなっていく。
ベッドのわきに座り込み
祈るようにしてソフィアの手を握りしめていた。
フレデリックの頭を
か細い手がそっと触れる。
はっと顔を上げる。
ソフィアはまだ少し辛そうな表情でほほ笑む。
「フレデリック様…私、頑張れ…ましたか?」
その弱々しい声に
フレデリックは嗚咽を漏らす。
涙でソフィアの顔が見えない。
「ソ・・フィア
すまなかった。・・・申し訳なかった・・」
(目覚めてくれて・・・よかった・・)
そういって、優しく…優しく…
ソフィアを抱きしめる。
初めて見るフレデリックの様子に
ソフィアは驚いた。
「旦那様、どうされました?
心配をおかけしてすみません。
どうか休んでください」
そういうと、ゆっくりベッドから
起き上がろうとする。
あわててソフィアをベッドに寝かしつけ、
侍女たちを呼ぶ。
執事も侍女も皆、一斉に駆け付ける。
奥様! 奥様!
__心配いたしました。
フレデリックの寝室には、使用人がたくさん集まり
皆、ソフィアの無事を喜ぶ。
__奥様、何か必要なものは?
__奥様 一度お着替えされますか?
などと、それぞれがソフィアを想い、声をかける。
ああ・・この短期間に
使用人にこんなに好かれる女主人は
いないだろう。
自分が留守の間に
ソフィアは一体どのように過ごしたのだろう
きっと自分より、
使用人の方がソフィアに詳しいのだろう・・・
__その後は
てきぱきとソフィアの食事の支度が整えられた。
仕事も休んでソフィアのそばにいる
フレデリックを見て、トマスは驚きつつ、
必要なやり取りをする。
(旦那様が自ら、休みを取られるとは・・)
途中、
侍女長のベルは、運んできた二人分のスープが乗ったトレーをフレデリックに渡す。
「旦那様、奥様の看病をお願いいたします」
そういって、使用人たちはそっと部屋を出た。
受け取ったトレーを枕元に置く。
看病などしたこともなかったが、
なんとかソフィアに元気になってもらいたくて・・
ソフィアを優しく抱き起し、
そっと口元にスプーンを持っていく。
コクリ。
とソフィアがスープを飲み込んでくれただけで
涙があふれてきた。
…ソフィア。早く元気になって…
それまでは、僕は君のそばを離れない。
気が付けば。
そんな言葉が出ていた。
ソフィアは驚いた様子で
フレデリックを見る。
それから、甘えるように
あーん。
と、口を開けるのだった。
__愛しいソフィア。
フレデリックの心臓は
爆発寸前だった。




