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異世界でたこ焼きをするのは案外ハードルが高かった。
そもそもたこ焼き器をもっていかなくちゃいけないし、きれいな丸いたこ焼きを作るのはわたしには難しい。
初めてのたこ焼きがわたしの不細工たこ焼きなんてハチローくんたちに申し訳ない。
「じゃあ、ギョザパは?」
悩んでいたときに、そう言ってきたのはミコトだった。
そういえばレイくんがうちで暮らしていたときもよく餃子パーティーはしていて、ミコトとレイくんは「ギョザパ」って略して言っていた。
「レイ、餃子包むのうまくなかったっけ?」
「確かに上手だったね。器用だった」
そんな話をしていたら懐かしくなっちゃって、餃子なら皮と餡を用意すれば向こうでも楽しめるだろうってことで……
タコパじゃなくてギョザパやります!
「タケルさん、これでいいのか?」
ハチローくんが包んだ餃子を見せてくれる。
餡がパンパンに入った皮は、それでも破れず餡がはみ出さず、きれいに閉じられていた。
ひだはないけど、真ん丸で可愛い形だ。
「うん! 上手だね、ハチローくん」
「おくさま、ぼくのも」
「わたしも」
ハチローくんの両脇からくるくる天然パーマの男の子と女の子が、その小さな手のひらに乗せた餃子を見せてくる。餡がはみでていたり、皮が破れてしまってしてるけど……。
「大丈夫、かわいい!」
「やった!」
「うふふ」
にいっと嬉しそうに笑う天使二人はトウメさんのお子さんたちだ。
今回のギョザパは叔父さんだけでなく、トウメさん一家も招待している。
普段お世話になっているトウメさんへの労いというか恩返しも込めて誘ってみたいと思いつつ、ただの仕事先のギョザパに誘われても困らせないか、パワハラになりかねないか迷っていたら、叔父さんがあっさりと誘ってあっさりと了承をもらってきてくれた。
トウメさん一家とは家族ぐるみの付き合いらしく、わたしにはまだ人見知りしている天使たちはハチローくんの隣にぴったりとくっついている。ハチローくんにも作った餃子を見せて「ぼくのほうが上手でしょ」「わたしのハチローくんにあげる」と二人同時に話しかけていた。「二人ともうまい」「あとでもらう」とハチローくんは慣れた様子で答えている。
ハチローくん、懐かれてるな。いいお兄ちゃんしてる。可愛い。
「二人とも、手伝うならちゃんとやりな」
子供たちに注意しながらも、トウメさんはさすがというか、美しい餃子を生み出している。作るスピードと餃子の美しさが素人のそれじゃない。さすがプロの料理人。わたしが手本で作った餃子から、美しく完璧な形を理解している。
母屋の土間でわたしたちが餃子を作っている一方で、叔父さんとトウメさんの旦那さんは庭に簡易的なかまどを作ってくれている。
日本でギョザパをするときはホットプレートを使ってみんなで囲む感じで……なんて叔父さんをギョザパに誘ったときに話していたら、庭にかまどを作ってくれることになった。
この庭でバーべーキューをすることもあるらしく、そんなときはこうしてかまどを作っているらしい。すごいな。
そして、初めて会ったトウメさんの旦那さん。プロレスラーのようなでかくて丸い筋肉を持った大きい人だった。トウメさんもボディビルダーのように体格がいいから、二人そろうと圧が強めだけど、旦那さんもまた人好きする笑顔の優しそうな人だ。てっきりブシかと思っていたら、農家さんらしい。
そして……。
「タケルちゃん、おれは? おれは!」
そう言って、ひだもきれいな餃子を見せてくるレイくん。
そう、レイくん。
呼んでもないのに「ギョザパと言えばおれでしょ!」とやってきちゃったレイくん。
今日は身内だけだから。みんな気を遣っちゃうからレイくんには遠慮してほしいんだけど、とハッキリに言ってみても、いやいやおれはタケルちゃんの身内でしょ。むしろなんで呼ばれなかったのか分からない。大丈夫大丈夫。今日は無礼講だよ。みんなおれのことなんて気にしなくていいから! なんて言いやがった。無礼講になんかなるか。みんな当たり前に気を遣っちゃうでしょ! と言い合いになりかけたところで、「トノが望むなら」とハチローくんはレイくん全肯定だし、天使たちは「ホムラさまだ」と目を輝かせるし、トウメさんも「こんな機会、滅多にないからありがたい」って言ってくれて……ほら、もー。気を遣わせてる!
そうして、レイくんはお供の人三人と居座り続けているのだ。
ちなみにお供の人の中にはココノツくんもいる。あー……まだ会いたくなかったのに!
「タケルちゃん、おれのは!」
「あーきれいきれい。上手上手」
しつこく聞いてくるから適当に答えたのに、レイくんは満足げに笑うとまた餃子の皮を一枚とって包みだす。
急に四人も増えたから、あっという間に餃子を包み終えてしまった。
叔父さんたちが作っていたかまども完成して、餃子を焼く段階に入る。
「急にお邪魔したお詫びに、おれが火をつけようか」
「トノ、それは……」
「いいからいいから」
止める叔父さんをいなして、レイくんはかまどの前しゃがんだ。
そして、かまどの中で指をいれて地面をなぞる。
それだけで、火が点いた。
地面から直接炎が立っている。
「すご……っ」
ファンタジーの世界っぽい。
トウメさんや旦那さんからも感嘆の息が漏れた。
「ホムラ様……!」
地面に膝をついて、二人は頭を下げた。
二人だけじゃない。レイくんのお供の人も、ハチローくんも、叔父さんまで膝をつく。
天使二人も両親の様子につられたのか、その隣に膝をつくと両親に身を寄せた。
……これ、わたしもしたほうがいいの?
迷いながら座ろうと膝を曲げると、レイくんと目が合った。
半眼になって「やめてよ?」と圧をかけてくる。
いや、そんなふうに言われてもね、周りからの圧もまあまああるよ?
この世界で生きるのに必要なホムラの浄化の力に、それを目の当たりにしての行動ってことだろうけど……正直、分からないな。
いや、すごいとは思うんだけどね。こんななにもないところから炎がいきなり立つなんて。
「みんなも立ち上がって。ギョザパするんだろ。早く焼こうよ」
「ホムラ様の浄化の奇跡に感謝いたします」
レイくんの言葉に、叔父さんがそう答えてから立ち上がる。
トウメさんも旦那さんも、みんな「感謝いたします」と口々に言って立ち上がった。




