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叔父さんが持ってきた大きな鉄板をかまどの上にのせて温める。
「奥様。これからどうすればいい?」
「油はもう引きましょう。鉄板が熱くなったら餃子を並べて焼いていきます」
トウメさんが出来上がった餃子をのせた大皿をもって、かまどの前で待機した。
足元では妹天使のトオカちゃんが「わたしもやりたい」と手を伸ばしていた。
兄天使のジュウくんはハチローくんとココノツくんに遊んでもらっている。あ、投げられた。でもゲラゲラ楽しそうにジュウくんは笑っている。うん、男の子って感じ!
そのほかの人たちは庭に敷物を敷いて、トウメさんが持ってきてくれた料理の数々を並べていた。おにぎりに漬物。野菜の煮物。果物を煮て飴でコーティングしたやつ――噛めばパリッと音がして中から果汁が広がる激うまデザートでわたしの大好物!――などなど。おもてなしするつもりが、持ち寄りの食事会になってきている。
その中でレイくんが、お供の一人と一緒に、所在無さげに立っていた。
手伝おうとしても遠慮されたのだろう。さっきの餃子を包むときすら、お供の人にはあまりいい顔をされていなかった。そのときはお供の人も巻き添えにして強行していたけど。
偉い人ってのも大変なもんだな。
「そろそろ大丈夫かな」
鉄板も熱くなってきたので、トウメさんが餃子を並べて焼き始めた。トオカちゃんもやりたいというので、トオカちゃんにも餃子を渡してあげた。
「これ、わたし作ったのだよ」とお母さんに言ってから乗せていく様子が可愛すぎてやばい。
ジュウくんも「おれもおれも」と走ってきた。「やだ、わたしがのせる」「おれがやる」と口喧嘩を始める二人をトウメさんが「順番!」と叱っていた。お母さんだぁ。
「微笑ましいな」
いつ間にか隣にやってきたレイくんが言うと、天使二人はさっとトウメさんの後ろに隠れた。
発動された人見知りに、レイくんはちょっと寂しそうだ。気持ちは分かる。
餃子を全部鉄板の上にのせて、次は焼き目がつくのを待つ。
「そういえば、薪もないのに燃えてるけど、これもホムラ様の力?」
トウメさんがうちの土間にあるかまどを使うとき、薪を使っていたし、火をおこすときはライターのようなものを使っていた。この世界のライターは、向こうのものとはまた仕組みは違うだろうけど。
だから、異世界だからってこんなふうに地面から火が発生することはないのは分かる。
「ホムラで浄化されている土地にはつねにホムラの火種が残っているんだよ。ホムラであるおれはいつでもその火種をおこして炎を生み出すことができるんだ」
「それは浄化された土地ならどこでも?」
「そうだね」
「いつでも火をおこし放題?」
「そう」
「……放火し放題?」
「やろうと思えばできるけど、するわけないでしょ」
レイくんは楽しそうに声をあげて笑った。そこまでおかしなこと言ってないんだけど。
ほんとレイくんの笑いどころが分からない。
「ホムラってこういう使い方もできるんだね」
「特別な作用があるだけで、火であることには変わらないから。まあ、こんな使い方ができるのはホムラ様だけだから特別感はあるよね」
「地面から直接生えてる感じだけど火の調節とかもできるの?」
「生えてる」とつぶやいて、レイくんはまた笑う。笑いすぎだし。
「できるよ。もう少し弱めておく?」
「えーっと……中火で色がつくまで焼いて、水をいれてから強火にするはずだから……」
この火の感じって中火なの? なんなの?
「……水が必要?」
トウメさんに言われてハッとする。そうだ、お水用意してない。
「おれ、持ってくるよ!」
仕事を見つけたとばかりに顔を輝かせてレイくんが行ってしまう。いや、水がどこにあるか分かるの?
あ、でもすぐハチローくんが追いかけたから大丈夫か。
「トノを使ってしまった……そういうつもりじゃ……」
「いや、トウメさんが気にすることじゃないし、レイくんも喜んでいたからいいんじゃないかな」
手前の餃子をお箸でつまんで裏を見る。
うん、いい焼き色。あとは水を待つのみ。
「わたしも何度かトノにお会いする機会はあったけれど」
トウメさんがポツリと言った。
そういえば前にお城の厨房に手伝いで入ることもあって、そんなときに会ったことがあったんだっけ。
「あんなトノを見るのは初めてだ」
「久々の餃子でテンション上がってるみたい」
「いや、それだけではなくて、トノは奥様には甘えられるのだな、と」
そこでハッとしたように口元を抑える。
「お姉ちゃんみたいなものですからね、わたし。子供のころも知っているし、そういうので身内だと思ってくれているんだと思う」
特に「お姉ちゃん」を強調して言った。
そういうことだから、言ったらいけないことを言ったみたいな反応は勘弁してください。
ホムラ様という特別な存在であり、しかも既婚っていうこともあって、そういう反応になっちゃうと思うんだけど……確かに今日のレイくんはいつもより距離が近いし、分かりやすく甘えてくる感じはある。久々のギョザパにテンション上がっているせいなのか知らないけど、もう全部レイくんが悪い。
「お水とふたも持ってきたよ!」
そう言ってドヤ顔をしてきたレイくんの後ろには水を持ったハチローくんとふたを持ったお供の人。
せめて自分で持ってからドヤ顔してよ。
「ありがとう、ハチローくん」
「おれはトノに言われただけだ」
こんなことでレイくんをたてる必要はないんだよ、ハチローくん。
まあ、それがハチローくんなんだろうけど。
「おれたちの手柄ね」
「ハイハイ。分かったから、水を入れた後に今度は強火にしてくださいね、トノ」
ハチローくんの肩に手を回して主張するトノにお願いすれば、「トノって呼ぶのやめてよ」と拗ねたように言う。
ハチローくんから受け取った水を餃子に回しかけて、レイくんを振り返れば、炎を指した指を軽く上げた。
それだけで炎の勢いが増す。
「すごっ」
やっぱりすごいな、ホムラ様。
魅せられたのか息をのんで動けないお供の人からふたを奪って、レイくんは餃子にふたをしてしまう。
「ありがとう。これで後は水分がなくなるまで焼けたら完成です!」
「おお~。でもこれさ、どうやって水分なくなったか分かるの?」
たしかにガラス製のふたじゃないから、水分が飛んだかどうか判断しづらいけど……。
「まあ、たまにふたをあけてのぞけば大丈夫でしょ。細かいことはいいの」
「それなら音で分かるから心配ないよ」
「……っ! トウメさん、かっこいい!」
そしてトウメさんのプロの技が炸裂した結果、良い感じに水が飛んだ状態でふたをあけて実食タイムへと移った。
底はこんがりいい焼き色で、皮はもっちり、餡も肉汁が垂れるくらいで、うん、なかなか良い出来になったのではないかと……!
これは酒が欲しくなると、叔父さんとトウメさんの旦那さん、トウメさんはお酒も飲み始めていた。ジュウくんとトオカちゃんの天使二人も、嬉しそうにハフハフしながら食べている。お供の人たちも、ハチローくんも初めての餃子は口に合ったようで、顔をほころばせていた。
ああ~好評そうでよかったぁあああ。




